フランスで金を稼ぐには ママニ・ケイタ [西アフリカ]
マリのバマコに生まれたママニ・ケイタは、父親の顔を知らず、
13歳で母親と死別して母方の祖母のもとで育ち、
ナシオナル・バデマのコーラス・シンガーに雇われるチャンスを掴んで、歌手となった苦労人。
87年にサリフ・ケイタのバック・シンガーとしてパリへ渡るも、
学校教育を受けていないママニは、フランス語を話すことも読むこともできず、
パリでの生活は困窮を極めたといいます。
3作目となる新作のトップに置かれたアルバム・タイトル曲「フランスで金を稼ぐには」は、
ママニの実体験にもとづくアフリカ移民の苦労が込められています。
前作“YELEMA” 同様、マルチ楽器奏者でアレンジャーのニコラス・レパックとのコラボ作品で、
ジェリ・ムサ・クヤテ(ギター)、モリボ・コイタ(ンゴニ)などのアフリカ勢に、
フランス人ミュージシャンのリズム・セクションが加わる布陣もほぼ同じ。
前作では、ンゴニやバラフォンなどの生音に施したプログラミングが、
曲によってムリヤリな折衷を感じさせる部分もありましたけど、
この新作ではだいぶこなれて、すっきりとしたストレイトなロック・サウンドに仕上がっています。
サンプリングしたクレズマーのクラリネットや中国の胡弓と、
ンゴニやジェンベなどのアンサンブルを組み合わせた“Waleya” など、
豪快な仕上がりとなっていて、聴きごたえがあります。
それにしても、ケイタ姓という王族の系譜を持つママニが、本来タブーである歌手となり、
フランスで四半世紀を暮らすまでには、サリフ・ケイタとまた別の苦難の道があったはずで、
それがいかなるものだったかは、ぼくのような日本人にはとても想像がつきません。
シングル・マザーとなり、娘に菓子を買い与える2ユーロさえもないというほど
経済的に追い詰められたママニが、バンバラ語で歌う「フランスで金を稼ぐには」は、
気候も生活習慣も異なるフランスで暮らす、
多くのアフリカ系移民女性の胸に迫るものがあるはずです。
Mamani Keïta "GAGNER L’ARGENT FRANÇAIS" No Format! 6149542 (2011)
2011-09-04 00:00
コメント(0)
コメント 0