ジャズを進化させるドラマー オーティス・ブラウン三世 [北アメリカ]
中古レコードを見るかのような趣きのあるジャケットにピンときて、
試聴してみたら、おぉ、いいじゃな~い。
ドン・ウォズが社長になってからのブルーノート、イキオイがありますねえ。
早速買っていくかと思って、トレイを裏返してみたらEU盤。あちゃあ。
仕方なくおうちに帰って、オリジナルのアメリカ盤欲しさに、アマゾンへポチり。
本作は、エスペランサ・スポルディング、ソーミ、ジョー・ロヴァーノ、テレンス・ブランチャード、
オリヴァー・レイクなどのサイドメンを務めてきたというドラマーのデビュー作。
プロデュースを、本人とデリック・ホッジがやっていて、ピアノにロバート・グラスパーが参加してます。
というと、最近なにかと話題のサウンドかと思われそうですけど、
装いはオーセンティックなハード・バップ・スタイル。
とはいえ、ハード・バップを懐古するような、後ろ向きな内容ではまったくありません。
ヒップ・ホップ通過後のセンスを十二分に発揮したリズム処理や、
ナレーションを入れたミックステープのようなトラックなど、若手らしい現代性が刻み込まれています。
さりげないリズム・チェンジなどに、グラスパー一派に共通するソツのなさを感じ、
その余裕シャクシャクぶりが癪に障りもするんですけど、
まあ、これがイマドキの熱狂しないジャズの作法なのかも。
ビラル、グレッチェン・パーラト、ニッキー・ロスといった
個性派シンガーたちをフィーチャーしたところも聴きどころ。
なかでも、グレッチェン・パーラトの不思議ちゃんヴォーカルは、存在感が圧倒的っす。
ヒップ・ホップで育ったジャズ・ドラマーが、ゴスペルなどのルーツも示しつつ、
これまで吸収してきた音楽性を素直に表わした作品。
全編を通してすがすがしいプレイが、胸をすきます。
ドラマーによって進化を遂げている今のジャズ・シーンのなかでは、
オーソドックスなタイプともいえるオーティス・ブラウン三世ですけれど、
アイディア豊かなサウンド・センスに、その高い才能が示されています。
Otis Brown Ⅲ "THE THOUGHT OF YOU" Blue Note B002100202 (2014)
2014-10-14 00:00
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