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生きているブラック・クレオールの伝統 ジョー・ホール [北アメリカ]

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ジョー・ホールもまた、ゴリゴリの伝統派といえるクレオール・ミュージシャンです。
国会図書館にも録音を残す祖父のクレメント“キング”ネッドからアコーディオンを学び、
ボア・セック・アルドワンやマーク・サヴォイ、ノートン・シミエンといった
伝説的な先達との共演を通して、自身のザディコを深めてきた人ですね。

相棒のフォレスト・フーヴァルのフィドルとのコンビネーションも磨きがかかり、
おおらかなツー・ビートのなかで、細かく刻むリズムが
持続力のある逞しいグルーヴを巻き起こします。
シンプルなビートながら、アコーディオンとフィドルがかけあう
シンコペーションの利いたフレージングが、前に出たり後ろに下がったりしながら
演奏に奥行きを生み出していて、聴く者を飽きさせません。

ジョーのハスキーなヴォーカルも、
ルイジアナの大地が育んだ土臭さをいっぱいに感じさせるもので、
たまらない味わいがあります。もちろん歌はフランス語ですよ。
ストレート&シンプルなジョー・ホールのザディコは、
大ヴェテランのゴールドマン・ティボドーの後進ばかりでなく、
アメデ・アルドワンの遺産を受け継ぐ資格を持ったクレオール・ミュージシャンです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-05-31

Joe Hall & The Cane Cutters "AYE CHER CATIN" Fruge FR20194 (2019)
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クレオール・ケイジャンの伝統と現代 ロスト・バイユー・ランブラーズ [南アメリカ]

Lost Bayou Ramblers  RODENTS OF UNUSUAL SIZE.jpg   Lost Bayou Ramblers  KALENDA.jpg

戦前ケイジャンをそのまま再現するような演奏ぶりなのに、
ちっとも古臭くないどころか、すごくヴィヴィッドなサウンドに
いつも目を見開かされ思いのする、ロスト・バイユー・ランブラーズ。
フィドルのルイ・ミショーとアコーディオンのアンドレ・ミショーの兄弟を中心に、
パワフルでディープな伝統ケイジャンを奏でるグループです。

ポピュラー音楽の基礎となったカリブ海発祥のリズム「カリンダ」をタイトルにした
17年の前作から2年、ドキュメンタリー映画のサウンドトラックという新作が届きました。
ジャケットに描かれているビーバーに似たヌートリア、一見カワイく見えますけれど、
これが水辺の植物を食べ尽くす害獣で、
繁殖力が高く、ルイジアナでも深刻な被害で問題視されています。

サウンドトラックということで、
ルイ・ミショーの唾が飛び散るようなヴォーカルが聞けるトラックは少なめですけれど
映像的なサウンドをふんだんに表した本作は、
ロスト・バイユー・ランブラーズの新境地といえ、
アイディアに富んだ短めの22曲を詰め込んだアルバムは、聴きものです。

そのなかでも、変わらないのは、ルイ・ミショーの荒々しいフィドル。
世の中のサウンドがおしなべてスムースにきれいになっていくなかで、
こんなにプリミティヴな味わいをデビュー当時から保ち続けているのは、嬉しいですね。
トランペットをゲストに迎えた2曲で、
ノスタルジックなダンスホールの雰囲気を横溢させるほか、
ヒップ・ホップ・トラックもあり、ゴリゴリの伝統と現代性を共存させる手腕が鮮やかです。

Lost Bayou Ramblers "RODENTS OF UNUSUAL SIZE (Music From The Motion Picture)" Lost Bayou Ramblers no number (2019)
Lost Bayou Ramblers "KALENDA" Lost Bayou Ramblers no numer (2017)
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アラブ古典歌謡とスーフィー詩を歌う愛国主義者 ジャヒーダ・ワハビ [中東・マグレブ]

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アラブのCDで、アラビア語より英語のアルファベットが、
これほど目立つジャケットも珍しいですね。
レバノンの古典歌謡歌手、ジャヒーダ・ワハビの新作です。
すでにヴェテランといえる歌手で、今回も自身のレーベルからのリリースです。

ウム・クルスームを尊敬し、もし歌手にならなければ軍人になったという彼女。
16歳の時、内戦で軍人だった父親を亡くし、
ジャヒーダは愛国主義者になったといいます。
愛国主義といえば、ジュリア・ブトロスの18年ライヴ盤(CD2枚組にDVD付き)が
まさに愛国主義一色で、記事は遠慮したところだったんですけれどね。
こちらは歌いぶりが勇ましくなったりするようなことはなかったので、
落ち着いて聴くことができました。

ジャヒーダ・ワハビが音楽を勉強するなかで、古典音楽の道に進んだのも、
そうした愛国心やアラブの歴史への関心が大きく影響したようです。
レバノン国立音楽院に進んで、歌とウードを学びながら、
古典詩、古典歌劇、シリア聖歌、スーフィー音楽、コーランを勉強したといいます。

