春はすぐそこに エミリー・スミス [ブリテン諸島]
犬の散歩がてら、古いおうちの庭先に咲いていた紅梅に、足が止まりました。
生け垣の寒椿も、散り際で踏ん張っているものあり、
踏ん張りきれず、赤い花びらを地面に散らすものありで、
寒い毎日のなかにも、春が確実に近付いてることを感じさせます。
そんな春の訪れを予感させるアルバムが、スコットランドから届きました。
ダンフィリーシュ州出身の女性フォーク・シンガー、エミリー・スミスの新作です。
ぼくがエミリーを知ったのは、08年の前作“TOO LONG AWAY”。
伝承曲をコンテンポラリーに聞かせるサウンド・プロデュースの手腕に、感じ入ったものでした。
4作目にあたる新作はまた趣向を変えた仕上がりとなっていて、すっかりまいってしまいました。
トラッド中心の前作が、ケルティック・ポップな感触を持ったサウンドだったのに対し、
自作曲中心の本作では、むしろトラッド寄りなサウンドに仕上げているんですね。
プロデュースは、エミリーのだんなさんでギタリストのジェイミー・マクレナン。
フルートとホイッスルはダブリン、フィドルはナッシュビル、ブズーキはオーストラリア、
ドラムスはアイスランド系スコットランドと、世界各地の名手たちがエミリーを守り立てます。
そしてなによりもぼくがまいったのは、エミリーの歯切れの良いディクション。
ジュリー・ファウリスもそうですけど、
スコットランドの女性シンガーはディクションのいい人が多いですね。
柔らかさの中にも芯のあるエミリーのピュアなシンギングが生きるのも、そのディクションの良さゆえ。
エミリーが「スコットランドのジョニ・ミッチェル」と称されるのも、ナットクです。
その声を聴いているだけで春がやってくるような、陽だまりを感じさせる歌に、心が洗われます。
06年に来日し、東京で一夜のみの公演を行ったそうですが、ぜひ再来日してもらいたいものです。
Emily Smith "TRAIVELLER’S JOY" White Fall WFRC004 (2011)
2011-02-18 06:39
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