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ミックスが命 デヴィッド・T・ウォーカー [北アメリカ]

For All Time.jpg

デヴィッド・T・ウォーカーの新作の評判がよく、
ほんとぉ?などと疑りつつ試聴してみたら、1曲目の短いギター・ソロではやノックアウト。
70年代の頃に惚れ込んでいたデヴィッド・Tのギター・サウンドが蘇っていて、シビれました。

80年代に聴いた日本制作盤の録音のショボさににがっかりして、
その後のリーダー作も聴かずじまいだったので、
70年代のオード時代をホウフツとさせるこの新作には、嬉しくなりましたね。

このアルバムのキモは、1にも2にもミックスの良さにあります。
オブリガードで組み立てるソロが特徴のデヴィッドのギターは、
サウンド・メイキング次第で生きもするし、殺されもしてしまいます。
奥行きを持たせたサウンドに、ギターがしっくりとブレンドされていて、理想的なミックスです。
生のストリングスにハープも使った贅沢なレコーディングをしていながら、
あえてストリングスを後ろに引っ込ませ、抑え目にしたのも大正解。
タッチの強弱によるニュアンスが命といえる、デヴィッドのギターの魅力を、
最大限に引き出したミックスとなりました。

デヴィッドのギターは<歌う>というより、
<言葉をしゃべっている>ニュアンスに近いものがあります。
ハンマリング・オンとプリング・オフを繰り返すタッチは、ある意味饒舌ともいえながら、
無駄な音をいっさい出さないところが、この人のスゴイところ。
メジャー・セブンスやマイナー・ナインスのスケールによるメロウなフレイジングに、
うっかりするとゆったりと弾いているように聞こえますが、
切り込んでくるスピード感は、スリリングそのものです。

この新作であらためて感心したのは、デヴィッドのギターが、
70年代のオード時代よりうまくなっていること。
デヴィッドって、きっと練習の鬼に違いありませんね。
左手のフィンガリングと右手のピッキングのバランスを、これほどきっちり保てるのは、
日頃の鍛錬がなければとてもできないはずです。
オブリガードで聞かせるタイプのギタリストは、
ヴェテランになるほど手癖で弾くようになりがちですけど、
デヴィッドのフレージングにクリシェがないのには、感心させられます。
それどころか、今作ではデヴィッドには珍しくディストージョンを使ったりして、
その姿勢はあくまでもチャレンジング。

デヴィッドがこれほど現役感たっぷりに今も音楽に取り組んでいるのなら、
一昨年、昨年と行われたマリーナ・ショウ の“WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?”
リユニオン・ツアーも観に行けばよかったと、少し後悔してしまいました。
懐古的な企画にはすぐ背を向けてしまう性分なので、けっこう損をしてるかもなあ。
ゲストにマリーナ・ショウを迎えた新作を聴きながら、ちょっとそんなことも思ってしまいました。

David T. Walker 『FOR ALL TIME』 DCT XQJS1002 (2010)
コメント(4) 

コメント 4

ZawaJawa

後ろ向き?ベクトルの時だと登場(笑い)です。
僕ですら?ほとんど忘れているような米国メインストリーム音楽業界ですが、近年ポツポツとアメリカから丁寧な仕事振りを感じるCDが(リイッシューも含めて)出てきましたね。CDとが商売的にはニッチな物の領域に入った事を表しているからなのでしょうね。
David T.良い顔だ!
by ZawaJawa (2011-01-11 13:35) 

bunboni

CDマーケットの急激な縮小はすでにデータが証明していて、
業界全体がニッチとなったことは、もはや誰も否定しようがありませんね。
もっとも業界の人間でないぼくのような人間にとっては、
「だから、何?」としかいいようがないんですが。

ぼくは50年近く音楽を聴き続けてきた、いわばいい「お客さま」だったと思うんですが、
業界が送り出してくるメインストリームの音楽は、
ぼくをちっとも楽しませてくれず、常にニッチな音楽に心を動かされてきました。
これって、どういうことなのか、とずいぶん思い悩みもしましたけど、
その答えが今出ているんじゃないかとも思ってます。
by bunboni (2011-01-11 21:25) 

ZawaJawa

そうですね、「マイナーだから好き」だけには陥りたくなかったよね。

by ZawaJawa (2011-01-11 22:18) 

bunboni

だいたい「マイナー好き」が自慢になるってのが、ぜんぜんわかんなかったよね。メインストリームの良さがわからないコンプレックスの方が強すぎて。

パンク~ニュー・ウェイヴが出てきてくれたおかげで、やっと「ロックなんかキライ」と大手を振って言えるようになったけど、それまでは、なんとか自分でもわかるロックを見つけては、「ロックも聴いてます」みたいなフリをするのが正直シンドかったよ、ほんとに。
by bunboni (2011-01-11 23:30) 

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