ジャヒーダは音楽を通じて古典詩を蘇らせたいと考えていて、
古典にのっとった新作古典曲を歌うほか、スーフィー詩も、多く取り上げています。
本作はプラハ市交響楽団やキエフ交響楽団を起用した曲など、
古典歌謡をリフレッシュメントしたプロダクションが効果をあげていて、
モダンなアプローチが古典の堅苦しさを洗い流し、
風通しのよい爽やかな聴後感を残します。

本作にはボーナス・トラックならぬボーナス・ディスクが付いていて、
CDトレイの下にもう1枚ディスクが入っているのに驚かされたのですが、
本篇がは50分43秒なのに、ボーナス・ディスクは77分26秒というヴォリューム。

ボーナス・ディスクはスーフィー・アルバムと銘打ち、
無伴奏もしくは太鼓だけ、またはカーヌーンや笛のみを伴奏に歌うなど、
全編簡素な伴奏で歌っています。
静謐なサウンドとしながらも、ことさら神秘的な雰囲気をまとうことなく、
丁寧にスーフィー詩を聞かせているところに好感が持て、
耳を傾けるほどに心が落ち着いていくのをおぼえます。

Jahida Wehbe "NOMAD’S LAND" Jahide Wehbe no number (2019)
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穏やかな休日の午後に ジャネット・エヴラ [北アメリカ]

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めったに出会えない、ぼく好みのジャズ・ヴォーカリストを見つけました。
温かみのあるふくよかな声がいいんだなあ。
素直な発声で、中低音から高音までトーンを変えずにムラなく歌えるところは、
最近の女性歌手に少なくなった資質ですね。

高音になると、キンと立つ女性の歌手がやたらと目立つにようになったのって、
いつ頃からでしたっけ。日本のアイドル歌手に限った話でなく、全世界的に
一定の年齢以下の女性歌手に共通して聞かれるようになったこの傾向、
完全に世代的なものみたいですけれど、苦手なんですよねえ。
語尾をハネるような歌い口とか聞くと、もうダメ。

で、そんな歌い口とは無縁の歌い手がこのジャネット・エヴラ。
声を張ることはおろか、わずかに強いアクセントもつけず、ひたすら穏やかな歌いぶりで、
高音域をふわーっとした霞のような歌い方をして、夢見心地に誘います。
イングランドのグロスター出身だそうですが、現在はアメリカのセント・ルイスで活動中の
シンガー・ソングライターで、ベーシストでもあるんですね。

ジャネットの書く曲がまたシャレているんです。
ボサ・ノーヴァやラテンのテイストを湛えたロマンティックな佳曲揃いで、
明るく爽やかな、昼間の窓辺が似合うジャズ・ヴォーカルです。
マイケル・フランクス、スティーヴン・ビショップあたりが好きな人にはぴったりでしょう。
これがデビュー作で、自主制作とのこと。
穏やかな休日の午後、公園の野外音楽堂でライヴを観てみたい人です。

Janet Evra "ASK HER TO DANCE" no label no number (2018)
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2010年代オールジャンル・アルバム・ベスト30 [その他]

12月号の2010年代オールジャンル・アルバム・ベストは、
2020年代に活躍を期待する音楽家、
または音楽シーンという未来志向の基準でセレクトしたんですが、
なんと30タイトルのうち、28タイトルが死に票という惨憺たる有様。

1位に選んだエディ・トゥッサの“GRANDES MUNDOS”を、
「別のタイトルでも可」としたので、かろうじて死に票を避けられたものの、
もしこのアルバムに限定していたら、ランクインできたのは1タイトルのみでした。

2年前のミュージック・マガジン年間ベストのワールド・ミュージック部門ベスト10では、
当ブログで紹介したアルバムが全10タイトル居並び、
その浸透力にちょっとばかり鼻息荒くしたんですけど、
やっぱあれはフロックだったか(笑)。

でも、2010年代の目玉がアンゴラ、ミャンマー、ヴェトナムだったことくらい、
当ブログの愛読者なら、とっくにお見通しですよねえ。

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1. Eddy Tussa / Grandes Mundos
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-11-12
2. Vijay Iyer Sextet / Far From Over
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-09-22
3. CRCK/LCKS / Double Rift
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-08-30
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-10-29

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4. Itiberê Zwarg & Grupo / Intuitivo
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-09-11
5. Los Guardianes De La Música Criolla / La Gran Reunion: Cristal Herido
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-09-17
6. Richard Bona / Bonafied
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-04-30

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7. Lệ Quyên / Khúc Tình Xua: Lam Phương
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-03-20
8. Kem / Intimacy: Album Ⅲ
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-09-13
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-01-22
9. Sam Lee / Ground Of Its Own
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-06-23

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10. Ti Fock / Gayar Natir
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-08-27
11. Seu Jorge / Musicas Para Churrasco Ⅱ
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-04-30
12. Robert Randolph & The Family Band / Lickety Split
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-12-08

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13. Tiwa Savage / R.E.D.
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-04-12
14. 中村佳穂 / AINOU
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-12-12
15. Passo Torto / Passo Torto
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-04-29

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16. Faada Freddy / Gospel Journey
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-04-02
17. Jupiter & Okwess International / Hotel Univers
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-10-11
18. Thxa Soe / Yaw Tha Ma Paung Chote
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-01-26

