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捕鯨航海を歌う アイリス・ケネディ [ブリテン諸島]

Éilís Kennedy  SO ENDS THIS DAY.jpg

アイルランド、西ケリー、ディングル半島出身のフォーク・シンガー、
アイリス・ケネディの4年ぶりの新作。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-04-25
アイリスは、マサチューセッツのニュー・ベッドフォード捕鯨博物館を訪れて、
19世紀の捕鯨航海の航海日誌や手紙を読みこみ、
そこから着想を得て作曲したという5曲が収録されています。

アイリスが01年のデビュー作“TIME TO SAIL” から、
一貫して海に生きる人々の歌を歌ってきたのは、
両親の仕事を継承したものだということを、今回初めて知りました。
船乗りにまつわる唄といってもシー・シャンティではないんですね。
今作では、1800年代の捕鯨の時代にさかのぼり、
漁師たちや陸に残された女房たちの悲喜を歌にしています。

捕鯨船員の歌のほかにも、投獄されたフェニアンの救出劇や北極圏の探検家たちなど、
海の冒険物語を丹念に掘り起こして歌うアイリスの歌声は、
感情を押し殺すようなシンギングで通していて、凛としたすがすがしさに胸を打たれます。
鯨を捕るためにバフィンズ湾へと船出した、フランクリンと勇敢な乗組員の物語
‘Lord Franklin’ をタイトルを変えて歌った‘Franklin's Crew’ は、その白眉でしょう。
ラストの無伴奏で歌った‘Row On, Row On’ の静謐な歌いぶりも、胸にしみます。

本作のプロデューサーに、ジェリー・オバーンを起用したのは大正解でしたね。
多くの歌手の伴奏を務めてきた名ギタリストのジェリー・オバーンですけれど、
6弦・12弦・テナー・ギター、ティプレなど各種弦楽器をオーヴァーダブした
繊細で透明感のあるサウンドは、アイリスの音楽性とベスト・マッチングです。

Éilís Kennedy "SO ENDS THIS DAY" Éilís Kennedy no number (2020)
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