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奇跡の音楽家 リシャール・ボナ [中部アフリカ]

Richard Bona Bonafied.JPG

緊張が解けて、ふとリラックスした瞬間の表情を捉えたショット。
モノクロ写真の美しい階調、タイトル文字のロゴタイプと、
絶妙なバランスで構成されたジャケット・デザインの品の良さに、思わず目を奪われました。
派手さはないけれど、その仕立ての良さは、リシャール・ボナの音楽と見事に合致しています。

天使が奏でているかのようなボナの音楽は、ふんわりとした最上級コットンの手触りを思わせます。
ボナの最新作は、そんな彼の音楽性が最高度に発揮された極上の仕上がりとなりました。
これほどまろやかで、優しい音楽を創り出す音楽家は、世界でボナただ一人じゃないでしょうか。

ボナの音楽には、エッジの立った音がいっさい出てきません。
角の取れた、丸みのある柔らかな響きに満ち溢れています。
そのソフトなサウンドは、赤ちゃんのお昼寝も邪魔せず、老人の耳にもやさしく、
年齢・性別・人種あらゆる垣根を越えて愛されるものです。
ボナの音楽からは、世界の誰もが共通して持つ平和への願いが
通奏低音のように流れてくるのを感じますが、それがボナという人なのでしょう。

フレンチ・ポップの女性歌手カミーユとデュエットした1曲を除いて、
全曲、生まれ故郷のカメルーンのドゥアラ語で歌っているとはいえ、
その音楽にアフリカ性がアピールされることはなく、
サウンドはあくまでも無国籍なコンテンポラリー・ポップスとなっています。
しかしそのサウンドを紐解けば、多重録音したコーラスとボディ・パーカッションで聞かせる
“Tumba La Nyama” や、しなやかなリズム・アレンジの“Diba La Bobe” など、
アフリカ人ミュージシャンでなければ生み出せないマジックをそこかしこに見つけることができます。

ま、そうは言っても、ボナのアルバムで耳奪われるのは、やはりメロディの美しさでしょうね。
涙が出そうなほど美しくも哀しいボレーロの“Mut'Esukudu”。
アコーディオンの響きがミュゼットを思わせる“Janjo La Maya”。
センチメンタルといっても差し支えない、切なくも胸に染み入るメロディに魅せられます。

またアルバムの最後では、なんとジェイムズ・テイラーの
“On The 4th Of July” をインスト演奏でカヴァー。
慈しみや儚さがないまぜとなったようなメロディが際立つこの曲は、
ジェイムズ・テイラーの02年作“OCTOBER ROAD” の中でも印象的な一曲でした。
まさかこの曲を取り上げるとは、ますますもってボナに親しみが湧きますよ。

コンテンポラリー・ジャズ・ベーシストとしても空恐ろしいほどの才能を持つボナですが、
最新作はコンポーザー、プロデューサーなどマルチ・タレントな音楽家としての
ボナのスケールが、ひと回り大きくなったのを感じさせます。
05年作の“TIKI” が世界を旅する音楽家の経過報告的なアルバムだったとすれば、
今作は旅の末に、ボナが自己の音楽世界を完成させたものといえるかも。

リシャール・ボナはアフリカの枠を飛び越えたゆいいつのミュージシャンであり、
地域や人種やジャンルをも超えた<奇跡の音楽家>です。

Richard Bona "BONAFIED" Universal Music 3733902 (2013)
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