金縛りのクロンチョン歌手 ネティ [東南アジア]
ヒャッホー! これは願ってもないリリースです。
田中勝則さんが新しく始めたレーベル「ディスコロヒア」の第2弾は、
クロンチョン史上最高の女性歌手、ネティのフル・アルバムだっていうんですから!
いやぁ、嬉しいなあ。以前田中さんがライスの復刻編集盤で女性歌手をシリーズ化していた時に、
「次はネティを出してくださいよー」とお願いしたことがあったんだけど、覚えていてくれたのかしらん。
マリア・テレーサ・マルケスの復刻盤を出してくれた時もカンゲキしましたけど、
ネティはそれ以上のカンドーものでっす!
ぼくにとってネティは、
その歌声で金縛りにあった女性歌手のひとりなんです。
レコードを聴いてカンゲキすることはしょっちゅうとはいえ、
さすがに金縛り経験をしたというのは、
人生の中でも数えるほどしかありません。
ネティの「クロンチョン・モリツコ」は、
その数少ないうちの一曲です。
あれはオーディブックの『クロンチョン入門』で聴いた、90年のこと。
ああ、もう四半世紀近くも経ってしまったんですねぇ……(遠い目)。
ネティの優雅で、ほんのり可憐な色気を感じさせる歌声は、
衝撃でした。
SP起こしのけっして良いとはいえない音質にもかかわらず、
清澄でしっとりとした歌いぶりに全身が震え、総毛立ちましたよ。
声を張って、少しクラシックふうの発声もするんですけれど、
それがちっともイヤミにならない。
むしろ、インドネシア民俗の中に鮮やかに溶け込んだ西洋を感じさせ、
文化が混淆した音楽のもっとも純度の高い上澄みをすくい上げたかのようで、
その贅沢すぎる洗練に圧倒されたのでした。
オーディブックに収録されたこの1曲で、
ネティはぼくにとって忘れられない歌手となりました。
CDで聴けるネティは、オーディブックの2曲と
ライス盤『クロンチョン歴史物語』に収録された2曲に、
ポルトガルのトラジソン盤に収められた2曲
(うち1曲は、ロカナンタへ再録音した「クロンチョン・モリツコ」)しかなく、
単独フル・アルバムの復刻はまさに悲願だったのです。
ネティのレコードを探そうにも、日本で手に入れるなどまず不可能で、
運良くイルマの10インチ盤を入手することはできましたけれど、
夫のアフマッド・ザエラニとともに残した、クロンチョンの伝統保存プロジェクトの
一連のカルヤ盤を見つけるなんて、とても無理な話。
ネティの写真をあしらったカルヤ盤のDN027なんて、はぁ、何度夢見たことか。
今度のディスコロヒア盤は、憧れのカルヤ盤のジャケットをコラージュしていて、嬉しい限り。
左半分の風景画はカルヤ盤の共通デザインで使われていたものだし、
右半分のネティの写真は、さっき話に出したDN027番に載っていたのと同じですね。
あ、ネティの写真といえば思い出しましたけど、
ライス盤の『クロンチョン歴史物語』のライナーに載せられていたネティの見たことのない写真、
あれって、ほんとにネティなんでしょうか。ぼくにはどうしても別人に見えるんですけれども。
あー、とにもかくにも、これでようやくネティのレコードを探さずにすみます。
なんせ25曲も一挙に聴くことができるんですからねえ。
発売の5月26日が待ち遠しいぃー。
[10インチ] Netty "BERDJUMPA DIRI" Irama LP13
「クロンチョン入門」 オーディブック AB06
(Collections : A Viagem Dos Sons / The Journey of Sounds) "KRONCONG MORITSKO - SUMATRA" Tradisom VS06
【訂正とおわび】CDで聴けるネティの曲はもう1曲、オーディブック『とうようズ・チョイス』所収の
「キサ・チンタ」Kisah Cinta があるそうです。
スチャラカ社員さんに教えていただきました。スチャラカ社員さん、ありがとうございます。
2013-05-02 00:00
コメント(2)
いつも楽しく拝見しています。
「釈迦に説法」あるいは「余計なお世話」の類で恐縮ですが、
CDで聞けるネティは、オーディブックの最後の盤『とうようズ・チョイス』の1曲目、「キサ・チンタ」KIsah Cintaがありました。
これも素晴らしい歌唱でした。
いずれにしてもフル・アルバムは楽しみです。
by スチャラカ社員 (2013-05-19 21:48)
『とうようズ・チョイス』にも入ってたんですか。持ってなくて、知りませんでした(汗)。
お知らせいただき、ありがとうございます。
by bunboni (2013-05-20 06:45)