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敬遠しがちなトルコのポップス ネスリハン・デミルタシュ [西アジア]

Neslihan Demirtas.jpg

最近トルコのポップスって、聴いてないなー。
ネスリハン・デミルタシュという新人女性歌手のアルバムを手にして、いまさらながら気付きました。

サズなどの弦楽器の響きを活かしたハルクやアラベスクだと手も伸びるんだけど、
どうもトルコのポップスは重厚長大というか、
大仰なアレンジにヘキエキとさせられるものが多くって…。
セゼン・アクスの頃から変わらないですよね。良く言えばドラマティックってことなんでしょうけど、
<さりげなさ>なんぞクソクラエってなプロダクションは、正直シンドいです。
やっぱトルコは古典の方がいいなあと、アーカイヴものに現実逃避しがちになるんですが、
たまには最近のものも聴きたい、そう思って買ったのがこの人でした。

で、良かったです。
ハスキー・ヴォイスで、歌唱力も確かな実力派さんでした。
全体にはアクースティックな音作りで、
ジャコ・パストリアスふうのベースが活躍するフュージョン・タッチの演奏もなかなかカッコよく、
ネスハリンの情感のある歌がよく映えます。
アダっぽい歌い方に姉御肌を感じさせる人で、
大きく歌い上げても大仰にならないところが好感度高し。
自作曲のほか、セゼン・アクスの曲やアジダ・ペッカンのレパートリーも取り上げています。
今の季節じゃなくって、もっと寒い頃に出会いたかったアルバムではありましたが。

Neslihan Demirtaş "HERŞEYE RAĞMEN" DMC no number (2009)
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イスラエルの国民的歌姫 オフラ・ハザ [西アジア]

YEMENITE SONGS.jpg    Ofra Haza_YZ190.jpg

十何年ぶりにオフラ・ハザの“YEMENITE SONGS”をCD棚から引っ張り出してみました。
誰からも愛されるクセのない美声、よくできたプロダクション。
うん、流行ったわけだよね、とあらためて納得。
80年代後半のワールド・ミュージック・ブームのさなか、
エリックB.&ラキムがサンプルして、“Im Nin' Alu”が大ヒットするなんてラッキーなことも重なり、
彼女は一躍世界的に知れ渡るイスラエルの大スターになったんでした。
89年バブル絶頂期の日本にもやってきて、東京音楽祭でクランプリまで受賞しちゃいましたね。

オフラ・ハザは、57年テル・アビブに貧しいイエメン系難民家族の9人兄弟の末娘として生まれ、
12歳から地元の劇団ハティクバ(Shechunat HaTikva)に入団し、
団員として数々のレコーディングを残したといいます。
当時のレコードを聴いたことはありませんが、YouTubeを検索してみたら、
劇団員とともに歌っている78年のモノクロ映像がたくさんありました。
当時すでにイエメン民謡も取り上げていて、“Im Nin' Alu”を歌っている映像もあります。
“YEMENITE SONGS”のど派手なアレンジと違って、
いかにもフォーク・ソングといった佇まいのヴァージョンとなっています。
穏やかな表情で歌うオフラ・ハザの美貌も見もので、
メイクやヘアがやたらケバくなった後年より、この頃の方が魅力的ですね。

これを観ていたら、なんだかオフラ・ハザって、
60年代のフォーク・ソング集会の歌姫みたいだなあと思ってしまいました。
(ぼくはその世代じゃないので、あくまで想像で物言っているだけですけどね)
そういうふうに考えると、彼女のお行儀のいい優等生的な歌声も、
なんだかカレッジ・フォークのように聞こえなくもありません。

ぼくがオフラ・ハザを知ったのは、あの当時の多くの人同様、
“YEMENITE SONGS”をライセンス発売した、イギリスのクローブスタイル盤がきっかけ。
のちに彼女のイスラエル盤旧作を買って、
ふつーのポップス歌手なのに少しがっかりした覚えがあります。
“YEMENITE SONGS”は、幼い時に母親から教わった
イエメンの歌を取り上げた企画ものであって、
彼女にとって異色作であったことが、あらためてよくわかりました。

SHIREI MOLEDET A・B.jpg

彼女のポップス作のなかでは、『祖国の歌』というタイトルのイスラエルの名曲集が好きで、
エキゾティックなメロディもふんだんに出てくる85年の第2集はずいぶん愛聴しました。
のちに83年の第1集と2イン1でCD化され、
ボーナス・トラックとして89年の第3集から1曲が最後に収録されています
ぼくの大好きな第2集のデザインが、CDジャケットに使われたのは嬉しかったなあ。
第1集のデザインは、バック・インレイに使われています。

“YEMENITE SONGS” 同様、こちらもずいぶんとひさしぶりに聴き直しましたが、
意外なほど古さを感じさせず、楽しめました。
その後オフラ・ハザは、2000年に42歳の若さで亡くなってしまったので、
若い人は知らないかもしれません。
昔、オフラ・ハザっていうイスラエルの美人な歌手がいてね、なんて話をちょっとしたくなりました。

Ofra Haza "YEMENITE SONGS" Hed-Arzi CD15110 (1985)
[7インチ] Ofra Haza "IM NIN' ALU" WEA YZ190 (1988)
Ofra Haza "SHIREI MOLEDET A・B" Hed-Arzi CD15397 (1983/1985)
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妖艶なるアナトリアの民謡歌い バイラム・アラジュ [西アジア]

Bayram Araci.jpg

冬になると聴きたくなるのが、トルコやギリシャの音楽と日本の語り物。
サズや三味線のような弦楽器の響きが、北風吹きすさぶ季節にぴったりくるんですね。
そんな寒い季節になると手が伸びるのが、
戦前から活躍するトルコの民謡歌手、バイラム・アラジュのアルバムです。

戦後の新しい録音によるサズの弾き語りは、
冬にぴったりの吟遊詩人アーシュクらしいシブい演唱を聞かせますが、
古いSP録音では、エグ味のあるダイナミックな歌と演奏が妙味。
流麗なバーラマとパーカッシヴな小物打楽器によるダンス・チューンから、
振り絞るように歌うブルージーなナンバーまで、多彩な表情をみせてくれます。

アンカラのラジオでも人気だったというのもうなずける、
古きアナトリアの大衆味あふれる曲の数々。
妖艶な表情もみせる男っぷりが、ご婦人方を魅了したのではないでしょうか。

Bayram Araci "ALLI YAZMA" Kalan CD206
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