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つつましいボサ・ノーヴァ歌い パウラ・モレレンバウム [ブラジル]

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パウラ・モレレンバウムはかつてのボサ・ノーヴァの味わいを体現できる数少ないシンガーです。
パウラの歌声に魅せられたのは、パウラのご主人でチェロ奏者兼アレンジャーの
ジャキス・モレレンバウムと坂本龍一がコラボした“CASA” がきっかけでした。
その後リリースした“A DAY IN NEW YORK” でも、
パウラは素晴らしい歌声を聞かせていましたね。

ところが、その後のソロ・アルバム“BERIMBAUM” では、
ボサクカノヴァやセルソ・フォンセカによるクラブ仕様のプロダクションが
パウラの歌声を殺していて、大幻滅。
イマドキのこじゃれたプロダクションでは、古風な佇まいを持つパウラの個性は損なわれるだけです。

今度の新作は、ジョアン・ドナートとの共同名義によるドナート作品集となりましたが、
麗しいパウラの歌声が蘇り、“BERIMBAUM” の雪辱を果たす快作となりました。
ドナートが昨年リリースしたジャズ・サンバ作品“SAMBOLERO” も
現役復帰後の最高作でしたけど、中音域を豊かに鳴らすドナートの穏やかなピアノ・タッチや、
フェンダー・ローズを想わせる懐かしいエレピ・サウンドは、今作でも快調ですね。
パウラの歌声とも相性バツグンで、しなやかなサウンドが極上のボサ・ノーヴァを紡いでいます。

パウラの声質ってクリアなんだけど、適度な湿り気を帯びていて、
それが落ち着きのある表情につながっているんですね。
主張しない声と、余計な自意識を感じさせない歌いぶり、そのつつましさにホレてしまいます。

本作にはアップ・トゥ・デートなプロダクションも施されているとはいえ、
クラブ・サウンドのような派手なものではなく、あくまでも控えめなので、
落ち着きのあるドナートのピアノ・サウンドにもよく馴染んでいます。
歌の途中で唐突に日本語が登場する“A Paz” のしなやかな美しさは、この二人ならではですね。

Paula Morelenbaum & João Donato "AGUA" Biscoito Fino BF992 (2010)
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