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19. Moonchild / Voyager
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-06-22
20. Ukandanz / Yetchalal
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-12-27
21. Dédé Saint-Prix / Mi Bagay La
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-04-19

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22. May Thet Htar Swe / Taw Pan Kalay
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-12-25
23. Fnaïre / Yed El Henna
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-02-16
24. Şevval Sam / Ⅱ Tek
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-09-22

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25. チャラン・ポ・ランタン / 女の46分
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-03-05
26. Kawthip Thidadin / Sao Morlum Sum Noi
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-09-06
27. Adekunle Gold / About 30
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-09-15

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28. Hiba Tawaji / 30
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-05-25
29 Tony Chasseur / Live - Lakou Lanmou: 30 Anos De Carrière À La Cigale
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-03-06
30. Mlindo The Vocalist / Emakhaya
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-02-06
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ラテン/カリブ音楽オールタイム・アルバム・ベスト30 [その他]

11月号のラテン/カリブ音楽オールタイム・アルバム・ベストも、
個人史を基準にして、愛着のあるレコードでセレクトしたら、
ものの見事に古いもんばっか並んじゃいました。

でも、ベスト100の1位だって『ライヴ・アット・ザ・チーター』なんだから、
そう責められるセレクトでもないと思いますけれども。
ブラジルもラテンも、過去の遺産がデカすぎて、
新しい作品が太刀打ちできないのは、致しかたないですね。

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1.Celia Cruz / Reflexiones
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-07-16
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-07-15
2.Tiroro / Best Drummer In Haiti
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-06-14
3.The Mighty Sparrow / Sparrow At The Hilton

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4.Bola De Nieve / Bola De Nieve
5.Septeto Nacional / Sones Cubanos
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-10-05
6.Super Jazz Des Jeunes / Vacanses

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7.Daniel Santos / El Legendario Daniel Santos Con El Cuarteto Original De Pedro Flores
8.アルセニオ・ロドリゲス/ソン・モントゥーノの王様
9.Rafael Cortijo / El Sueño Del Maestro

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10.Miguelito Valdes with Machito and His Afro-Cubans / Cuban Rhythms
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-09-06
11.José Antonio Méndez / Escribe Solo Para Enamoradas
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-09-11
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-03-20
12.Hector Lavoe / De Ti Depende

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13.Kali / Racines
14.Atahualpa Yupanqui / Guitarra Y Canto
15.Chuito (El De Bayamón) / La Vieja Volaora

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16.Gran Coquivacoa / 30 Aniversario
17.Eva Ayllon / Gracias A La Vida
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-11-14
18.マリア・テレーサ・マルケス / カンシォーンの女王
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-11-29

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19.Conjunto Lira Paucina, Jaime Guardia / Conjunto Lira Paucina / Jaime Guardia Y Su Charango
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-07-12
20.Los Guardianes De La Música Criolla / La Gran Reunion: Cristal Herido
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-09-17
21.Tanya St. Val / Mi
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-07-19

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22.Scorpio / Universel - Album Ⅱ
23.Las Chicas Del Can / Caribe
24.Piquete Típico Cubano / Homenaje Al Danzón
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-11-27

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25.Ensemble Gurrufío / El Cruzao
26.シルビア・デ・グラッセ / タンボレーラの歌姫
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-03-22
27.Dédé Saint-Prix / Mi Bagay La
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-04-19

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28.Pedro Laza Y Su Banda / Pedro Laza Y Su Banda
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-11-06
29.Joe Jack / L' Homme Orchestre
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-04-10
30.v.a. / Paranda
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アフリカ音楽オールタイム・アルバム・ベスト30 [アフリカ(全般)]

7月号のアフリカ音楽オールタイム・アルバム・ベスト30は、
アフリカ音楽との出会いの個人史にしました。

アフリカ音楽のベスト・セレクションということになると、
以前ミュージック・マガジン/レコード・コレクターズ増刊『定盤1000』で
アフリカを担当して40枚選んだこともあり、
どうしてもそれと同じようなものになってしまいます。

それではつまらないし、事前に総括記事の対談も予定されていたので、
オールタイム・ベストの話題は、そっちで話せばいいやと考えました。
そこで、ブラジル音楽の時のように歴史的意義を考えてセレクションするのではなく、
もっと極私的にアフリカ音楽との衝撃の出会い順に並べてみたわけです。

そこで1位は、小学生の時に父に聞かせてもらって出会った
初めてのアフリカ音楽、ミリアム・マケーバ。
次いで、高校生の時にコリン・ターンブルの『森の民』を読んで知ったピグミーの音楽で、
これを機に文化人類学にかぶれ、アフリカの民俗音楽にのめりこんだのでした。

出会いの衝撃を基準にセレクトしたら、
あまりにフィールド・レコーディングのレコードが多くなってしまい、
何度も見直すハメとなってしまいました。
こうしてみると、ティナリウェンを最後に、
衝撃を受けたアフリカ音楽との出会いはなかったみたいですね。

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1.Miriam Makeba / The Many Voices of Miriam Makeba
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-07-11
2.field recordings / Music Of The Rain Forest Pygmees
3.Dumisani Abraham Maraire / The African Mbira: Music Of The Shona People Of Rhodesia
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-07-27

