イラン近代化の時代に ルーアンギス [西アジア]
先月エグバール・アーザルとターヘルザーデの話題を取り上げたばかりですけど、
またしてもイラン古典声楽の深淵に触れることのできる、とびきりの1枚に出会えました。
それがこのルーアンギス(と読むのでしょうか。どなたか教えてください)。
今回初めて知った名前で、どういう人かとあわてて調べてみると、
1904年、歴史と文学の古都シラーズに生まれ、1928年にプロ・デビューして、
イランを代表する女性歌手として活躍した人だそうです。
2005年にカルテックスから“PERSIAN TRADITIONAL MUSIC” シリーズの1枚として
リリースされていたようなんですが、こんなシリーズが出てたとは気付きませんでしたねー。
同時代のイランの名女性歌手カマール・オル=モルーク・ヴァジリの2タイトルと
レザー=ゴリ・ミルザ・ザリも出ていますが、レザー=ゴリはイラン・マーフール盤とダブり曲が多く、
ぼくはルーアンギスが一番のお気に入り盤となりました。
解説皆無で曲数表示も違っているというのは困りものですが、
1曲目のヴァイオリンを伴奏に歌う華やかなタハリールに、いきなりノックアウトをくらいました。
ルーアンギスのタハリールの技巧も見事なら、
歌に寄り添うヴァイオリンのなまなましいプレイがまたすごい。
歌手の息づかいまでも模写するかのようなフレージング、
その繊細なプレイからダイナミックに変貌する演奏ぶりに、ほれぼれとしてしまいました。
たいへんな名手であることは確かですが、この演奏家、いったい誰なんでしょうか。
ほかにもタール伴奏のアーヴァーズでタハリールを披露する曲もあり、
ルーアンギスの実力は明らかですが、
彼女の専門はタスニーフ(歌曲)だったらしく、このアルバムも大半がタスニーフで占められています。
曲によってはコーラスも伴ったオーケストラ伴奏がなんとも魅惑的で、
当時の古典音楽が西洋音楽の影響を排除していなかったことがうかがいしれます。
タスニーフのメロディーの美しさはまさに絶品で、古典音楽の堅苦しさはまったくありません。
この録音が行われた当時のイランは、西欧列強の従属から放たれ、
近代化へと向かおうとしていた時代。ダイナミックな時代のうねりが
古典音楽にも写し取られていたように感じるのは、まんざら深読みでもないでしょう。
Roohangiz "PERSIAN TRADITIONAL MUSIC VOL.4" Caltex 2598
2011-07-14 00:00
コメント(2)
8月に上京する際、グーグーシュに加え予約してあります Vol 1 カマール・オル=モルーク・ヴァジリが、
非常に楽しみなんです。
by ホシナ (2011-07-15 19:50)
音質がチト残念なんですけど、タハリールはたっぷり味わえますよ。
by bunboni (2011-07-15 22:05)