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ヒップ・ホップと結びついた伝統チャント「タス」 ゴー=ビー・システム [西アフリカ]

Gokh-Bi System  Voice Of The Jeli.jpg

セネガルのヒップ・ホップ・グループ、ゴー=ビー・システムの新曲“Rappu Tassu” をきっかけに、
ンバラのシンガーたちの間で広まっている、
ラップとも、トースティングとも、リルティングとも、アニマシオンとも違う、
ユニークな歌のスタイルの正体を、ようやく突き止めることができました。

パペ・チョペットとサラム・ジャロの新作でこのスタイルに初めて接して、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-06-18
なんだこりゃとビックリしたんですが、実はこれ、
セレール人グリオが宗教儀式で唱える伝統チャントのタスだったんですね。
ウォロフ人の間では女性グリオが命名式などの場で、
タスをプレイズ・ポエトリーとして吟じるようです。

パペ・チョペットは、お母さんが歌手、お父さんが太鼓奏者というグリオの家系の出身。
だからこそ、しっかりとタスが身についていたわけで、
タスを現代的に応用してみせたのが、あのアルバムだったのでした。
サバール・ダンスのブレイクにあわせ、速射砲のようなタスを歌っていたサラム・ジャロも、
すでにレンゾ・ジャモノ在籍時代のアルバムで、
タスを駆使して歌っていたことを、遅まきながら気付きました。

Lemzo Diamono.jpg

ひさしぶりにレンゾ・ジャモノの“MARIMBALAX” を聴き直していたら、
全編タスのスタイルで歌っている“Atterrissage Force” にびっくり。
サラム・ジャロがヴォーカルを務めた94年録音の曲で、
すでにこの頃から、サラム・ジャロはタスを使っていたんですね、気付かなかったなあ。
このCDでタスが出てくるのは、サラム・ジャロがリード・ヴォーカルを務めたこの1曲だけで、
当時はラップの影響ぐらいにしか思わなかったので、
このユニークなスタイルに気付くことができませんでした。

現在ではこのタスがヒップ・ホップにも応用されるようになって、
ゴー=ビー・システムの“Rappu Tassu” がまさに恰好のサンプルとなっています。
まだこの曲はCDリリースされていませんが、
今のところの彼らの最新作である08年作の“VOICE OF THE JELI” を聴くと、
大型バンジョーのようなジョラ人の伝統楽器エコンティンをフィーチャーするなど、
セネガルのグリオ(ジェリ)のサウンドを大幅に取り入れたアルバムになっています。

ゴー=ビー・システムは、メロディ・ラインのはっきりした歌ものヒップ・ホップで、
ドラムスやギターの生演奏によるカラフルなポップ・サウンドが持ち味。
コアなヒップ・ホップ・ファンより、一般向けに広くアピールできるグループじゃないでしょうか。
エコンティンを弾き語る短いインタールードを挟んだり、
サバールのパーカッション・アンサンブルを生かしたトラックもあれば、
スティールドラムとタマとバラフォンをフィーチャーしたトロピカル・ポップなナンバーなど、
ナンパな軽妙さもあって、親しみがわきます。

Gokh-Bi System "VOICE OF THE JELI" AMU Music no number (2008)
Lemzo Diamono "MARIMBALAX" Stern's STCD1076 (1997)
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