肉食サンバ・ファンカーのご帰還 セウ・ジョルジ [ブラジル]
十年も待ったぞ、セウ!
よ~うやっと、セウ・ジョルジが本領を発揮したアルバムを作ってくれました。
十年も待たせるなんて、ほんとにひどいやつです。
01年のソロ・デビュー以来、こんなんじゃ物足んないとぼやき続けて、
最近では新作の知らせを聞いても、もうどうでもいいわの気分になっていたのが正直なところ。
十年も期待を裏切られ続ければ、フツーならとっくに見限ってるのに、
ひょっとしたら今度こそ……と思い続けてきたのは、
セウ・ジョルジがフロントを務めたファロファ・カリオカでのタフな芸人ファンカーぶりが、
どーしても忘れられなかったからです。
ファロファ・カリオカのグルーヴィーでバンピンなリズムにのった、
不良の地金を隠しようもないやさぐれヴォーカルは、まぎれもないセウの天賦の才能でした。
ところがソロとなるや、アーティスティックな弾き語りなんぞ始めたり、
んなもん、サンパウロのインテリがやってりゃいいんで、
ファベーラ育ちのアンタのやるこっちゃない!
自分の持ち味を生かそうとしないセウが、じれったくてしょうがないというより、
売れるようになった芸人が、スカした性格俳優をめざし始めたみたいなイヤミを感じたもんです。
ファロファ・カリオカの良さは、ガブリエル・モウラの方が継承していたとはいえ、
セウの苦みばしったラフなヴォーカルが聴けないのは、やはりさみしいものがあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-01-26
しかし、今度はジャケからして、これまでと違った予感がありましたよ。
真っ赤に染め上げられた背景に、ふてぶてしい面構えのセウの顔がど~んと鎮座。
タイトルも『シュラスコのための音楽 その1』ときたもんだ。
肉食野郎のご帰還を思わすこのジャケで、相変わらずスカしたポーズをきめてるようだったら、
今度こそ承知しないぞと思いましたけど、期待どおり、
下町のチンピラ気分を丸出しにした、サンバ・ファンクが横溢。
嬉しかったのは、ロジェーがデビュー作で取り上げたガブリエル・モウラ作の名曲
“Japonesa” がカヴァーされていたこと。
やきそば!鉄火巻!蟹!醤油!のリフレインも楽しい傑作曲で、
ロジェーのアルバムはぜんぜん知られていないから、本作で評判となること必至でしょう。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
アルバムのラストには、ダンスで火照った身体をチル・アウトするための、
きらめくストリングスをフィーチャーした、メロウ・トラックが据えられています。
バイリ(ダンスホール)での喧噪が、終わりを迎えたことを知らせるようで、
こういうアルバムの終わり方も、たまんないっすねえ。
なけなしの金をはたいて週末のバイリで踊り、女を口説き、酒を呑み、また日常に帰って行く。
貧しくも野心を秘めたゲットーの若者たちの気分が、そこには濃厚に漂っています。
“VOL.2” も待ってるぜ、セウ!
Seu Jorge "MUSICAS PARA CHURRASCO VOL.1" Cafuné 60252775092 (2011)
2011-09-10 00:00
コメント(2)
うわ~。かっこよさそう!!これは早く聴いてみたいです~~!!
by yucca (2011-09-10 01:29)
日本女子 Japonesa 必聴です!
by bunboni (2011-09-10 07:16)