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世界へ拡散するエチオ・ジャズ ウォイマ・コレクティヴ [西・中央ヨーロッパ]

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「ティジータ」というタイトルに、むむっと手が伸びました。
ティジータとは、エチオピアのいわば、ブルース。
日本のヨナ抜き音階にも似たエチオピアの旋法が、独特の情感を醸し出す泣き節ですね。
<エチオピア人の心のふるさと>とも形容される、せつせつと歌われるエチオピアの情歌です。

そんなタイトルを付けたドイツのファンク・バンドのアルバムって何?と思って聴いてみたら、
本格的なエチオ・ジャズのインスト演奏が飛び出してきたので、ブッたまげてしまいました。
全トラックとも見事にエチオピアン・マナーな、オリエンタルかつエキゾティックなメロディー揃いで、
ドイツ人がよくまあこんなメロディーを書けるもんだと感心しきり。

なんでもこのグループは、ドイツのディープ・ファンク・バンド、
ポエッツ・オヴ・リズムのサックス奏者ヨハネス・シュライエマハーが
新たに始動させたユニットだそうで、全曲ヨハネスが作曲した本作がデビュー作とのこと。
ヨハネスはムラトゥ・アスタトゥケに教えを乞うてエチオ・ジャズを習得したというのですから、
本格的なのも道理で、ソングライティングもムラトゥ直伝ってわけですね。

ヨハネスはエチオ・ジャズのほかにモロッコの音楽にも強く影響を受けたとのことで、
6曲目のイントロでちらりと表れるグナーワを思わせるカルカベのリズムに、
その片鱗が表れています。
本作のクレジットで、おやと目を引いたのは、ゲストで1曲参加しているガーナのエボ・テイラー。
前回取り上げたエボ・テイラー復帰作のバックを務めたアフロビート・アカデミーが、
ポエッツ・オヴ・リズム人脈のグループなので、その縁で友情出演したのでしょう。

かつて、はじめてアンティバラスの“WHO IS THIS AMERICA?”(04)を聴いた時、
「白人でもこんな本格的なアフロビートを演奏できるのか!」と衝撃を受けましたけど、
このウォイマ・コレクティヴから受けたショックも、アンティバラスの時と同種のものでした。
もちろん非エチオピア人によるエチオ・ジャズという分野では、
ボストンのイーザー/オーケストラという先達もいますけど、
非アフリカ人によるアフリカ音楽のトレンドが、
アフロビートからエチオ・ジャズへと移りそうな予感のするアルバムです。
次作は、ぜひエチオピアのシンガーをフィーチャリングしたアルバムを期待したいですね。

Woima Collective "TEZETA" Kindred Spirits KS032CD (2010)
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