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4.field recordings / Musiques Du Pays Lobi
5.field recordings / Le Mali Du Fleuve: Les Peuls
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-06-20
6.Dollar Brand / African Piano

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7.Sory Kandia Kouyaté / Kouyate Sory Kandia
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-01-12
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-02-15
8.Bembeya Jazz National / Mémoire De Aboubacar Demba Camara
9.Fanta Damba / Hamet

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10.Fela Ransome Kuti & The Africa 70 / Expensive Shit
11.Chief Commander Ebenezer Obey & His Inter-Reformers Band / Eda To Mose Okunkun
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-05-15
12.Orchestre Vévé / Orchestre Vévé

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13.Manu Dibango / Afrovision
14.Thomas Mapfumo & The Blacks Unlimited / Ndangariro
15.King Sunny Ade and His African Beats / Message

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16.Ayinla Omowura and His Apala Group / VOL.19: Awa Kise Olodi Won
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-09-10
17.Papa Wemba et L’Orchestre Viva La Musica / Le Jeune Premier
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-02-13
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-04-26
18.Youssou N’Dour & Le Super Etoile De Dakar / Immigrés - Bitim Rew

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19.Salif Keita / Soro
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-08-23
20.Super Biton De Segou / Afro Jazz Du Mali
21.Mahmoud Ahmed / Ere Mela Mela

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22.Mahlathini / The Lion Of Soweto
23.Abdel Aziz El Mubarak / Abdel Aziz El Mubarak
24.Hukwe Zawose / The Art Of Hukwe Ubi Zawose / Tanzania『<タンザニア/親指ピアノ>驚異のイリンバ・アンサンブル』

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25.Wasiu Ayinde Barrister & The Talazo International Fuji Messiah / American Tips
26.Black Star & Lucky Star Musical Clubs / Nyota
27.Kumasi Trio / Kumasi Trio 1928

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28.Mulatu Astatqé and others / Éthiopiques 4: Ethio Jazz & Musique Instrumentale 1969-1974
29.Bezunesh Bekele / The Greatest Hits Of Bezunesh Bekele
30.Tinariwen / Amassakoul
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ブラジル音楽オールタイム・アルバム・ベスト30 [ブラジル]

まもなく書店に並ぶ『ミュージック・マガジン』12月号で、2月号から11号連続していた
創刊50周年記念ランキングの特集企画が完結します。
のべ11回のうち4回に参加しましたけれど、
読者の方からリストの文字が小さすぎて見ずらいので、
ブログに載せてという要望を、掲載号が出るたびにいただいていました。

雑誌の企画なので、自分のブログへ転載するのはあまり気乗りがせず、
そのままにしていたんですけれど、あちこちから同じような声をもらうので、
最後の掲載となる12月号が出るのに合わせて、
これまでの分をまとめて公開することにしました。

まずは5月号のブラジル音楽オールタイム・アルバム・ベスト30から。

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1.ノエール・ローザ/ヴィラの詩人
2.Cartola / Cartola (1st)
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-10-17
3.ピシンギーニャ/ブラジル音楽の父
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-03-17

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4.Carmen Miranda / A Nossa Carmen Miranda
5.Dorival Caymmi / Caymmi E Seu Violão
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-08-15
6.Ciro Monteiro / A Bossa De Sempre
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-03-18

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7.Luiz Gonzaga / São João Na Roça
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-12-13
8.João Gilberto / Chega De Saudade
9.Antonio Carlos Jobim, Vinicius De Moraes / Orfeu Da Conceição

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10.Nelson Gonçalves / Na Voz De Nelson Gonçalves
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-10-17
11.Gilberto Gil / Refavela
12.Jorge Ben / Solta O Pavão
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-02-01

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13.Baby Consuelo / P'ra Enlouquecer
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-06-24
14.Itiberê Zwarg & Grupo / Intuitivo
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-09-11
15.Mestre Ambrósio

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16.Caetano Veloso / Fina Estampa
17.Martinho Da Vila / Presente
18.Beth Carvalho / Na Pagode

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19.Monarco / Terreiro
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-11-16
20.João Nogueira / Vem Quem Tem
21.Seu Jorge / Musicas Para Churrasco Vol.1
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-09-10

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22.Jacob Do Bandlim / Prólogo
23.Joyce / Feminina
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-09-23
24.Passo Torto / Passo Torto
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-04-29

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25.Maysa / Convite Para Ouvir Maysa No.3
26.Ivan Lins / Novo Tempo
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-11-24
27.Aloysio De Oliveira e Seu Bando Da Lua / Samba These Days

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28.Dolores Duran / Entre Amigos
29.Alceu Valença / Anjo Avesso
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-07-31
30.Dona Onete / Feitiça Caboclo
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-01-14
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ハッピーなカンザス・シティ・ジャズ ジェイ・マクシャン [北アメリカ]

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ジェイ・マクシャンの90年東京ライヴ!!!
ウソだろ!と思わず叫んじゃいました。
来日してたの? 90年に?? えぇ~???と仰天。
見逃しどころか、今の今まで来日していたことすら知りませんでしたよ。
あわてて買って聴いてみれば、1曲目の‘But Not For Me’ から
ピアノをフルに鳴らし切る力強いタッチに、全身総毛立っちゃいました。

