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歌い上げない美学 シティ・ヌールハリザ [東南アジア]

Dato’ Siti Nurhaliza  SITISM.jpg

ダヤン・ヌールファイザの新作で、
ひさしぶりにマレイ伝統歌謡の素晴らしさを堪能していたところ、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-06-17
さらに決定打といえるマレイ・ポップの最高作が登場しました。
誰あろう、シティ・ヌールハリザのぴかぴかの新作であります!
デジタル配信された8曲に、4曲を加えたデラックス・アルバムとしてリリースされ、
これはぜったいCDを買わなきゃ、ダメなやつでしょう。

21年の前作 “LEGASI” は、子供向けの企画アルバムだったので、
ポップ作は “MANIFESTA SITI 2020” から3年ぶり。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-09-16
バラードを中心に、ラッパーをフィーチャーしたナンバーや、
ポップ・ムラユもあるという、手を変え品を変えのレパートリーとなっています。
ダヤン・ヌールファイザの制作でコネクションができたのか、
本作にもブダペスト・スコアリング交響楽団が3曲で参加しています。

やっぱり聴きものは、バラードですねえ。
小さく歌っていても、横隔膜が良く開いて、
十分出せる発声をあえて抑制しながら歌うところに、シティの真骨頂が表われています。

呼吸の使い方が鮮やかで、ときに鼻から息を抜きながら歌うのを織り交ぜながら、
自在に発声の表情を変えていくのは、技巧を駆使して意識的にやっているのではなく、
歌詞に合わせた表現として、自然に振舞った結果の歌いぶりなのですね。
こういうところに、シティの歌のとてつもない上手さ、天才ぶりが示されています。

ソッと静かに歌う唱法のなかで、さまざまな技巧を示しながら、
ここぞという歌い上げそうな場面でも、
あえて歌い上げない抑制の利いた歌いぶりは、もはや美学といっていいでしょうね。
ドラマティックな曲では、もちろん歌い上げるパートもあるんですが、
ぜんぜんシツコくならないし、必要最低限の表現だから、押しつけがましさもありません。
3曲目の ‘Sehebat Matahari’ の歌唱なんて、神が降臨しているとしか思えません。

これほどまでに歌い上げない美学は、間違いなくシティの人柄からくるものですね。
控えめな人柄や我を通さない欲のない性格は、芸能人としては弱点なのではないかと、
かつてのスリア時代に感じたものですけれど、今となってはそうでなかったとわかります。
それがシティの美学であり、
タイトルが示す「シティのイズム」、すなわち「シティ主義」だったのですね。

Dato’ Siti Nurhaliza "SITISM" Siti Nurhaliza Productions/Universal 5840000 (2023)
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