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リスボン新世代が更新するカーボ・ヴェルデ音楽 ディノ・ディサンティアゴ

Dino D’Santiago  MUNDU NÔBU.jpg   Dino D’Santiago  EVA.jpg

ブルーノ・ペルナーダスやルイーザ・ソブッルなど、
ポルトガル音楽新世代と称される音楽家の活躍が目立つようになってきましたね。
82年にポルトガル最南端のクァルテイラで生まれたシンガー・ソングライター、
ディノ・ディサンティアゴも、そうした世代のひとり。

そのディノの5年ぶり2枚目となる新作が、ぼくには静かなる衝撃作でした。
派手さのない地味な作品なんですけれど、
従来のカーボ・ヴェルデ音楽を塗り替える、ハイブリッドな要素をたくさん提示していて、
聴けば聴くほど、これはたいへんなアルバムなんじゃないかと、思えてくるのでした。

ディノ・ディサンティアゴは、カーボ・ヴェルデのサンティアゴ島出身の両親のもとに
生まれたアフロピアン。90年代のヒップ・ホップで育った世代らしく、
「ディノ・ソウルモーション」のステージ・ネームで、ヒップ・ホップ/R&Bバンドの
イクスペンシヴ・ソウル&ジャグアル・バンドのシンガーとしてプロ入りし、
ヒップ・ホップ・グループのダ・ウィーゾルのシンガーとしてその名を上げました。

ディノは当時を振り返って、90年代のリスボンのヒップ・ホップ・シーンには
ラッパーは山ほどいても、歌えるシンガーが不足していて、
ディノはあちこちのグループから引っ張りだこになっていたそうです。
子供の頃から教会の聖歌隊で歌っていたディノは、
ラッパーたちと同じゲットーの出身という仲間意識もあって、
歌手を必要とするラッパーから「教会からディノを連れて来いよ」と、
いつもお呼びがかかったとのこと。

そんな「ソウル・マン」だったディノが、
ルーツであるカーボ・ヴェルデへ回帰するきっかけとなったのは、
両親の故郷のサンティアゴ島へ、父親と旅をしたことでした。
ポルトガルで40年暮らした父親が、仕事をリタイアして、
電気も水道もないサンティアゴ島の田舎に帰って暮らしたいと言い出し、
父親に付き合って一緒にサンティアゴ島へ渡ったそう。
ディノはその旅を通して、自分の内なるクレオール性を発見し、
自分が持っていた本来の声を見出したと言います。

ディノはリスボンに戻ると、すぐさま「ディノ・ディサンティアゴ」と名前を改め、
ソウルにファンク、フナナーにバトゥク、ヒップ・ホップにエレクトロを調和させる
サウンドづくりに熱中しました。13年に出したソロ・デビュー作が、
まさにその成果を示すものだったわけなんですが、今回の新作で思い出すまで、
実はこのデビュー作、家のCD棚のこやしになっていたんでした。

あらためて聴き直してみると、以前はカーボ・ヴェルデ音楽の濃度の低さに、
物足りなさを覚えたんですけれど、ネライがヒップ・ホップやR&Bを通過したセンスを
取り入れることにあったと考えると、聞こえ方がまったく変わってきます。

パウロ・フローレスとデュエットした哀愁味たっぷりの‘Pensa Na Oi’ は、
センバとモルナのミックスだし、フナナーのリズムを思いっきり遅くして、
アコーディオンとカヴァキーニョが彩りを添えた‘Kaminhu Poilon’ など、
実にさまざまなアイディアが散りばめられていたんですね。
うわぁ、ぜんぜん聴き取れてなかったなあ。こりゃ、大反省。

カヴァキーニョのせつない響きと男女の柔らかなコーラス、
バトゥクのチャンペータのリズムにフナナーのフェローを重ねた‘Ka Bu Txora’では、
エンディングに老人たちの会話をコラージュするなど、
びっくりするほど練り込んだ仕上がりとなっています。
フリューゲルホーンとギターのデュオで歌ったタイトル曲‘Eva’ の
ソダーデたっぷりな泣き節にも、あらためて感じ入りました。

新作は、そんなデビュー作を一歩も二歩も前進させた内容で、
今回はエレクトロニカの要素を多く取り入れ、
フォークトロニカのセンス溢れる作品となっています。
クドゥロ/EDM・ユニットで一世風靡したブラカ・ソム・システマの
元メンバー2人が参加している影響もあり、ドイツやイギリスで交流した音楽家との
出会いが今回の音楽制作に大きく関わっているようです。

ナイーヴな感性が発揮されたソングライティングは、デビュー作と変わらず、
本作ではキャッチーなメロディが増え、デビュー作の地味な印象が取り払われましたね。
ポルトガル語圏アフリカのさまざまな音楽を参照して、キゾンバとのミックスが増えたほか、
フナナーの速いリズムをわざと遅くする試みも、R&Bのスロー・ジャムのセンスに仕上げた
‘Nôs Funaná’ で聴くことができます。

「ブラカ・ソム・システムは、新しいリスボンのサウンドを生みだしたけれど、
ぼくらはさまざまなビートを組み合わせて、シンガーのためのサウンドに変換させたんだ」と
ディノが発言するとおり、カーボ・ヴェルデ音楽を更新するリスボン新世代の注目作です。

Dino D’Santiago "MUNDU NÔBU" Sony Music Entertainment 19075899292 (2018)
Dino D’Santiago "EVA" Lusafrica 662842 (2013)
コメント(2) 

コメント 2

戸嶋 久

2018年作のほう、ジャケット・デザインが完璧にぼく好みのストレートどまんなかじゃないですか。

聴いてみたら、こりゃすごい。新世代のニュー・アフロビアン・ミュージックですよね。カーボ・ヴェルデ / ポルトガルならではの哀愁味がそこはかとなく漂っているのもいいし、リズムのつくりかたもすばらしいです。大好きになっちゃいました。
by 戸嶋 久 (2020-03-26 15:48) 

bunboni

書きそびれましたが、デビュー作“EVA” の1曲目はサラ・タヴァレスがプロデュース、アレンジを務めていて、ギター、パーカッション、コーラスでも参加しています。
by bunboni (2020-03-26 22:02) 

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