この豪快にドライヴするスウィング感、まさしくカンザス・シティ・ジャズの証しでしょう。
一方、スロー・ナンバーで聞かせる、両手が生み出す豊かなハーモニー。
その厚みのあるサウンドが実に華やかで、きらびやかさえおぼえますよ。
マクシャン、この時73歳だったといいますが、老いなど微塵も感じさせない元気さで、
戦前戦後を通し、ビッグ・バンド・リーダーとして活躍した大物の風格が、
もう圧倒的ですね。

マクシャンのプレイは、シブいとか、いぶし銀なんていう形容がまったく似合わない、
溢れんばかりのゴージャス感に満ちみちていて、聴く者をハッピーにさせます。
チャーリー・パーカーとの共作‘Jumpin' The Blues’ のブギウギ・ピアノもサイコー。
‘Honky Tonk’ をさらっと挟み込んだりして、もうニクいばかりです。
おなじみのブルース・ナンバーの‘Kansas City’ や
‘Georgia On My Mind’ のヴォーカルの味わいなんて、もう、言葉になりません。
これほど芳醇なコクを味わえることは、めったにないことです。

サポートするメンバーも凄腕です。
随所でソロをとるリン・シートンのベースが聴きもので、
弓弾きしながらスキャットするスラム・スチュワートばりのプレイも堂に入っています。
チャック・リッグスのドラムスもよくスウィングし、豪快なソロもきめていますよ。

うわぁ、これ観たかったなあ。クヤシ~い!
でも、よくぞCD化してくれました。
マクシャンの遺族に許諾をとって実現したのだそうで、
間違いなくこれ、マクシャン最高作のひとつになるでしょう。
ジャケットのマクシャンのハッピーな笑顔が、中身をすべて表していますよ。

Jay McShann 「LIVE IN TOKYO 1990」 T2 Audio Studio T2AUDIO101
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通俗アラブ・ムードを捨てよ ヤズ・アハメド [ブリテン諸島]

Yazz Ahmed  POLYHYMNIA.jpg

ヤズ・アハメドの前作は、何度か聴くうちに、
オリエンタリズムむき出しの楽想がだんだん鼻についてきて、
記事にしたことをちょっと後悔していました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-02-23

出自はアラブでも、西洋文化のもとで育った彼女のような若い音楽家が、
自身のルーツを傾倒したにしては、あまりにインチキなアラブ風メロディを
作曲するのって、いかがなもんですかね。
だいいち彼女のエキゾ・センスって、
「キャラバン」や「ナイト・イン・チュニジア」くらい古臭くない?
ご本人はラビ・アブ=ハリルに影響を受けたと発言しているので、
それなら、もっとちゃんとアラブ古典を勉強すればいいものを。

まあ、そんなわけで、新作1曲目のミスティックなムードを漂わせるイントロで、
あぁ、またか……と思ったんですけれど、
展開していくうちに、どんどんと熱気を帯びていき、
前作とはだいぶ様相の違う展開の演奏となっていきます。

前作がムード・ミュージック臭い短い曲が並んでいたのとは打って変わって、
本作は10分前後の長尺曲ばかり。作編曲の才能を存分に発揮した、
ラージ・アンサンブルの醍醐味を堪能できるジャズ作品となっています。

サウジ・アラビアの映画監督ハイファ・アル=マンスール、
公民権活動家のルビー・ブリッジズにローザ・パークス、
パキスタンの人権活動家マララ・ユスフザイ、女性参政権を主張したサフラジェット、
パーキンソン病と闘いながら演奏活動を続ける
イギリス人サックス奏者バーバラ・トンプソンなど、
女性のロール・モデルとなる活動家たちに捧げられた本作は、
曲のテーマごと、趣向の凝らされた楽曲が並びます。

アラビック・ムードの1曲目から一転、
2曲目はいきなりセカンド・ラインのリズムで始まるという意表を突く展開。
13年にマララ・ユスフザイが国連本部でスピーチした内容を、
ヤズを含む複数の女性演奏家たちによって朗読した‘One Girl Among Many’ は、
スティーヴ・ライヒの‘Different Trains’から着想を得たもののようです。
いずれの曲も、コンポジションと即興のバランスがとてもよく、
練られた編曲に感心しました。

ヤズとともに新世代UKジャズ・シーンを引っ張る女性プレイヤーたち、
サックスのヌバイア・ガルシア、ピアノのサラ・タンディ、ギターのシャーリー・テテー、
トランペットのシーラ・モーリスグレイのプレイもそれぞれの個性を十分発揮しているし、
前作に続いてヴィブラフォンが重要な役割を果たしています
(奏者はルイス・ライトからラルフ・ワイルドに交代)。

前作でもレディオヘットのカヴァーがもっとも秀逸だったように、
オルタナティヴ・ロック、ミニマル・ミュージックなどの要素を、
ジャズのラージ・アンサンブルにまとめ上げるところに、
この人の才能が光ります。
その意味でも、通俗なアラブ・ムードはジャマなだけ。
アラビック・ジャズを標榜するなら、もっと真摯にアラブ音楽を学んでほしいですね。

