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ノット・アフロビート、イッツ・ハイライフ・ジャズ エボ・テイラー [西アフリカ]

Ebo Taylor 1978.JPG

カムバック後のガーナのエボ・テイラー人気熱、衰えることがありませんねぇ。
10年の復帰第1作“LOVE AND DEATH” に続き、
12年には“APPIA KWA BRIDGE” をリリース。
日本にも2度来日し、11年の初来日では出演予定のフェスティバルが台風の影響で中止となり、
急遽都内でライヴをやったんだとか。後で知って、悔しいったらありゃしない。観たかったなあ。

そして全盛期時代のリイシューも活発です。
70年代録音を選りすぐったイギリス、ストラット盤の“LIFE STORIES” が好選曲で、
エボの多面的な才能を見事にあぶりだした決定盤となっていましたけれど、
今度はオリジナル・ガーナ盤のストレイト・リイシューが始まりました。
日本が先んじて77年作の“TWER NYAME” を復刻したのにも驚きましたが、
ぼくが嬉しかったのは、イギリスのミスター・ボンゴが復刻した78年作の“EBO TAYLOR” です。

このアルバムには、エボ再評価のキッカケとなった“Heaven” が入っています。
イギリス、サウンドウェイのコンピレーション“GHANA SOUNDZ” に選曲され、
世界中のアフリカ音楽ファンの間で評判となってちょうど十年、
ついにオリジナル盤が復刻されるとは、感慨深いものがあります。

このアルバムを聴けば、“Heaven” が異色のトラックであることがよくわかると思います。
エボはアフロビート再評価の流れから、脚光を浴びるようになりましたが、
本作を通して聴けばわかるとおり、エボがやっているのはアフロビートではなく、ハイライフです。
それもかなりジャズ色の濃い、ハイライフ・ジャズですね。

エボはブロードウェイ・ダンス・バンド在籍時代にジャズへ傾倒し、
チャーリー・クリスチャン、ケニー・バレル、タル・ファーロウをずいぶんコピーしたそうです。
ブロードウェイ・ダンス・バンドはホーン・セクション主体のダンス・バンドだったため、
ジャズ・ギターが活躍できる場面はなく、ソロ活動に転じてからハイライフ・ジャズを追求し、
“EBO TAYLOR” でそのスタイルの完成をみたといえます。
正統的ともいえるエボのジャズ・ギターが随所にフィーチャーされ、
ケニー・バレルばりのギター・ソロもたっぷりと聴くことができます。

ところが、ゆいいつアフロビートをやった異色の“Heaven” が
“GHANA SOUNDZ” に取り上げられて評判となり、
欧米で無名のエボ・テイラーは、アフロビートの音楽家と誤解されるようになってしまいました。
世界的人気のR&Bシンガーのアッシャーが“Heaven” をサンプルするなんてオマケまでつき、
ますますエボの音楽性は曲解されるようになった感じがします。

“GHANA SOUNDZ” に限らず、
キラー・チューンばかり集めたDJセンスのコンピレだけしか聴かずにいると、
選曲された音楽家の音楽性を、ともすると誤解することにつながりかねません。
エボの“Heaven” がまさにその典型例ってわけです。
そういうコンピレじたいを否定するつもりはありませんけれど、
それぞれのミュージシャンのアルバムを追って聴くことが大切だ思うんですよね。

音楽家の音楽性や歴史的な背景などをまったく考慮に入れないというか、
そんな知識をそもそも持ち合わせていないDJが、カッコイイ曲だけ集めたようなコンピレを聴いて、
その音楽家や音楽をワカったつもりになるのは、危ないよってことです。
もっとも、カッコイイ曲だけ聴ければいいんで、
音楽家を知る興味なんてハナからないよって人には、詮無い話ですけれども。

今回復刻された“EBO TAYLOR” を聴いて、
フェラがクーラ・ロビトス時代にやっていたハイライフ・ジャズの方向性を、
ガーナで追求していたのがエボ・テイラーだったんだってことを、ぜひ知ってほしいと思います。

Ebo Taylor "EBO TAYLOR" Mr Bongo MRBCD108 (1978)
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