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ブルキナベ・ラッパー ジョーイ・ル・ソルダ [西アフリカ]

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ジャズ・ファンなら、すぐにわかりますよね、このジャケット・デザイン。
ハンク・モブレーのブルー・ノート盤“DIPPIN'” から借りてきたのは、一目瞭然。
パロディというより、オマージュを感じさせる仕上がりで、よくできています。
リード・マイルスのデザインを踏襲しながら、
コロンビア盤のステレオ・ロゴをあしらったりと、スノッブな関心もそそりますけれど、
地を単色の赤でなく、汚れた質感で仕上げたところに、
ヒップ・ホップの気概を感じ取りたいと、ぼくは思います。

主役のジョーイ・ル・ソルダは、ブルキナ・ファソの首都ワガドゥグで
活動する28歳のラッパー。本作は、14年にリリースしたソロ第2作です。
アフリカン・ヒップ・ホップでは、ここのところブルキナ・ファソに注目が集まっています。
ワガドゥグではヒップ・ホップの一大シーンが出来ていて、
ヒップ・ホップのビッグ・イヴェントも行われ、盛り上がっている様子が伝わっています。
なかでもアート・メロディの人気は絶大で、
ちょうど1年前のミュージック・マガジンで、松山晋也さんと吉本秀純さんが揃って、
アート・メロディの最新作“MOOGHO” を取り上げていたのが印象的でした。

ジョーイ・ル・ソルダは、
そのアート・メロディとフランス人ビートメイカーのレッドラムとともに、
WAGA3000というユニットで一緒に活動しています。
レッドラムは本作でもトラックメイカーとして参加しています。
14歳でウー=タン・クランを知って、
リリックを書き始めるようになったというジョーイは、
貧困、腐敗、暴力の日常を送る、
未来のないワガドゥグの若者の叫びをラップします。

リズム感が骨太で強靭。
フランス語でラップしても、
フランス語独特のもしゃもしゃした発声のキレの悪さがなく、ディクションは明快。
フランス語ギライのぼくが、まったく抵抗を感じないのは珍しいな。
とはいえ、やはり聴きものは、母語のモシ語によるラップで、
押し出しの強いフロウがゴツいことといったら。圧倒的な説得力で迫ってきますよ。

ギネア、コナクリ出身の女性ラッパー、アニー・カシーと
トーゴ人ラッパーのイロム・ヴァンスなどのゲストも華を添えます。
イントロこそ、バラフォンをフィーチャーしていますが、
サウンドにアフリカ的な響きを付加したトラックは、これのみ。
ダークでヘヴィなトラックあり、クロスビートを効果的に使ったバックトラックなど、
トラックメイクは多彩で、あくまで主役のフロウやライムによって、
アフリカン・ヒップ・ホップのアイデンティティを打ち出していて、その意気を買えます。

ヒップ・ホップの名門レーベル、ストーンズ・スロウのマスタリング・エンジニア、
デイヴ・クーリーがミックスに腕をふるっていて、
アフリカ最貧国ブルキナ・ファソ発の作品とは思えぬクオリティ。
アート・メロディは配信でしかリリースしていませんが、
ジョーイ・ル・ソルダはフィジカルをリリースしていることにも、大好感。
こういう粋なジャケットを作るなら、フィジカルにしなきゃ、無意味でしょ。

Joey Le Soldat "BURKIN BÂ" Akwaaba Music/Tentacule no number (2014)
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