Yazz Ahmed "POLYHYMNIA" Ropeadope RAD506 (2019)
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神歌と古い音律 アマミアイヌ [日本]

Amamiaynu.jpg

朝崎郁恵と安東ウメ子の魅力は、十二平均律で歌っていないところにある。

そんな指摘をする人にこれまで出会ったことがないですけど、
二人が、日本の音楽からすっかり失われた古い音律で歌っていることは、
二人の音楽を語るうえで重要なポイントと、ぼくは考えています。
奄美民謡とアイヌ音楽がコラボした『AMAMIAYNU』を聴いて、
ひさしぶりにそんなことを再認識させられました。

このアルバムに参加している若いアイヌの歌い手たち、
マレウレウのレクポと、姉妹ユニットのカピウ&アパッポの3人は、
見事なまでに♪ドレミファソラシド♪で歌っているので、
なおさら朝崎の歌との違いがくっきりとわかります。
ヴァーチャル共演となった故・安東ウメ子の歌が登場すると、
途端に朝崎の歌と共振するじゃないですか。

朝崎の独特の裏声を使ったこぶし回しは、
グインと呼ばれる奄美民謡独特のものですけれど、
地を這うような低音から一気に高音域に伸び上がる、
声のダイナミズムを生かした歌いぶりは、二人に共通するものです。

そしてなにより、二人の歌う音律がドレミファソラシドでなく、
微分音のズレを感じさせる音律であるところが、
霊気すら感じさせる二人の歌の妖しい魅力につながっています。

これって、奄美やアイヌの音楽が持つ独自性ではなく、
かつて日本にあった古い音の記憶だと、ぼくは考えたいんですね。
奄美やアイヌの特殊性に焦点を当ててしまうと、話が広がらないじゃないですか。
アパラチアやスコットランドの古謡、
アイルランドのシャン・ノースを歌う老人の唄などにも、
同じ感慨をもつことがあるように、十二平均律に犯されていない古い音律に
それが遺されている可能性として、この問題を考えたいんですよ。

タイやミャンマーの古典音楽に残る七平均律や、ガムランのスレンドロの五平均律など、
世界には十二平均律とは異なる体系の音律もまだまだ生きながらえています。
とはいえ、ピアノで音感教育を受けたぼくたちのように、
そうした民族の音の記憶は、もう風前の灯であることも間違いないでしょう。
自分がその音律を持っていなくても、祖先の記憶を蘇らせるように、
古い音律を使った歌に無性に惹かれるのは、
脳のしわに刻み込まれた記憶が、まだ途絶えていない証拠だと思うのです。

朝崎が育った加計呂麻島の花富集落には、ノロと呼ばれる祝女が祭祀を執り行い、
ノロたちが歌う神歌を聴いて、朝崎は育ったといいます。
朝崎の複雑な抑揚や裏声使いのルーツは、神歌なのでしょう。
自分では歌うことのできない古い音律に魅せられるのは、
神をなくした現代社会に、神歌を求めているからなのかもしれません。

Amamiaynu 「AMAMIAYNU」 チカル・スタジオ/タフ・ビーツ UBCA1066 (2019)
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ミャンマーの謎ピアノ、サンダヤー サンダヤー・チッスウィ [東南アジア]

Sandayar Chit Swe  HIS MEMORABLE IMPROVISATION.jpg

ミャンマーの不思議ピアノ、サンダヤーの名手
サンダヤー・チッスウィのアルバムを手に入れました。
この人については、以前<ミャンマーの亀井静香>と書いて紹介しましたが(笑)、
覚えておられる方がいらっしゃいますでしょうか。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-06-17

古典/伝統音楽専門のイースタン・カントリー・プロダクションから出た
旧録復刻の2作目で、以前このレーベルから出た
“HIS ART, HIS TOUCH” より音質の良い録音が目立つので、
少し後の録音を編集したもののようです。
とはいえ、2作とも曲ごとの音質のバラツキが激しく、クレジットもないので、
録音時期は不明なのですけれど。

『忘れ得ぬ即興』というタイトルの本作。
あの独特のピアノ・スタイルの即興がたっぷり味わえるのかと思いつつ、
どこまでが作曲で、どこから即興なのかが、もともとよくわからないミャンマー音楽なので、
果たして演奏を聴いただけで判別できるのやら。
まったく自信ないまま聴いてみたものの、やっぱりよくわかりませんねえ。

音質の良くない古そうな録音の1曲目だけ、
ドラムスとベースのリズム・セクションが付き、
ラウンジーなカクテル風ピアノを聞かせるのですけれど、
この曲など完全に作曲されたもので、即興を思わせるパートはありません。
他も完全即興と思える曲はなく、
ミャンマー版キース・ジャレット/チック・コリアが聞けるか!?
な~んて過剰な期待はしちゃいけないみたいですね。

古典と現代がスイッチするタイプの楽曲でなく、
古典をもとにコンポーズしたような曲では、
ピアノ練習曲のような器械的な運指で演奏するパートが、おそらく即興なんでしょうね。
パッタラー(竹琴)のチューニングと同じ7音音階に合わせたサンダヤーは、
パッタラーと同じ演奏法から発展したと聞きます。

