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エクスペリメンタルR&Bの逸材 リヴ [北アメリカ]

Liv.e  GIRL IN THE HALF PEARL.jpg

過激なエレクトロで彩られた1・2分台の曲が次から次へと飛び出し、
頭クラクラ、混沌としたサウンドに翻弄されていると、
あっという間にラスト・トラックへと行きつき、トートツに終わってしまい、ボーゼン。
「なんじゃこりゃあ!」と、松田優作みたく思わず叫んじゃいましたよ。
すぐさまアタマからリピートしてしまい、
すっかりこのアルバムの中毒性にヤラれてしまいました。

ダラス出身、ロス・アンジェルスを拠点に活動する、
R&B系新進シンガー・ソングライターの初フル・アルバム。
ドラムンベース? アンビエント・テクノ? アブストラクトR&B?
ヴェイパーウェイヴ? なんと表現すればいいのかわからないトラックが並びます。
プロダクションはえらくエクスペリメンタルなんだけど、
強烈に惹き付けられたのは、甘美な音色とメロディの美麗さゆえ。

最近のR&Bって、めちゃくちゃ音色の選択が良くなったと思うんだけど、
特にこのアルバムなんて、デリカシーの塊みたいな音響。
音の輪郭がくっきりとしていて、不快な響きがいっさい出てこない。
最近、電子音楽やアンビエントにも抵抗なく楽しめる作品が多くなったのって、
間違いなく音選びのチョイスとセンスの向上のせいだな。

リヴが絶叫する場面ですら、ぜんぜん耳に痛くならないのは、
声が浮遊するサウンドスケープに織り交ざって、
ナマナマしい感情表現がメロウなサウンドにくるまれているから。
こんな激情の伝えかたもあるんだねえ。斬新だなあ。
音楽一家に生まれ、エリカ・バドゥやロイ・ハーグローヴらが通った
ブッカーT・ワシントン高校からシカゴ美術館附属美術大学に進んで
アート、音楽を学んだという人だから、その才覚は確かですよ。

すっかりこのアルバムにマイっていたら、
なんとタイミングよく来日するというので、楽しみにしていましたよお。
ビルボードライブ東京、6月18日セカンド・ステージ。
開演前のステージに、どーんとドラムスが鎮座していたのは、意外や意外。
そういやリヴの実兄は、スナーキー・パピーやRC&ザ・グリッツで叩いていた
タロン・ロケット。なので、お兄さんを連れてきたのかと思ったら、違いました。
リヴをサポートするのは、白人男性のドラマーと、
シンセ・ベースを操る黒人男性の二人。リヴもサンプラーをかなり操作します。

いやぁ、強力なステージでした。
リヴのヴォーカルがとにかくストロング。シアトリカルな表現力がダイナミックで、
エリカ・バドゥを苦手とするぼくも、ねじ伏せられちゃいました。
エリカより断然いいじゃん、まじで。
ドラマーがサンプリング・パッドをスティックで叩いてプリセットのビートを鳴らし、
ドラムスの生演奏は、フィル・インを入れたり、ソロで大暴れするというスタイル。
螺旋状のエフェクト・シンバルもセッティングしてありましたよ。

リヴもサンプラーを使ってヴォーカルを加工したり、
モニターにマイクを向けてハウリングさせたりしながら、
アルバムでは1・2分の曲を、ぐんと引き延ばして聞かせます。
サンプリング・ループと生演奏がバトルになる場面では、
トランシーな磁場を生み出すほどでしたよ。

最後に余談ですが、
リヴにサインを入れてもらったCD、日本では手に入りません。
アマゾンにも流通していないので、ぼくはバンドキャンプから購入しました。
さすがにライヴ会場には持ち込んで販売するだろうと思いきや、それもなし。
もうアメリカでは、フィジカルで商売する気がまったくないんだね。

Liv.e "GIRL IN THE HALF PEARL" In Real Life Music inreallife066CD (2023)
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