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知られざるナイジェリアン・ハイライフの才人 ジミ・ソランケ [西アフリカ]

Jimi Solanke.JPG

ジミ・ソランケを知っているとすれば、それは相当ナイジェリアのハイライフに詳しい人のはず。
チャビー・チェッカーのツイストにスカを組み合わせた
破天荒なハイライフ・チューン“Eje Ka Jo”で知られるシンガーで、
ぼくも66年に大ヒットしたこの1曲だけしかジミを知らず、
そもそもレコードを出しているのかどうかさえ、長い間わからずじまいでした。

余談ですが、5月にピーター・バラカンさんのラジオ番組「Weekend Sunshine」へ呼ばれた時、
オリジナル・ミュージック盤“MONEY NO BE SAND”所収の“Eje Ka Jo”をかけたら、大ウケ。
ピーターさんも思わずノケぞったように、この曲はブーガルーなハイライフ怪演といえます。

そのジミ・ソランケの編集CDが03年にエコスターからリリースされ、
ジミの経歴を知ってがぜん興味を覚えたのと同時に、
この編集盤を制作したカヨデ・サミュエルに注目するきっかけともなりました。

エコスター盤のライナーによれば、ジミ・ソランケは俳優・教育者・詩人・作曲家・歌手という、
多彩な才能の持ち主だったとのこと。
ジミがナイジェリアで有名になったのは、60年代初めに
子供向けテレビ番組「ストーリーランド」へ出演したのがきっかけだったそうです。
ギターを弾きながら物語を語るキャラクターとして、子供に大人気だったとか。

一方、ロイ・シカゴに数多くの曲を提供したり、自己のバンド、ユンカーズを結成し、
アメリカのロックンロールやソウルの影響を受けた音楽をやっていたのでした。
ユンカーズはチャック・ベリーやローリング・ストーンズのカヴァーも得意としていて、
チャビー・チェッカーが66年にナイジェリアを訪れた際には、一緒にツアーもしています。

さて、このエコスター盤ですが、77・79・86年の3作からカヨデが選曲・編集しており、
79年の“Eje Ka Jo”再演ヴァージョンなども選曲されています。
いちばんの聴きものは、オールドタイミーなジュジュやさらに古いアギディボのような曲など、
フォーキーな感覚のヨルバの古謡を歌った、86年作のトラック。

セネガルのバオバブやコンゴのケケレなど、アフリカ音楽の懐古ブームは90年代に入ってからで、
86年という早い時期に、ナイジェリアでこんなノスタルジックなサウンドをやっていた人がいた
とは意外でした。ブーガルーなサウンドから一転、ヨルバのルーツへ先祖帰りしたきっかけは
なんだっただろうと思ったら、ライナーを読んでピンときました。

ジミは76年にニュー・ヨークへ渡り、ラルフ・マクドナルドの78年作“THE PATH”に参加したんだそうです。Ralph MacDonald.JPGニュー・ヨークのスタジオ・ミュージシャンとして活躍していたパーカッショニストのラルフ・マクドナルドが、当時のアレックス・ヘイリーの「ルーツ」ブームにあやかり、自身のルーツを辿った意欲作です。ラルフのお父さんが、かのカリプソニアン、マクベス・ザ・グレートであることは有名ですね。あわててレコード棚から“THE PATH”を引っ張り出してみると、1曲目の組曲でヨルバ語のチャント・ヴォーカルを担当していたのがジミでした。ラルフ・マクドナルドは79年のアポロ劇場リニューアル・オープン時に“THE PATH”コンサートを開き、ジミもヨルバ・チャントを披露したそうです。おそらくジミのルーツ回帰は、この“THE PATH”に感化されたんじゃないでしょうか。

それにしても、ラルフ・マクドナルドとジミ・ソランケという、
なんの共通点もなさそうな二人に、こんなつながりがあったとは意外でした。
こういうミュージシャンの相関図を読み解く面白さも、音楽を聴く醍醐味のひとつですね。

惜しむらくは、こんなジミのユニークな個性をすくい上げた良盤なのに、
話題にならないどころか、日本未入荷のままに終わってしまったことです。
エコスター・レーベルは流通がひどく悪くて、ロンドンのレーベルだというのに、
ロンドンお膝元のスターンズにも置いてなかったくらい。
07年にリリースされたファタイ・ローリング・ダラーの“PAPA RISE AGAIN”も、
結局日本には入荷しませんでした。
スペインのバンピソウルからフレッド・フィッシャーをリリースしたのは、
エコスターでのレーベル制作を諦めたからなのかもしれません。

[CD] Jimi Solanke "STORYTELLER : HIGHLIFE, SOUL & ROCK ‘N’ ROLL" EkoStar EKOCD006 (2003)
[LP] Ralph MacDonald "THE PATH" Marlin 2210 (1978)
コメント(2) 

コメント 2

kuriyan

はじめまして。
ウィークエンドサンシャイン放送でジミ・ソランケノのエジェ・カ・ジョにノケぞったひとりです(^.^; 。MONEY NO BE SANDはどうにか見つけたのですが、ジミ・ソランケノのエコスター盤はなかなか見つかりません(泣)。エコスター盤はチャーリー・ギレットやデーモン・アルバーンもお気に入りのCDみたいです。

エジェ・カ・ジョはやはり再演ヴァージョンがあるのですね!
すっきりしました。ありがとうございました。
by kuriyan (2009-07-15 11:39) 

bunboni

Weekend Sunshine お聞きくださり、ありがとうございます。
エコスター盤は、京都のMeditaionsに一度デッドストックが入ったことがあったとか。
再プレスしてくれないものですかねえ…。
by bunboni (2009-07-15 21:05) 

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