チッスウィの演奏を聴くと、西洋クラシック音楽のピアノ奏法も習熟していて、
そのミックスした奏法が面白く聞こえます。
いまどきのクラシック音楽のピアノ練習曲では、
バイエルやツェルニーは使われなくなったそうですけれど、
ここで聞かれるピアノは、そんなピアノの運指を連想させますね。

そんな器械的なフレーズと、ミャンマー伝統のメロディが織り交ぜて奏でられる
不思議音楽。やっぱり謎なミャンマーのピアノ、サンダヤーです。

Sandayar Chit Swe "HIS MEMORABLE IMPROVISATION" Eastern Country Production ECP-N29
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センスじゃなくて技術 クラックラックス [日本]

CRCK LCKS  TEMPORARY.jpg

クラックラックスの前作“DOUBLE RIFT” には、ホント打ちのめされました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-08-30
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-10-29

昨年のベスト・オヴ・ベストどころか、ここ十数年これ以上の衝撃を
日本のバンドから受けたことはなかったからです。
ジャズやクラシックの教養をしっかりと身に付けたうえで、
ポップスの作曲技法も兼ね備えたバンドの登場は、
日本のポップ・ミュージックのクオリティを、これまでとは別次元のレヴェルに
引き上げたことは疑いようがないでしょう。
ジャズとポップスの境界が溶解したことを、
これほど実感させるバンドはありませんでした。

ここ最近のシティ・ポップ・ブームには、
二十代でリアルタイムに聴いた初老世代には片腹痛い思いもしますけれど、
クラックラックスはそんな過去の音像に寄りかかるようなマネはしていません。
だからこそ、リスペクトしてるんです。センスなんかじゃありません、技術ですよ。
技術がない者に限って、センスとか言いたがるんですよね。
ぼくらの世代では成し得なかった演奏技術を備え、多様な音楽を修得して
空恐ろしいほどの才能を発揮している彼らが、本当にまぶしく見えます。

新作はフル・アルバムだそうですけれど、
前作がEPという扱いじたい、どうもピンときませんね。
収録曲数や時間も、どちらも大して変わらないのに。
そのあたりの事情はよくわかりませんが、
今回の『TEMPORARY』は、『DOUBLE RIFT』の姉妹編といった印象が強いです。

どちらも短いイントロダクションでアルバムがスタートし、
続くオープニング曲がキャッチーなメロの、ツカミのあるトラックを置いたのは、
同じネライというか、同じ構成ですね。
前回の「O.K.」がめちゃくちゃアガるハッピー・チューンでしたけれど、
今回の「KISS」は、これまたチャーミングでめっちゃいい曲なんです。
少し涙の味がして、こみあげるものがあるメロディに、ぐっときますよ。

石若駿のドラムスがアグレッシヴに迫るトラックも、ちゃんと用意されています。
前作の4曲目「Skit」に呼応するのが、3曲目の「嘘降る夜」で、
ポリリズムならぬポリテンポという、凝ったアレンジを聞かせます。
小田朋美が歌詞の1語を、ゆっくりと全音符で置いていくような歌に、
4倍のテンポで石若のドラムスがカオスに暴れまくる、
短いインタールードのようなトラックが聴きものとなっています。

前作との大きな違いは、小田朋美のヴォーカルに深めのリヴァーブをかけているところ。
井上銘のギターが端々に印象的なリックを聞かせるところも、耳残りしますね。

ラストに前作収録の「病室でハミング」のライヴ・ヴァージョンを置いて、
小田が「ありがとうございます」とMCしたあと、
すぐに始まる「Shower」のイントロでフェイドアウトするアルバムの終わり方も、
余韻の残る締めくくりで、胸アツです。

CRCK/LCKS 「TEMPORARY」 アポロサウンズ APLS1912 (2019)
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ゴスペルを支える家族 ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド [北アメリカ]

Robert Randolph & The Family Band  BRIGHTER DAYS.jpg

うん、やっぱりロバート・ランドルフは、
ゴスペル・ルーツとしっかり向き合った時が、一番良いね。
前作の“GOT SOUL” に違和感を感じたのは勘違いじゃなかったなと、
思いを新たにした新作です。

“GOT SOUL” は、ギターにエリック・ゲイルズ、ベースにデリック・ホッジ、
オルガンのコリー・ヘンリーというロック/ジャズで今話題のミュージシャンを
大勢迎え入れたアルバムでした。これって、ロバート・ランドルフ名義で出すならまだしも、
「ザ・ファミリー・バンド」の看板で出すんじゃあ、偽りありだよねえ。
ロバート・ランドルフは、これまで個人名義でアルバムを出したことは一度もないし。

ご存じとは思いますが、
ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドの「ファミリー」とは、
ロック・バンドが仲間を指して比喩的に言うものではなく、
本当の家族(親戚含む)を意味するものです。
ゴスペルでファミリー・グループといえば、ステイプル・シンガーズが有名ですけれど、
ロバート・ランドルフも同じ家族バンドなのです。

