100点満点のバラード・アルバム レー・クエン [東南アジア]
レー・クエンの“KHÚC TÌNH XƯA” は、去年のヴェトナム旅行で見つけた最高の収穫でした。
ノスタルジック曲集として企画されたあのアルバムは現地でもかなりヒットしたらしく、
続編が企画され昨年末にリリースされたことを帰国後に知りました。
ヒットした企画作の続編で、正編のアルバム以上の出来を示したためしはないとはいえ、
これほどの傑作の続編、やはり聴いてみたいと思うのは人情ですよね。
で、聴いてみた“KHÚC TÌNH XƯA 2 : TRẢ LẠI THỠI CIAN” なんですが、
う~ん、残念。やっぱり二番煎じと言わざるをえない仕上がりに終わっていました。
作曲者が同じなのか、前作と似たメロディが出てくるのに加え、
レーがずいぶんとあっさりとした歌い方をしていて、前作ほど哀歓を強調していないんですね。
前作の歌い込みぶりにグッときていたぼくには、
このさっぱりとした歌い方はなんとも物足りませんでした。
ところが、ところが。今年5月になって出た新作の方が大傑作。
タメを利かせた歌い出しから、レーの歌の世界に引き擦り込まれます。
全曲すすり泣くような哀切のスロー・バラードばかり。
まさに涙を振り絞るような楽曲が圧巻のアルバムで、
さらに深みを増したレーの歌声が、奥行きのある感情表現を聞かせます。
本作はレーの学生時代の思い出の曲を集めたアルバムで、
90年代後半のヴェトナムでヒットし、スタンダードとなった曲が並べられているのだそうです。
日本人のぼくには初めて聴く曲ばかりですけど、すでに数多くの歌手がカヴァーし、
それぞれの曲ごとに定評となっている歌手のイメージも定着しているだけに、
それを凌ぐ仕上がりとするべく、いつも以上に力が入ったってことなんでしょうね。
レーの歌いぶりには気迫すらおぼえます。
ヴェトナムのミュージック・サイトをみると、音楽ジャンルが細かく分類されていて、
レー・クエンのこれらのアルバムは、Nhac Trữ Tình もしくはTrữ Tình と書かれています。
抒情歌謡という意味のようで、そのものずばりなわけですけれど、同じ情歌を歌う歌手でも、
ハ・ヴィのような天賦の才は、正直言ってレーにはありません。
少しハスキーな湿り気と重みのある独特の声質を巧みに活かしながら、
情感細やかに歌い込むスタイルを作ってきた、努力型のシンガーのように思えます。
プロダクションも前2作以上にきめ細かく作りこまれていて、
レーの狂おしいほどの情感と切実さを見事に盛り上げています。
一弦琴、胡弓、琴などはいっさい登場しないので、ヴェトナム民俗色はまったくありませんが、
歌・演奏・楽曲三拍子揃った100点満点のバラード・アルバムと、太鼓判を押しましょう。
Lệ Quyên "KHÚC TÌNH XƯA" Viettan Studio no number (2010)
Lệ Quyên "KHÚC TÌNH XƯA 2 : TRẢ LẠI THỠI CIAN" Viettan Studio no number (2011)
Lệ Quyên "TÌNH KHÚC YÊU THƯƠNG" Viettan Studio no number (2012)
2012-08-21 00:00
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