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コンゴ・ブラザヴィルのレジェンド フランクリン・ブカカ [中部アフリカ]

Franklin Boukaka.jpg

72年2月に発生したクーデター未遂事件への関与から31歳で殺害された、
コンゴ共和国(ブラザヴィル)音楽のパイオニア、フランクリン・ブカカ。
年月を経てもフランクリン・ブカカが後進にリスペクトされ続けていることを
実感したのは、99年に結成されたヒップ・ホップ・グループ、ビソ・ナ・ビソが
デビュー作 “RACINES...” のオープニングに、フランクリン・ブカカの
‘Ata Ozali’ をアルバムのイントロとして取り上げた時でした。

Bisso Na Bisso  RACINES....jpg

若きラッパーたちが、先人たちへのリスペクトを掲げたアルバムの冒頭に、
ブカカの歌をフィーチャリングしたのには、グッときましたねえ。
それでさえ、もう四半世紀近くも前のことで、今は昔なんですけれども。
そのフランクリン・ブカカのアンソロジーを、フランスのフレモオ・エ・アソシエが
3枚のディスクにまとめて出してくれました。

40年10月10日、フランス領コンゴの首都ブラザヴィルで音楽家の両親のもとに生まれた
フランクリン・ブカカは、コンゴ川を挟んだベルギー領コンゴの首都、
レオポルドヴィルと行き来しながら、ネグロ・バンド、アフリカン・ジャズ、
ヴォックス・アフリカといった数多くの名バンドで活動してきた歌手です。
特に、ジョセフ・カバセレ(グラン・カレ)のアフリカン・ジャズの主要メンバーが
ベルギー領コンゴ独立に関する円卓会議の文化使節としてブリュッセルに旅立ったとき、
残留組としてレオポルドヴィルに残されたブカカやロシュローなどの
若手メンバーたちがジャズ・アフリカンを結成し、
のちにヴォックス・アフリカへと発展したことは、よく知られた話。

ところが、ブカカはヴォックス・アフリカが旗揚げして
まもなくブラザヴィルへ帰郷してしまい、
昔の仲間が所属していたサークル・ジャズに参加します。今回のアンソロジーでは、
そのサークル・ジャズ時代の60年代録音が、まとめて29曲も聴けます。
サークル・ジャズの録音は、これまでパテが復刻したLPが1枚あったくらいで、
ぼくも聴くのは今回が初めて。植民地時代が終わり、二つのコンゴは統合されるべきだと
歌ったブカカの代表曲 ‘Pont Sur Le Congo’ も、ようやく聞くことができました。

ギネアの名門楽団ケレティギ・エ・セ・タンブリニとの5曲が収録されたのも画期的。
ギネアのシリフォンから、ブカカがケレティギ・エ・セ・タンブリニと共演した
シングルを出していたことは知っていましたけれど、
これまたじっさいの音を聴くのは初めてです。
ブカカがタンブリニと共演することになったのは、70年にギネア・ツアーを行ったからで、
そのときにケレティギ・エ・セ・タンブリニがバックを務めたんですね。

Franklin Boukaka A PARIS.jpg

冒頭のビソ・ナ・ビソがエディットした ‘Ata Ozali’ を収録した
71年のアルバム “A PARIS” は、ディスク1冒頭に全曲入っています。
このアルバムをアレンジしたマヌ・ディバンゴが、
人生における素晴らしい思い出のひとつとして挙げている名作です。
同じく71年にコンゴにやって来たキューバのオルケスタ・アラゴンがブカカと親交を結び、
のちに本作収録の ‘Mwanga’ をカヴァーしています。

Franklin Boukaka  SES SANZAS ET SON ORCHESTRE CONGOLAIS.jpg

そしてぼくがブカカのキャリアでもっとも重要とみなしている、
ジル・サラ・プロデュースの67年録音は、ディスク2の冒頭にこれまた全曲収録。
『ポップ・アフリカ800』に載せたブカカの最高傑作です。
2台のサンザ、ギター、ベース、サックス、マラカス、コンガのグループを率いて、
ビギン、チャチャチャ、パチャンガ、ルンバ・コンゴレーズを歌っていて、
アフリカとラテンとカリブが混淆した最高の演唱がここにあります。

ブカカの植民地主義者へ抵抗した政治姿勢は、
コンゴではボブ・マーリーやフェラ・クティと匹敵するものとして捉えられていることを、
今回の解説で強く認識させられました。暗殺のいきさつが不明なままであることも、
殉教者として神格化されたことにつながったのですね。

Franklin Boukaka "L’IMMORTEL" Frémeaux & Associés FA5838
Bisso Na Bisso "RACINES..." V2 VVR1005632 (1999)
Franklin Boukaka "A PARIS" Sonafric CD50048 (1971)
Franklin Boukaka "SES SANZAS ET SON ORCHESTRE CONGOLAIS" Bolibana BIP333 (1967)
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