幼い頃から教会でともに育ってきた家族の絆が、
ロバートのゴスペル・ルーツにしっかりと刻印され、その音楽性を確かなものにしている。
ロバートの音楽を、そのように捉えているぼくからは、
「ジミヘンの再来」といった言葉が躍るギター・ヒーロー的なアルバム制作は、
求めるものが違って、違和感が残るんですよねえ。

今作はアメリカーナやカントリーのシンガー・ソングライターの多くを
手掛けるプロデューサー、デイヴ・コブを起用。
ぼくは本人がプロデュースした13年作“LICKETY SPLIT” を最高作と思っているので、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-12-08
他人にプロデュースを任せる必要なんてないのにと思うんですけれどねえ。
“LICKETY SPLIT” の爆発力には及ばないものの、本作のプロデュースは成功しています。

セイクリッド・スティールを弾きまくり、
ロックやファンク色の濃いサウンドをまといながらも、
そこに展開される高揚感は、まぎれもなくゴスペル。この基本さえ揺らいでいなければ、
ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド、向かうところ敵なしです。

Robert Randolph & The Family Band "BRIGHTER DAYS" Provogue/Dare PRD7585-2 (2019)
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アフロ・ジャズへのアフリカ人ピアニストからの返答 シェイク・ティジャーン・セック [西アフリカ]

Cheick Tidiane Seck  TIMBUKTU THE MUSIC OF RANDY WESTON.jpg

マリのヴェテラン音楽家、シェイク・ティジャーン・セックの新作は、
なんとアメリカのジャズ・ピアニスト、ランディ・ウェストンのカヴァー・アルバム。
昨年92歳で亡くなったランディ・ウェストンは、
若き日にナイジェリアを訪問してボビー・ベンソンと親交を持ち、
後年にはモロッコのグナーワ・ミュージシャンたちと交流するなど、
生涯アフリカ音楽と深い関わりを持ち続けたジャズ・ミュージシャンでした。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-06-30

一方、レイル・バンドの鍵盤奏者からキャリアをスタートしたティジャーン・セックは、
パリを拠点にアフリカ人シンガーのプロデュース、アレンジ、
曲提供などをしながら活動の場を徐々に広げ、
ハンク・ジョーンズやディー・ディー・ブリッジウォーターといった
ジャズ・ミュージシャンとのアルバム制作が話題を呼んだ人。
鍵盤奏者としてより、プロデューサーやアレンジャーとしての活躍が目立ち、
ぼくもピアニストとしてのティジャーン・セックを真正面から聴くのは、
これが初めてです。

全8曲、ラストの‘Mr Randy’ のみがティジャーン・セック作で、
ほかはすべてランディ・ウェストンの曲。
いずれの曲もオリジナルに忠実な演奏となっていて、
あえてアレンジなどを施さなかったところは、ウェストンへの敬意でしょうか。
ピアノ、ベース、ドラムス、テナー・サックス、パーカッションの編成で、
‘Timbuktu’ にマヌ・ディバンゴとアブダル・マリックがゲストで加わるほか、
フルートとゲンブリがゲストに加わった曲もあります。

72年のCTI盤に収録された‘Ganawa (Blue Moses)’ は、
ピアノとローズで別々に演奏した2ヴァージョンが収録されています。
オリジナルではフレディー・ハバードのトランペット・ソロが聴きものでしたが、
こちらのピアノ・ヴァージョンではゲンブリを加えたのがミソ。

13年のビリー・ハーパーとの共同名義作に収録された‘Timbuktu’は、
2分程度の小品でしたけれど、こちらは9分を超す拡大ヴァージョン。
ギネアのフルート奏者が導入部で聞かせるエモーショナルな発声奏法は、
アフリカ的な表現ともいえ、聴きものです。

73年の作品‘Tanjah’は、ビリー・ハーパー、バド・ジョンソン、アル・グレイ、
ジョン・ファディスなどによる厚みのあるホーン・セクションが
フィーチャーされていたものの、アレンジは全く同じで、
‘African Cookbook’ や‘Niger Mambo’ も66年のバクトン盤の演奏に忠実です。
‘Niger Mambo’ のオリジナルは、63年のコルピックス盤ですけれど、
ここで演奏されているのは、66年ヴァージョンの方。
ちなみにバクトン盤は、72年のアトランティックから再発されたレコードで
世間的には認知されていて、これについては上記リンクの記事を参照してください。

こうしてあらためてランディ・ウェストンのアフロ・ジャズを聴いてみると、
やはりこの音楽はアフリカ音楽とは似ても似つかぬ、
北米のジャズだなあという感を新たにします。
リズム構造、ハーモニー、楽曲の組み立てと、すべてがモダン・ジャズの語法によるもので、
アフリカは表層の借り物にしかすぎません。

それを、アフリカ人ピアニストが模倣した本作は、
アンジェリク・キジョが『リメイン・イン・ライト』をカヴァーして、
ロックをアフリカに奪還したような歴史的転回とは別物でしょう。
モダン・ジャズを換骨奪胎(=オマージュ)することくらい、
いまのアフリカのヴェテラン・ミュージシャンには、わけもないことなんですね。

Cheick Tidiane Seck "TIMBUKTU: THE MUSIC OF RANDY WESTON" Komos KOS005CD (2019)
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