モントルーのジョアン・ジルベルト [ブラジル]
ジョアン・ジルベルトをリアルタイムで聴き始めたのは、77年の”AMOROSO” から。
当時は、いまのようになんでもホメる大甘な評論家なんていなかったから、
「品位にかげりが生じた」(『ニューミュージック・マガジン』1977年9月号
平岡正明×長谷川きよし×中村とうよう 対談中の平岡正明の発言から)
なんてキビしい言葉を投げつけられていましたけれど、
平岡さんがそう見立てた論拠には、ぼくも大いにうなずいたものです。
あの頃の評論家の洞察力には、ホント、かなわないよなあ。
やっぱジョアン・ジルベルトは、オデオン3作と70年の“EN MÉXICO” だけだなと、
はや70年代の時点で評価を固めてしまっただけに、
86年に出た“LIVE AT THE 19TH MONTREUX JAZZ FESTIVAL” には、驚きました。
長くジョアンから聞けなくなっていたイキオイと力強さが、戻っていたからです。
リアルタイムで聞いたジョアンのアルバムで満足したのは、この一作だけでしたね。
時は、85年7月18日。あのやかましいモントルーの客を、よく黙らせたものです。
行儀悪いからなあ、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルの客は。
このレコーディングが奇跡的だったのは、ジョアンのパフォーマンスもさることながら、
観客のマナーの良さにあったんじゃないでしょうか。
「シーーーーッ!」なんて、観客が周りに呼びかけてるくらいだもんね。
2枚組LPがのちにCD化された際の、日本製のブラジル盤についてのトリビアは、
以前記事を書いたので、参照いただくとして、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-08-10
本作は7月18日のパフォーマンスを完全に収録したものではありませんでした。
実際の演奏とは曲順も入れ替えているし、曲もいくつかカットされています。
カットされた曲のうち、‘Rosa Morena’ は、アメリカのエレクトラ・ミュージシャンが
本作の短縮編集盤を出した時に追加され、聴けるようになりました。
そして今回、このほかの未収録曲、‘Wave’ ‘Chega De Saudade’
‘Samba De Uma Nota Só’ ‘Isto Aqui O Que É’ を収録したCDが突然出たんです。
有名ジャズ・アーティストの非公式ラジオ放送音源をリリースしている
ハイ・ハットが出したもので、ま、要するにブートなんですけど、
1曲目が演奏の途中から始まる ‘Wave’ でピンときました。
これ、昔買ったことのあるブートDVDと同じ音源ですね。
このモントルー・ライヴは、当時映像も出す予定で撮影されたものの、
結局発売中止になってしまったんですよね。
そのヴィデオ・テープが流出したらしく、ブートDVDを昔買ったんですが、
音質・画質ともに劣悪で、のちに処分してしまいました。
1曲目が途中から始まる ‘Wave’ だったことはよく覚えているし、
その他のアルバム未収録曲も同じだった記憶があるから、間違いないでしょう。
ハイ・ハット盤の音質はまずまずなので、
あのライヴ盤のファンなら、手元に置いておきたいアルバムですね。
João Gilberto "LIVE AT THE 19TH MONTREUX JAZZ FESTIVAL" WEA 2292547282-2 (1986)
João Gilberto "LIVE IN MONTREUX" Elektra Musician 9-60760-2
João Gilberto "MONTREUX 1985" Hi Hat HHCD3198
2022-11-05 00:00
コメント(0)
コメント 0