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ラズジャズ アイチャ・ミラッチ [西アジア]

Ayça Miraç  LAZJAZZ.jpg

シンと冷える冬の夜、心落ち着けて聴くことのできる女性ヴォーカルを見つけました。
中音域のふくよかな発声で、ひそやかに歌うヴォーカルに引き込まれます。
時に軽やかにハネる声が氷上のバレリーナを連想させる、静謐なジャズです。

トルコ東部黒海沿岸に暮らす少数民族ラズ人と
南コーカサスのジョージアの少数民族ミングレル人の伝統音楽をベースとしたジャズ作品。
これもまた、世界各地から登場するようになったフォーク・ジャズのひとつですね。
主役は、ドイツのゲルゼンキルヒェンで育った、トルコ系女性歌手のアイチャ・ミラッチ。
これがデビュー作というのだから、意欲的じゃないですか。

アイチャの母親のルーツがラズにあり、長年ラズ文化の保護運動をしてきたことが、
アイチャに影響を与えたようです。
一方、父親のヤサー・ミラッチはトルコの著名な詩人で、
多くのトルコの音楽家と親交を持っていたことから、
アイチャは父親の友人や兄たちに触発され、
幼いころからジャズの即興演奏に親しんでいたとのこと。
オランダでジャズを本格的に勉強したのち、奨学金を得てニュー・ヨークで
ヴォーカル・トレーニングを受け、ウェイン・ショーターにも会って励まされたそうです。

ラズの伝統音楽が持つポリフォニーを再現するために、
オープニング曲の‘E Asiye’ では、
ヴァイオリンとアイチャのヴォーカルで4度平行の和声を作る工夫をしたといいます。
レパートリーはラズとミングレルの伝統音楽ばかりでなく、
父ヤサー・ミラッチの詩にアイチャが曲を付けたオリジナルのほか、
「ウスクダラ」やビル・エヴァンスの曲も取り上げています。

ベーシストとドラマーがドイツ人で、ピアニストはブラジル人。
ベーシストとアイチャの二人でアレンジをしています。
ゲストにヴァイオリニストが参加しているほか、
「ウスクダラ」だけ、ピアニストが交代しています。
控えめなジャズ表現に奥ゆかしさを感じる、品の良いアルバムです。

Ayça Miraç "LAZJAZZ" DMC no number (2018)
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