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パンデミックが進化させたエレクトロ・ジャズ・ヴォーカル エリザベス・シェパード [北アメリカ]

Elizabeth Shepherd  THREE THINGS.jpg

会社のお昼休みに “MONTRÉAL” を激愛聴中。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-04-12
ああ、これを5年前に聴いていたらなあ。
間違いなく2018年のマイ・ベスト・アルバムに選んだのに。

そんな前作をヘヴィロテしてるところに、最新作が届きました。
パンデミック下の制約を受けてレコーディングされたこの最新作、
これまでの地平と違う新たな表現を切り開いた力作じゃないですか。

攻めてるなあ、エリザベス。
これまで以上にエレクトロニカの要素を強めて、
なんの音だかよくわからない音響が行き交う、
クリエイティヴなサウンドを生み出しています。
外出禁止によってミュージシャン同士が集まれない状況下、
エリザベスは、身の回りの音からインスピレーションを受けるようになったといいます。

タイプライター、ゴミ箱、レコードの音飛び、鳥の泣き声などをコラージュして
(かなり加工処理しているようで、どれがそれなのか不明ですが)、
サックスやコントラバスと交信しながら、有機的な音と電子音が絡み合って、
ミステリアスな音空間を生み出しています。
エリザベスのソングライティングの特徴であるクールなコード進行や、
独特なコード感が絶妙なスパイスとなって、斬新な表現を獲得しているじゃないですか。

ギタリストがバンジョーを弾いた曲や、ウクレレやカリンバの使用など、
これまでにない楽器の採用や、さまざまな音のレイヤーによって、
知覚の扉を次々と開けていくような、冒険的な試みに、ドキドキさせられますよ。
オーガニックとデジタル、具象と抽象、メロディアスと無調などなど、
アンビヴァレントな要素が共存しながら一体化していく音作りが鮮やかです。

パンデミックの災いを転じて、レコーディングの制作過程に新たな可能性を開いた
アーティストはさまざまいますけれど、エリザベスも音楽性に大きな飛躍を遂げましたね。
エリザベスの才気のほとばしりを感じずにはおれない、たいへんな意欲作です。

Elizabeth Shepherd "THREE THINGS" no label PM106CD (2023)
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