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名前のないラヴ・ソング レー・クエン [東南アジア]

Lệ Quyên  VÙNG TÓC NHỚ.jpg

はぁ~、タマシイが抜けます。
ヴェトナム最高のバラディアー、絶好調が続いていますね。
昨年11月7日にリリースされた、レー・クエンの新作。

新作を聴くたび、毎度しみじみ思うことですけれど、
ぼくはこの人の深みのある声、哀しみを押し殺した歌いぶりが、たまらなく好き。
第一声からギュッと胸を掴まれてしまうのは、今回も同じでした。
どちらかというと、レー・クエンは万人ウケする女性歌手ではなく、
好みの分かれるタイプの歌手だとは思いますが、
よほどぼくとは相性がいいんでしょうね。

制作に4か月を要したというこの新作は、
戦前の南ヴェトナム時代に活躍した作曲家、ヴー・タイン・アンのソングブック。
ここ最近レー・クエンは、ヴェトナムの懐メロを取り上げる
ノスタルジア路線のアルバム制作が続いていますけれど、
今回もそれに沿った企画といえます。

43年生まれのヴー・タイン・アンは、チン・コン・ソンとも並ぶ、
ヴェトナム戦争前に国民的に愛された作曲家。
現在はアメリカ、オレゴンでカトリック教会の助祭を務めながら、
賛美歌を作曲しているといいます。
まだ高校生だった59年にはじめて作曲し、
のちに「2番」「6番」「8番」と呼ばれる名曲を書き残しました。
65年に詩人のグエン・ディン・トアンと出会い、本格的な作曲活動を始めています。

ヴー・タイン・アンの作品には名前がなく、
番号で呼ばれたり、歌詞の一部を取って呼ばれているんですね。
そんなヴー・タイン・アンの、タイトルのないラヴ・ソング10編を、
レーは情感を込め、丁寧に歌っています。

燭台のゆらめく炎を見つめるようなレーの歌いぶりは、まさに円熟の極み。
深い情念を心の奥底に隠しつつ、
ロマンティックなメロディに、ほろりと女ごころが溶け出します。
イヤホンでレーの歌声を聴いていると、まるで熱い吐息が耳にかかるよう。
語尾のヴィブラートに、恍惚とします。

現在のヴェトナムでトップ・クラスともいえる、
オーケストレーションの伴奏とアレンジも、パーフェクトな仕上がり。
CDパッケージもいつものとおり手の込んだもので、
ダイカットで切り抜かれたデザインなど、凝りまくってますね。
由緒正しい歴史あるホテルかどこかで撮影されたような写真の数々、
美しいドレスをまとったレーが、しどけないポーズで写っておりますよ。
タメ息をもらすほか、何ができましょうか。

Lệ Quyên "VÙNG TÓC NHỚ" Phuong Nam Phim no number (2014)
コメント(15) 

コメント 15

としま

これ、ようやくエル・スールに入荷したので、聴きましたが、最高だとしかいいようがありませんね。たまりません。

2015年の新作も入荷したらしいのですが、一瞬で売切れてしまったらしく、そっちはまだ買えてません。
by としま (2015-04-26 10:50) 

bunboni

気に入っていただけて、なによりです。レー・クエン、絶好調ですね。
今年の新作、もうエル・スールに入ったんですか。
ぼくは今ヴェトナムから届くのを待っているところです。楽しみだな。
by bunboni (2015-04-26 11:43) 

としま

レー・クエン、2015年の新作(2014年のこれもですが)、オフィシャルじゃないんでしょうが、アルバム丸ごとYouTubeにあがっているので、目下それを聴いて楽しんでいます。
by としま (2015-04-26 12:30) 

bunboni

先に聴いてしまうと楽しみがなくなるので、届くのを待ってます(笑)
by bunboni (2015-04-26 12:43) 

としま

いやあ、今日はこればかり五回ほど聴きましたが、何度聴いても、ウットリと聴惚れてしまいます。僕の約50年の音楽リスナー人生で、これ以上の官能美に満ちた音楽アルバムには、出逢っていない気がします。

もはや今年のベスト1はこれで決まりです。
by としま (2015-04-26 19:27) 

