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お悔やみ マフムード・ギネア [中東・マグレブ]

Mahmoud Guinia  Tichkaphone.jpg

グナーワのゴッドファーザーことマフムード・ギネアが8月2日、天に召されました。
享年64なんですね。もっと年だとばかり思っていたので、まだそんな若さとは意外でした。
祖父の代にエッサウィラへやってきたグナーワ一族のもとに生まれ、12歳から演奏を始め、
長年第一線で活躍し続けてきた、<マアレム>の称号を戴くグナーワ名人ですからねえ。
ということは、ぼくがマフムード・ギネアを知った90年代の初めは、
まだ40代になったばかりだったのかあ。

そのマフムード・ギネア初体験盤が、
モロッコのティッカフォンからリリースされていたカセットを、
フランスのソノディスクが92年にCD化したアルバムです。
グナーワに興味を持ち始めた90年代の初め、
ハッサン・ハクムーンがロック化を試みていた一方で、
現地直送の伝統グナーワが聞ける貴重な一作として、愛聴したものです。
拙著『ポップ・アフリカ800』でグナーワの項を新設するにあたり、
一発目に紹介すべきアルバムはこれと、迷わずに選んだものでした。

マフムード・ギネアは、80~90年代に
ティッカフォンへ相当数のカセットを録音していますが、
それ以前の70年代には、フィクリフォンというレコード会社から
LPを出していたとのこと。
モロッコ盤LPにお目にかかったことはありませんが、
ティッカフォンのカセットは、いまでもモロッコで売られているようですね。

世界的にマフムード・ギネアが知れ渡るようになったのは、
ビル・ラズウェルのプロデュースで、
ファラオ・サンダースと共演した94年作がきっかけでした。
そういえば、01年に広島で開催された「世界聖なる音楽祭」で来日しているんですよねえ。
観たかったなあ。写真家の石田昌隆さんは、07年にエッサウィラの城砦の外にある
マフムード・ギネアの自宅で、グナーワが催される儀式リラを体験されているんだそうです。
う~ん、うらやましい。

Maâlem Gania Mahmoud  Sonya Disque.jpg   Mahmoud Guinia  VOL.4.jpg

ぼくはといえば、モロッコへよく旅されていたサラーム海上さんが持ち帰った
モロッコ盤CDを聴いては、エッサウィラを夢見るばかりなのでありました(泣)。
そうだ、サラーム海上さんがモロッコから買い付けてきたCDには、
マフムード・ギネアの二人の弟モクタールとアブドゥラーのアルバムもありましたね。
二人ともマアレムだけあって、
マフムードにひけをとらぬディープなグナーワを聞かせてくれます。

Maâlem Mokhtar Genia  LILA GNAOUI.jpg   Maâlem Abdllah Genia  LIVE.jpg

マフムード・ギネアのグナーワにバンバラ語の歌があるように、
マリから奴隷としてやって来たマフムードの祖父は、バンバラ人だったようです。
マアレムである父ブブカル・ギネア (1927–2000)の2番目の息子として生まれた
マフムード自身も、息子二人と娘一人をもうけていて、
いずれ二人の息子たちも、マアレムとなることでしょう。

最後に、名前の「ギネア」という読みですけれど、「ギニア」とも「ガニア」とも呼ばれ、
英文表記でもさまざまに書かれていますけれど、
アフリカの黒人王国ギネア Ghinea から取られた名前だと、ぼくは考えたいんですよね。
真偽のほどはわからないので、勝手な推測にすぎないんですが。
グナーワの名門一族の名として、
黒人奴隷の末裔であることを誇った名前なのではないかと。
だから、西アフリカの国名Guinea と同じで、ぼくは「ギネア」と書いています。
「ギニア」と英語読みをするのを、ぼくは反対しておりますので、ハイ。

Mahmoud Guinia "MAHMOUD GUINIA" Tichkaphone TCKCD12 (1992)
Maâlem Gania Mahmoud "MAÂLEM GANIA MAHMOUD" Sonya Disque CD037/99
Mahmoud Guinia "VOL.4" Mogador Music CDMM2005
Maâlem Mokhtar Genia "LILA GNAOUI" Ihia Music no number (2007)
Maâlem Abdllah Genia "LIVE" Ihia Music no number (2007)
コメント(8) 

コメント 8

イワタニ

アッ!! これポップ・アフリカ800を読んで一番聞いてみたいと思った人だ!
ハッサム・ハクムーンより、どうしてもこっちが聞きたい。
サラーム海上さん!またモロッコに行ってきて。お願い!!
by イワタニ (2015-08-06 01:53) 

bunboni

海上さん、もうモロッコには愛想が尽きた宣言してたから、どうでしょう?
モロッコ盤はまだエル・スールにあるかも。
by bunboni (2015-08-06 06:20) 

イワタニ

エル・スールにモロッコ盤が1枚残ってました。
情報ありがとうございました。
by イワタニ (2015-08-07 08:53) 

イワタニ

これはイイ!! 予想以上にイイ!!
ハッサム・ハクムーンも好きだけど、この域に到達するにはあと10年かかる。
しばらくこればっかり聴こ!!・・・お悔やみ。
でも、同時に買ったのがインリー・シーチュムポン嬢だからなぁ。マフムード・ギネアさん怒って化けて出てくるかなぁ。・・・お悔やみ。
by イワタニ (2015-08-11 16:43) 

bunboni

マフムード・ギネアはたしかに重鎮でしたけど、
ハッサン・ハクムーンがこの域に達するのに、
あと10年かかるという見方は、ぼくとはちょっと違いますね。
ハッサンはマフムード・ギネアを超えたグナーワをクリエイトした人で、
そのスケールの大きさと深みは、マフムードの伝統グナーワとは別の地平で、マフムードを超えたとぼくは思っています。
by bunboni (2015-08-11 20:23) 

イワタニ

なるほど、別の地平かぁ。確かbunboniさんは「ユニティ」に名作誕生!と書かれてましたね。
ぼくは、伝統グナーワがどんなものかもまだしっかり分かってません。音楽的?に判断すれば、誰でもハッサンでしょう。でも、マフムードの方が僕には自然体の美学があるように感じました。伝統なんてよく分かりません。うまく書けませんが、マフムードの音楽は「作品」というイメージがありません。したがって名作を超えているのです。
ちなみにハッサムは大好きですからね。誤解のないように。
by イワタニ (2015-08-11 22:56) 

石田昌隆

2007年12月25日にマフムード・ギネアの自宅でリラを一緒に見たイギリス人、Maggie Knutsonさんが詳細なルポを書いていて僕のことにも触れていることに、今日、今ごろ、気づきました。ぼくのことにも触れていました。 http://daftnotstupid.blogspot.com/2008/01/xmas-day-2007-lila-with-maalem-mahmoud.html 
by 石田昌隆 (2021-07-04 20:00) 

bunboni

面白い! すごくイキイキとしたルポルタージュで、この人にとって、スペシャルな体験だったことがよく伝わってきますね。
by bunboni (2021-07-04 20:21) 

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