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誠実さ滲むひそやかな声 王菀之 [東アジア]

王菀之  晴歌集.jpg

あらら、タミーに続いて、これまたウィスパー・ヴォーカルの秀作がまた1枚。
香港のシンガー・ソングライターという、王菀之(イヴァナ・ウォン)の新作です。
初めて知った人ですが、これは昨年のヴェトナムのヒエン・トゥックの
チン・コン・ソン・ソングブックに匹敵する傑作じゃないでしょうかね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23
一聴、そのひそやかな声にトロけました。

内容は、香港のトップ・アーティストたちのヒット・ナンバーのカヴァー集だそうで、
黎明(レオン・ライ)の「如果這是情」、張學友(ジャッキー・チュン)の「妳的名字我的姓氏」、
鄭秀文(サミー・チェン)の「Chotto等等」(原曲は大黒摩季の「チョット」)、
張敬軒(ヒンズ・チャン)の「迷失表參道」などがカヴァーされているそうです。
香港のヒット・チャートに興味のないぼくには猫に小判ですが、
テレサ・テンの「但願人長久」のカヴァーには、おぉ!と前のめりになりました。

耳元でささやかれているような、ウィスパー・ヴォイスに心が揺れます。
その息遣いから、心優しさが伝わってくるようじゃないですか。
甘さに流れない透明感のある声は、ひんやりとした街の空気に漂っていくよう。
プロダクションも丁寧に作りこまれていて、
表情の異なる楽曲にそれぞれふさわしいアレンジを施し、
繊細さばかりでなく、ドラマティックだったり躍動的な面も聞かせます。

じっくりと聴けば、この人の歌声には強くぶれない芯があることに気付かされます。
ダイナミクスのある振れ幅の大きな楽想の曲も、
ウィスパー・ヴォイスのまま揺るがずに歌えるのは、実は腹式呼吸をしているからで、
口先で軽く歌っていると思いきや、意外な逞しさがその歌声には秘められているのでした。
イヴァナ・ウォンは、歌をドラマに変えられるスケールの大きなシンガーといえますね。

DVDにはCD収録の3曲が入っていて、「哥歌」が本格的なドラマになっていると思ったら、
イヴァナ自身が出演したテレビ・ドラマ「老表, 你好嘢!」の挿入歌とのこと。
ヴィデオを観ると、イヴァナは香港に暮らす普通の女の子といった風情で、
ぜんぜん美人じゃないところに親しみをおぼえました。
誠実さが滲む声は、この人そのままの人柄なのかもしれません。

[CD+DVD] 王菀之 「晴歌集」 East Asia Music EACD778 (2013)
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