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恋物語歌い レー・クエン [東南アジア]

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んも~、ホメちぎるヴォキャブラリーを使い果たしちゃって、なんも言えませんよ。
ティナリウェンとこの人くらいじゃないかなあ、そんな感想を持つのは。
ヴェトナムが生んだ世界最高のバラディアー(おぉ、そこまで言い切るか、自分)、
レー・クエンの新作です。ヴェトナムで3月に発売され、届くのを楽しみにしておりました。

今回も、前作“KHÚC TÌNH XƯA 3 : ĐÊM TÂM SỰ” 同様、
ホルダーケース仕様の豪華パッケージの中に、
歌詞カードが美麗フォトカードと裏表になって9枚入っておりますよ。
艶やかなレー・クエンのお姿、お目にかけましょうね。

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ここのところ、ヴォトナム戦争前のヒット曲や作曲家の作品を
取り上げる企画が続いていたレー・クエンですけれど、
新作は現代の作曲家とコラボレートしたアルバムとなりました。
共同名義となっているタイ・ティンがその人で、ゼロ年代から頭角を現している作曲家とのこと。
ロマンティックなラヴ・バラードを書く人で、
その古風な作風は、レー・クエンが歌うのにハマリ役といえます。

ヴェトナムでボレーロと表現されるドラマティックなバラードを中心に、
タンゴにアレンジした曲や、伝統歌謡のメロディを取り入れた曲もあるなど、
その仕上がりは、ノスタルジック路線のアルバムと変わらぬ内容になっています。
すでにレー・クエンは、昔の曲も今の曲も同じように歌いこなすことができて、
古い曲に新たな息吹をもたらすバラード表現が完成しているんですね。
アルバム制作面でも、ヴェッタン・スタジオの優秀な伴奏陣によるプロダクションは
今回もスキがなく、文句なしの充実作となっています。

恋愛を歌う女性歌手は、世界に星の数ほどいても、その多くが恋愛を「説明」するばかりで、
「物語」にして歌える歌手は、ほんの一握りしかいません。
多くの凡庸な歌い手は、恋につまらない具体性を持ち出して、
ラヴ・ソングにスケール感を生み出せないばかりか、貧相にしてしまいます。
才能のある歌い手は、些末な現実で恋模様を語るのでなく、
普遍の物語に膨らませて歌う術を知っています。

「電話帳を歌っても感動するだろう」と表現されたのは、エディット・ピアフでしたけれど、
レー・クエンもまさにそれと肩を並べるクラスの歌手になったことを、
わずかな息づかいまでもコントロールしつくしたその歌いぶりに実感します。

Lệ Quyên & Thái Thịnh "CÒN TRONG KỶ NIỆM" Viettan Studio no number (2016)
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