春霞に溶けていく歌声 アンディエン [東南アジア]
15年ぶりのアンディエン。
もうお母さんになったんだって?
結婚していたことも知りませんでした。
いやあ、歳月は流れるだなあ。
まるでお子ちゃまなアイドル・ルックスのCD表紙に、
買うのをためらったのが、ついこの前のよう。
16歳当時の02年作“KINANTI” には、心底驚かされました。
インドネシアの天才少女という評判に、CDを手に取ってみれば、
幼児タレントか?てな写真にゲンナリ。
裏ジャケットの、ショートパンツにタンクトップ姿で唇かんだポーズもカンベンつーか、
ジャリ・タレだの、ロリータ趣味だのに、ムシズが走る性分なもので、
こんなん金出して買うの、ヤダなあとか思ったよなあ。
で、その表紙写真からは到底想像がつかない、しっとりとした歌声と、
都会的で洗練されたプロダクションのハイ・レヴェルぶりにノックアウト。
ほんとに、このコが、これ歌ってんの!? 別人でしょ、これ。
その落ち着き払った歌声に、びっくりしました。
ティーン特有のはしゃいだ感じなど、どこにもありません。
背伸びして、大人びた歌い方をしているというのとも違って、
発声じたいが柔らかく、破綻しない一定のトーンを、ずっと保っているんですね。
霞がかった声で、声が前に出ることがないので、
それが余計落ち着いた雰囲気を漂わせます。
アップ・テンポの曲でも、華やいだりしないので、声がキンキンすることも皆無、
10代らしからぬ歌いぶりは、この人独自の個性でした。
歌い回しに、シーラ・マジッドの影響も感じさせますが、
ハイ・トーンにオキャンな感じもにじみ出るシーラとは、だいぶ印象が異なります。
ジャジーなプロダクションにのる、どこまでも柔らかく、こもった歌声は、
極上のAORを演出するのにうってつけな癒し系ヴォーカルで、
おそるべき16歳!と驚嘆しました。
あれから15年。
あいかわらず、もやあっとした声をしてますねえ。
02年作のジャケットとナカミのチグハグぶりと違って、
ジャケットの淡いブルーが、アンディエンらしさをよく表わしています。
早熟すぎた歌声が、ようやく実年齢に追いついたというか、
歌声と外見に違和感がなくなったのをおぼえます。
イントロとアウトロでペロッグ音階が飛び出すのは、
おやっと思わせる演出ですけれど、これも大人になった余裕でしょうか。
ちらっと最後に出てくる赤ちゃんの声は、アンディエンの子供なのかな。
しなやかなプロダクションによくなじむ慈愛に満ちた歌声から、
母アンディエンの今がよく伝わってきます。
Andien "METAMORFOSA" Demajors no number (2017)
Andien "KINANTI" WEA 0297-45336-2 (2002)
2017-12-03 00:00
コメント(6)
すみません。ずっと前からbunboniさんの文章に感じていること、というか散見するフレーズで、個人的には違和感があることです。
〜〜
「ジャリタレ」「ティーン特有のはしゃいだ感じ」「アイドルの…(云々カンヌン)」とか、子どものお遊びだとかなんだとか…。
〜〜
この手のものを「大人の」歌と”相反する””正対する”価値のものであるように考えて、避けて通る
〜〜
しかし、いざ聴いてみたら、しっとり落ち着いていて驚いた
〜〜
こんな傾向がbunboniさんには、かなりハッキリあるように思います。
それが一概にいけないと言うわけじゃないんですが…。
by としま (2017-12-03 22:49)
はい。
幼児的なものがキライですので。
by bunboni (2017-12-04 06:25)
ですから、それらは幼児的なものではないんだと、僕は言いたいのです。
by としま (2017-12-04 07:36)
おっしゃる通りですね。
知らない人は、まず容姿でしか判断できないので、そこでフルイにかけちゃうから、その傾向は大いにありですね。結果的に、歌が幼児的でなければ、オッケーなわけです。
by bunboni (2017-12-04 09:13)
なんだか注文つけたみたいになって、もうしわけありません。
それはそうと、まったく関係ない話で恐縮なんですが、つい先月11/29に、渡辺貞夫さん1974年の郵便貯金会館でやったライヴ盤『ムバリ・アフリカ』がCDリイシューになりましたね。これって、初CD化じゃなかったですか?僕の勘違いだったらご指摘ください。
by としま(今後は戸嶋 久でやります) (2017-12-04 11:05)
『ムバリ・アフリカ』は、もう何回かCD再発されてたはずです。
by bunboni (2017-12-04 12:12)