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カーボ・ヴェルデ移民の若者たちが再発見した伝統フナナー [西アフリカ]

Pour Me A Grog.jpg

ヴィック・ソーホニーが主宰するオスティナートから、
伝統フナナーの編集盤が登場しました。
これまでオスティナートが復刻してきたのは、
エレクトリック化したポップ・フナナーでしたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-09-08
今回はアコーディオン(ガイタ)と金属製ギロ(フェロー、またはフェリーニョ)に、
ベース、ドラムスのリズム・セクションを加えた
伝統色濃いフナナーをたっぷりと楽しめます。

フナナーは、バディウスと呼ばれる奴隷の末裔にあたる下層庶民の間で育まれた音楽で、
今回の編集盤の解説のなかでも、バディウスはジャマイカのマルーンや、
ブラジルのキロンボに匹敵するコミュニティだったと強調されています。
かつてフナナーは、ダンスが煽情的すぎると教会から敵視され、
植民地政府からも歌詞が解放闘争を助長すると危険視されて禁止となったことから、
かえってバディウスたちにとって、抵抗のシンボルとなりました。
レユニオンのマロヤとまるで同じ歴史をたどったわけですね。

そして、伝統フナナーを再発見したプロセスが、イイ話なんですよねえ。
欧米に渡ったカーボ・ヴェルデ移民の若者たちは、
アコーディオンをシンセに置き換え、エレクトリック・ギターを取り入れて
フナナーをポップ化しましたけれど、故郷に戻ってバディウスの古老たちから、
伝統フナナーを直接学ぶようになったんですね。
それによって、サウンドをアクースティックに戻すとともに、
伝統ガイタを単に再現するのではなく、
ベースとドラムスでフナナーのビートを強化したのでした。

そんな90年代末のフナナー再評価の立役者、
フェロー・ガイタを1曲目に置いているんですが、これが実はフナナーじゃないんですね。
‘Rei Di Tabanka’ というタイトルどおり、この曲はタバンカ。
フナナー同様、バディウスにとって重要なダンス・リズムのひとつです。

フナナーとよく似た4分の2拍子のリズムですけれど、
途中に二連の16分音符が入るところがフナナーと違うんですね。
フナナーがタッタ、タとなるところ、
タバンカはタッタタッタと、フナナー以上の疾走感が出ます。
なぜフナナーでなくタバンカの曲を選曲したのかわかりませんが、
解説にもタバンカについてはまったく触れられていません。

Ferro Gait  Rei Di Tabanka.jpg   Ferro Gaita  Rei De Funana.jpg

フナナーをテーマとした編集盤で、タバンカをいきなりトップに選曲したのがナゾですけど、
この曲は、フェロー・ガイタのセカンド作のタイトル曲ともなった彼らの代表曲です。
拙著『ポップ・アフリカ800』に選盤した、
フェロー・ガイタのフランス、ルサフリカ盤にも収録されています。
ちなみにこのルサフリカ盤は、カーボ・ヴェルデの現地盤で出たデビュー作と、
このセカンド作から選曲した編集盤なのです。
で、タイトルを『タバンカの王様』から、『フナナーの王様』に変えたんですね。

Ferro Gaita, Etalvino Preta, Tchota Suari, Avelino, Orlando Pantera, Peps Love, Bitori, Fefé Di Calbicera
"POUR ME A GROG: THE FUNANÁ REVOLT IN 1990S CABO VERDE" Ostinato OSTCD008
Ferro Gaita "REI DI TABANKA" Ferro Gaita Production no number (1999)
Ferro Gaita "REI DI FUNANA" Lusafrica 02305-2 (2000)
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