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新しい冒険の始まり スター・フェミニン・バンド [西アフリカ]

Star Feminine Band  In Paris.jpg

ベニンのガール・グループ、スター・フェミニン・バンドの新作ですよ!
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-01-02

デビュー作から2年、うわー、演奏、上達したじゃないですか。
拙い演奏をしていたデビュー作とは、見違えましたね。
リズム・セクションがすっかり安定して、アンサンブルががぜん良くなりましたよ。
きっと猛特訓したんだろうけど、彼女たちの急成長ぶりに、目を見開かされました。
デビュー作では10歳から17歳だった彼女たちは、12歳から19歳に成長したわけで、
この年頃の子供にとっての2年間というのは、大きな成長を遂げる時期ですよねえ。
なんだかもう彼女たちのことになると、すっかり保護者目線で応援してしまう自分です。

セカンド作は、フランス、スイス・ツアーを成功させて、パリで録音されたもの。
パンデミックの状況下で国外ツアーを敢行するのは、まるで障害物競走のような
困難の連続だったと、ライナー・ノーツに書かれています。
パスポートの取得から、未成年者の夜間労働の許可証ほか、
その他各種証明書の煩雑で非能率な手続きを、乗り越えなければなりませんでした。
そのうえ、ベニンでは未成年者はワクチン接種を受けることができないため、
ワクチン接種にも大変な苦労があり、ツアーの先々でも何度も検疫で足止めされたようです。

そんなさまざまな障壁を乗り越えながら、最初フランスに到着した彼女たちは、
エスカレーターにどうやって乗ればいいのかわからずに立ちすくみ、
電気のない炎天下で演奏をしてきた環境とは、まるっきり別世界の大きなステージで、
わくわくが止まらない歓喜に満ちた冒険をしてきたのですね。

ポリリズムが応酬するオープニングの‘We Are Star Feminine Band’ は、
まさにコンサートのオープニングにぴったりの曲。
ハーモニー・ヴォーカルが少女たちの一体感を強調して、
ブリッジを挟んで、ジュリエンヌのベースが倍テンポで演奏し始めると、
がぜんバンドのグルーヴが大きくなって、アンサンブルがヒート・アップします。
22年3月に12歳を迎えたばかりのバンド最年少のドラマー、アンジェリックは、
デビュー作ではリズム・キープに必死といった感じだったのが、
今作ではフィル・インにもゆとりがありますよ。

新たにユニセフの大使という役割を負うようになったスター・フェミニン・バンドは、
アフリカ社会のなかで選択肢を持たない少女たちの現状を、ダイレクトに訴えています。
‘Le Mariage Forcé’ で子供の見合い結婚の強制に抗議し、
‘L'excision’ は、性器切除に反対するなど、彼女たちに差し迫っている状況が、
複雑なポリリズムによって演奏されると、その切迫さがより生々しくリスナーに届きます。

ベニンのヴードゥー由来のリズム、サトに、コンゴのルンバやレゲエなどのリズムを
さまざまにミックスしたリズム・フィギュアもこなれ、
ルンバのセベンのようなダンス・パートでのギター・リックや、
オルガンやバラフォンのキャッチーなフレーズも効果を上げていますね。

演奏力に合わせて、メッセージを伝えるコミュニケーション能力も
格段に向上した彼女たちの今後の新たな冒険が、ますます楽しみです。

Star Feminine Band "IN PARIS" Born Bad BB157 (2022)
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