イワタニ

としまさん。まだ早いですよ。リン・リンちゃんを聴くまでわ。
by イワタニ (2015-04-26 20:20) 

bunboni

あ、いや、そんなことはないと思いますよ。
両者を比べるのは、無理というものでしょう。
by bunboni (2015-04-26 20:45) 

としま

リン・リンも聴いてみましょう。もっとも僕の場合、ヴェトナムからCDを直接買うルートは持っていないので、もっぱらエル・スール頼みですけども。いつ頃入荷するかなあ?
by としま (2015-04-26 21:12) 

イワタニ

偉そうな事言ってますが、まだこのレー・クエンのCDは聴いてないのです。只今、エルスールに取り置き中です。
50年の音楽リスナーのとしまさんが大絶賛されるぐらいですから完璧なんでしょうね。楽しみです。新作もエルスールに催促しておきました。
by イワタニ (2015-04-26 22:40) 

としま

僕は普段は、アフリカ諸国、アラブ圏、トルコなどを中心に聴いていて、だからアジアは西アジア(中近東)は多少聴いてはいるものの、東アジアはサッパリ疎いんですけどね。ヴェトナムも、まだまだこれから勉強です。
by としま (2015-04-27 09:34) 

としま

イワタニさん

「完璧な」音楽というものなど、おそらくこの世に存在しません。bunboniさんや僕が大絶賛の、このリー・クエンのアルバムにしても、彼女は好みが分れる歌手でしょうから、好みじゃないと切って捨てる人もいるでしょう。ポピュラー音楽は、所詮、嗜好品です。「絶対的」な評価など有り得ないのです。
by としま (2015-04-27 15:28) 

イワタニ

としまさん

「完璧な」という言い方がまずかったですね。
好みが分かれる歌手ですか。私は彼女のアルバムを6,7枚ほど聴きましたが、私の見方はbunboniさんとは逆で、彼女の方が万人ウケするタイプだと見てます。ポピュラー音楽は庶民が楽しむための音楽です。彼女以外にも何人かの歌い手さんを聴きましたが、私にはまるで貴族階級に聴かせるための音楽にしか聴こえませんでした。もちろんbunboniさん
が聴いている量からしたら、私など全然ダメでしょうが、レー・クエンは何となくヴェトナムでは異色の歌手に思えてきます。異色だからこそ、庶民が喜ぶのではないかと・・。
庶民は、立派なものよりも、むしろ変なものに関心を示すものです。万人ウケするものは変なタイプなのです。その証拠に彼女のCDは、エル・スールで、アッという間に再入荷待ちですよ。
ある種オーソドックスなものほど好き嫌いがでて、異色なものほど万人ウケすると言うのが私の考えです。(音楽に関してだけですが)
by イワタニ (2015-04-27 23:57) 

としま

レー・クエンのこの2014年作、たった二日でエル・スールで売切れちゃいましたね。次はいつ入荷するのやら。この傑作が、一日も早く多くの人のもとに届くように願うばかりです。

さて、レー・クエンは、ややハスキー・ヴォイスで、低音で重みの効いた歌い方をする歌手ですから、間違いなく好みじゃない人はいるはずですよ。

彼女に限らず、そもそもポピュラー音楽の世界で、「万人ウケ」というものが、果してあり得るのかという疑問を、僕は持っています。そういう人は存在しない気はします。どんなに素晴しい音楽でも、好みや相性の問題があって、必ず好きじゃない・聴かないという人は居るというのが、僕の経験から得られた実感です。

ポピュラー音楽は、評価より好みが優先する世界なのです。
by としま (2015-04-28 09:56) 

イワタニ

万人ウケする音楽なんてありませんね。
ただ、ポピュラー音楽は万人ウケを目指す姿勢が大事だと思います。それがかなわないから好みが出てくるのでしょう。
それがかなわないから嗜好品になるのでしょう。
私はミュージシャンより歌手が好きです。歌手はいつも万人にウケたいと思って音楽に向き合っています。
そんな姿勢が私は好きです。
by イワタニ (2015-04-28 23:30) 

としま

いつまでもこのエントリーにこだわって、bunboniさんに申しわけないんですが、このレー・クエンの2014年作、なにかによく似てると感じながら、それがなんなのかしばらく分らなかったんですが、さっき聴いててハッキリと分りました。バート・バカラックです!まるでバート・バカラックそっくりです。僕はバカラックが大好きなんですよね。
by としま (2015-04-29 15:59) 

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