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移民音楽家がクリエイトするマルチカルチュラル・ジャズ グエン・レ [西・中央ヨーロッパ]

Nguyên Lê Trio  SILK AND SAND.jpg

ヴェトナム系フランス人ギタリスト、グエン・レの新作。
19年の前作も年の暮れに聴いた覚えがありますけれど、
今回もまた年末に聴いているのでした。今年の3月に入荷していたんだけど。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-12-29
今作もグエン・レらしいワールド・ジャズが全面展開した作品となっていますね。

ぼくがグエン・レのジャズをワールド・ジャズだという解釈をしているのは、
ジャズがグローバル化しているというのとは別の文脈で、
ワールド・ミュージックのジャズ的展開と捉えているからです。
グエン・レは、音楽教育機関を経ずに独学でジャズ・ミュージシャンとなった人で、
マルチニーク、カメルーン、セネガル、モロッコ出身ほかのミュージシャンが集まった、
ウルトラマリンというグループへの参加がキャリアのスタートでした。

グエン・レはロック、ファンク、ジャズをベースに、自身のルーツである
ヴェトナムの伝統音楽を自分の音楽に取り込むのと同じ作法で、
アフリカ、カリブ、アラブ、アジアなどさまざまな音楽家との交流を経ながら
マルチカルチュラルな音楽世界を生み出してきました。

グエン・レのワールド・ジャズが、けっして無国籍音楽とならないのは、
それぞれの音楽要素がフュージョン(融合)して溶けて消えてしまうのではなく、
それぞれの独自性を輝かして、ハイブリッドな音楽に昇華させているからです。
まさしくそれは、パリを拠点に活動する移民系音楽家のなせる業でしょう。

トリオ名義の本作は、前作に続くカナダ人ベーシストのクリス・ジェニングスと、
スティングのバンドで活躍するモロッコ人打楽器奏者ラーニ・クリジャが参加。
ゲストにサラエボ出身のトランペッター、ミロン・ラファイロヴィッチ、
ウルトランマリン時代の仲間のカメルーン人ベーシスト、エティエンヌ・ムバッペ、
フランス人フルート奏者シルヴァン・バロウが加わります。シルヴァンはここでは、
インドの竹笛バンスリ、アルメニアのダブルリードの木管ドゥドゥクを吹いています。

冒頭から変拍子使いで、クランチ・サウンドのギターが楽しめます。
グエン・レの楽曲は11拍子を多用するんですけれど、
今作には十進記数法を逆手に取った ‘Onety-One’ なんてタイトルの曲もあります。

これまでワールド・ジャズと形容していたグエン・レのジャズですけれど、
むしろマルチカルチュラル・ジャズと呼んだ方がいいのかもしれないと思い直しました。

Nguyên Lê Trio "SILK AND SAND" ACT 9967-2 (2023)
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