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ポスト・バップが蘇る南アの社会状況 アッシャー・ガメゼ [南部アフリカ]

Asher Gamedze  TURBULENCE AND PULSE.jpg

アッシャー・ガメゼのような音楽家が存在していることが、
現在の南ア・ジャズ・シーンの活況ぶりを証明していますよね。
アッシャー・ガメゼのデビュー作では、その政治的強度に圧倒されましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-02-05
今回のアルバムでも彼のラディカルな姿勢に、1ミリのブレもありません。

南アで蘇った「ミンガス・ジャズ」。
端的に言えば、この一言に尽きちゃうんですけれど、
前作の記事では、リヴァイヴァルとかレトロとかの誤解を招きかねないかと、
こうした形容を控えてスピリチュアル・ジャズを言及するに止めたんですが、
そんな遠慮は必要ないと、この新作で実感しました。

ガメゼがやっているジャズは、60年代のミンガス・ジャズと見事に共振しています。
じっさいのところ、ガメゼが
チャールズ・ミンガスを意識しているのかどうかはわかりませんが、
公民権運動を背景とした当時のアメリカ黒人意識の精神性と共有するものが、
ガメゼにあるのは確実でしょう。

黒人が置かれている社会状況が一向に改善せず、BLM運動が盛り上がったアメリカで、
それこそミンガス・ジャズが蘇ってもなんら不思議はないんですが、
むしろ南アで蘇ったのは、南アにおいてはBLM運動以前に、
70年代のブラック・コンシャスネス運動(BCM)を歴史の記憶として、
南ア・ジャズの音楽家が継いでいるからなんじゃないのかな。

ミンガスの代表作 “CHARLES MINGUS PRESENTS CHARLES MINGUS” を
連想させずにはおれないピアノレスの2管カルテットは、デビュー作と同じメンバー。
オープニングのガメゼによるモノローグは、本作のマニフェストといえるもので、
バックで弾いているピアノもクレジットはありませんが、おそらくガメゼでしょう。
古めかしさえ覚えるポスト・バップのサウンドが、こんなに美しく奏でられることに、
あらためて感動してしまいますよ。

ミンガスの激しさを思索的なサウンドに置き換えたような10曲のあとに、
アナザー・タイム・アンサンブルと名付けられたグループと
カイロでライヴ録音された3曲が収録されているのも聴きもの。
アナザー・タイム・アンサンブルは、モーリス・ルーカ(シンセ)、
アドハム・ジダン(ベース)、チーフ・エル=マスリ(ギター)の3人のカイロの音楽家に
アラン・ビショップ(アルト・サックス)が加わったグループ。
サブライム・フレークエンシーズ主宰のアラン・ビショップが登場するとは
いささか驚きましたが、ここではもっとのびのびと自由に演奏していて、
このメンバーとの録音ももっと聴きたくなります。

Asher Gamedze "TURBULENCE AND PULSE" Inernational Anthem Recording Co. IARC0057 (2023)
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