ヴェテラン・ハイライフ・シンガーの復活 パット・トーマス [西アフリカ]
へぇー、今度はガーナのパット・トーマスに目を付けたのかあ。
イギリスのレーベル、ストラットがアフリカのヴェテラン・ミュージシャンたちにスポットをあて、
CD制作をしているのはご存知のとおり。
ガーナのエボ・テイラー、ナイジェリアのオーランド・ジュリウス、
エチオピアのムラトゥ・アスタトゥケという人選は、
アフリカン・ポップスをよく知り、深く愛するからこそなせる業で、好感がもてます。
今回ストラットが手がけたパット・トーマスも、エボ・テイラーと並ぶハイライフの大ヴェテラン。
51年、かつてのアシャンティ王国の古都クマシに生まれたパットは、
60年代ギター・ハイライフの立役者となったクワベナ・オニイナの甥っ子でもあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-10-22
69年に名門ダンス・ハイライフ・バンドのブロードウェイ・ダンス・バンドへ参加し、
ウフルー・ダンス・バンドに改名した後のイギリス・ツアーを経験、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-18
73年に自己のバンド、スウィート・ビーンズを結成して、ソロ・シンガーとして独立しました。
「ゴールデン・ヴォイス」の異名を取り、A・B・クレンジル、ジュウェル・アッカー、
パーパ・ヤンクソンとともに、ビッグ・フォーと呼ばれる人気シンガーとなった人です。
とはいえ、パット・トーマスを知る人は、相当熱心なアフリカ音楽ファンぐらいなもの。
70年代のハイライフはガーナ盤LPしかなく、
80年代はガーナ経済危機のため、ほとんどレコードは作られませんでした。
90年代以降にいたっては、在外ガーナ人社会のレーベルから、
ほそぼそとCDがリリースされるだけでしたからねえ。
欧米にディストリビュートされる作品はわずかばかりしかなかったので、
パットばかりでなく、この時代のハイライフの名シンガーが、
海外に紹介されることは、皆無といっていい状態でした。
ぼくもパットを聴くのは、03年の“ASANTE KOTOKO” 以来12年ぶり。
一聴して驚いたのは、声が若々しいこと。いやー、ぜんぜん年とってないじゃない。
思わず、昔愛聴した95年作の“AGONA BY BUS LIVE” も聴いてみたんですけど、
歌声がまったく変わってません。どゆこと? アンチ・エイジングですか!?
ストラットの制作でひとつ心配なのは、なんでもかんでもアフロビートにしてしまうところ。
エボ・テイラーのストラット2作目も、
無理にアフロビート化したサウンドがハナにつきましたが、
本作はパット本来のハイライフの味を生かしていて、これならオッケー。
アフロビート・マスターのトニー・アレンがゲストで3曲叩いていますが、
ラスト1曲のみアフロビートですが、他はハイライフに忠実なドラミングをしています。
本作のライナーによると、パットはエボ・テイラーとともに、
78年にトニー・アレンとレコーディングしていたんだそうです。
本作は全体に洗練された仕上がりで、
かつての泥臭い味わいは、洗い流されてしまった感がありますが、
ファンキー・ハイライフ以降のハイライフを聞きなれない人には、
これくらいの方が聴きやすいかな。
ホーン・セクションもいかにも白人プレイヤーらしく、ちょっときれいに揃いすぎ。
もっと不揃いな粗い音で、ぶひゃぶひゃブロウしてほしかったんですが、
まずは名刺代わりの一作として、ヴェテラン・シンガー、
パット・トーマスを知らぬ海外ファン向けのアルバム、上々の出来でしょう。
Pat Thomas & Kwashibu Area Band "PAT THOMAS & KWASHIBU AREA BAND" Strut STRUT126CD (2015)
Pat Thomas "ASANTE KOTOKO" Tropic Vibe Productions no number (2003)
Pat Thomas "AGONA BY BUS LIVE" PatCo CDPP1002 (1995)
2015-06-21 00:00
コメント(2)
never seen this LP Pat Thomas AGONA BY BUS LP, 1995 not such a good year but i was wondering if you think it is any good
オランダからのご挨拶
:)
by coco (2015-09-02 19:18)
オランダからようこそ。
AGORA BY BUS is CD, not LP. I think it is Pat Thomas' best CD.
by bunboni (2015-09-02 21:56)