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都市生活者の孤独 ラリー・ハード [北アメリカ]

On A Corner Called Jazz.jpg

クラブ通いとは無縁なもので、それほど熱心にハウスは聴いていませんが、
リスニング・ルーム向きのラリー・ハードは、ずっとフォローしてきたお気に入りのアーティストでした。
出会いは、大ヒットとなった92年のミスター・フィンガーズ名義の“INTRODUCTION”。
静謐で内省的なサウンドもさることながら、マスに呼びかけるのではなく、
聞き手のひとりひとりにメッセージを発しようとしているような、
個対個のコミュニケーションを求める姿勢に、とても心惹かれました。

それは、インターネット時代の現代人の孤独を予言した音楽でもあったように思います。
孤独な者どうしが、相手とコミュニケートしたいと切実に願いながらも、
けっして誰とも真に結びつくことはできないという、深い絶望を知ってしまった者の音楽。
それは、当時の時代の気分を抱えた音楽でもありました。

都市生活者の孤独にそっと寄り添ってくれるような音楽。
孤独を癒してはくれないものの、寄り添ってくれるだけで、気持ちを落ち着かせることのできる、
カウンセリングにも似た効果をもった音楽でした。

ラリー・ハードのアルバムとしては01年の“LOVE'S ARRIVAL”が一番好きですけれど、
このアルバムを聴きたくなるのは、気分が落ち込んだ時と決まっていて、
精神状態がかなり悪い時にしか、手が伸びることはありません。
最近ごぶさたなのは、メンタルが健康な証拠といえそうですが、
そんな気分とは関係なく楽しめるラリー・ハードのCDも、なかにはあります。

それが“INTRODUCTION”の1曲、“On A Corner Called Jazz”のシングルCD。
ミックス違いでの7ヴァージョンが入っていて、ミックスごとまるで別の曲のように変身します。
ラリー・ハードにしては内省さを感じさせない、明るくファンキーな曲調なので、
その意味でも気軽に楽しめる一枚です。
ヘッド・ハンターズ時代のポール・ジャクソンを思わせるグルーヴィなベースと、
ミュート・トランペットをフィーチャーしたジェイムズ・マクミラン・ミックスは、
いま聴いてもゾクゾクしますね。

Mr Fingers "ON A CORNER CALLED JAZZ" MCA MCSTD1668 (1992)
コメント(2) 

コメント 2

繁盛亭アルバイテン

ラリー・ハード!!
僕は初期シカゴ・ハウスの単調だけど美しい世界に永らく浸りすぎて、社会的な道を誤ってしまったような人間です(笑)。
この人の楽曲が、朝方の、人も疎らなフロアに鳴り響き、何度となく涙をこらえきれなくなりました。よりアフリカ志向の強いロン・トレントなんかも、本当に美しい音楽ですね。今晩はシカゴハウスに溺れようと思います。
良い、きっかけをありがとうございます。


by 繁盛亭アルバイテン (2010-02-15 13:36) 

bunboni

くれぐれも聴き直して、社会的な道を誤ることのないよう、
お祈り申し上げます(笑)
by bunboni (2010-02-15 20:45) 

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