ハリージよりシャバービー ホダ・サアド [中東・マグレブ]
誰も彼もがハリージ仕様となってしまったアラビアン・ポップス、はやヘキエキとしてきました。
しばらくアラビアン・ポップスの流通が途絶えていたので、ノドの乾きを癒すが如く、
一時期浴びるように聴きましたけど、明らかにハリージは供給過剰。
このままでいくと、ハリージ・ブームがコケるのも案外早いかも。
レッガーダとかスタイフィもそうでしたけど、エネルギッシュなリズムの衝撃に最初は飛びつくけど、
何度も聴くうちに新味が薄れ、10回くらい聴いた頃にはもう飽きてしまうんですよ。
もともとがイキオイ勝負で深みのあるような音楽じゃないから、
新鮮さが薄れりゃそれまでってことですかね。
ブーガルーみたく、刹那的な音楽ブームがシーンをかき回すのも、
ポピュラー音楽の醍醐味ではありますけれどねえ。
というわけで、非ハリージのアラビアン・ポップスを求めて見つけたのが、
モロッコ出身の女性シンガー・ソングライター、ホダ・サアドのセカンド。
ハリージはまったく出てこない、王道のシャバービー・サウンドです。
このせつな系のアンニュイなムードは、ハリージじゃ味わえませんよね。
粋な女っぷりを感じさせるホダの歌声がいいじゃないですか。
男の前で涙を見せない気丈な女っていう風情で、
そんな女がふと見せるやるせない表情に、グッときますよ。
しつこすぎないコブシ使いも、なかなかチャーミングです。
シャバービーのシンガーで、ソングライターというのは珍しいと思いますが、
キャッチーな曲も書けるし、楽曲にもメリハリがあって、才能を感じさせる人ですね。
アルバム終盤で女性ラッパーが登場し、英語でラップしているのにはちょっとドッキリ。
レコーディングはエジプトとロンドン、ミックスもロンドンと、
アルバム制作に予算もかかっていそうで、ロターナひさびさのシャバービーの力作です。
Hoda Saad "TAYR EL HOB" Rotana CDROT1795 (2011)
2012-06-30 00:00
コメント(2)
> ハリージ・ブームがコケるのも案外早いかも
わたしは、ハリージは4年ほど前から聴いていましたが、それはシャバービーがもう飽きてきたから、ハリージを好んで聴いてきて、そろそろ湾岸諸国出身の歌手も注目されたらいいのにと期待していた矢先・・・
今度は湾岸諸国出身ではない歌手までもが次々にハリージ・アルバムを出して、それがブームになってしまって、何か複雑です。結局、湾岸諸国出身の歌手はまた無視されてるわけだし。
でも、Asma Lemnawar と Myriam Fares のハリージ・アルバムは良かったですけどね。
> もともとがイキオイ勝負で
> 新鮮さが薄れりゃそれまで
まるで一発屋芸人みたいですね。(笑)
シャバービーはつまらなくなった、とサラーム氏が著書で書いておられましたよ。確かに・・・安直なエレクトロ化が進んでアラブらしい音が薄れてきて、エジプトの葉巻の新作は聞くに堪えなかったです。ポップスの世界的なエレクトロ化は一昔前の世界的なR&B化よりも酷くなったと思うのはわたしだけでしょうか?
それから、シャバービーで英語を入れるのは、歌唱力の無いお笑い路線の人しか聴いたことがなかったです。(笑)
シャバービーの力作、ほかのシャバービー歌手とどう違うのか、わたしも聴いてみたいと思います。
これからのアラブ圏の流行音楽は、モロッコが中心になるのでしょうか。Hoda Saad のほか、Asma Lemnawar も Mona Amarsha も Fnaire もモロッコ出身でしたよね。
by 馨 (2012-06-30 15:28)
4年も前からハリージを聴いておられたとは失礼しました。
そんな前からハリージのサウンドがあったとは知りませんでした。
ぼくも安直なシャバービーのエレクトロ・サウンドにウンザリしているので、
それでハリージへというのは、よくわかります。
ぼくはハリージ以前の、軽快でパーカッシヴな湾岸サウンドが好きで、
90年代はクウェートのラバーブやファトゥーマ、
カタールのアリ・アブドゥル・サッタールあたりをずいぶん愛聴しました。
「アラブの春」でアラブ歌謡は全滅して、
ロック/オルタナティヴの時代になってしまうのかと愕然としていたので、
ぼく好みの、薄口・アンニュイなせつない系の
歌謡(シャバービー)が生き残っていたのに、
とりあえずホッとしたというわけなんですが。
by bunboni (2012-06-30 22:26)