知られざる南ア・ジャズ ジャブ・ンコーシ [南部アフリカ]
年末にCD棚を整理していたら、南ア・ジャズのジャブ・ンコーシの97年作が目に留まって、
また取り出しては性懲りもなく聴き入っています。
これ、『ポップ・アフリカ800』にも入れてあげられなかったんだよなあ(シクシク)。
このCD、『ポップ・アフリカ700』の時も候補に挙げたんですけど、
ページの構成上、うまくはめこめる場所がなくて、結局入れるのを断念したんですね。
件のディスク・ガイドは、国やジャンルがページをまたいで横断しないように構成したので、
4枚単位でCDを並べる必要がありました。
そのため、うまく4枚に収まりきらないCDは入れることができなかったんです。
『ポップ・アフリカ800』でリヴェンジを試みたんだけど、
またしても、うまく押し込める所が見つからなかったんでした(泣)。
素晴らしい写真をたくさん提供してくださった写真家の石田昌隆さんが、
「荻原さんはひとりでアフリカ音楽を800枚紹介しているけど、
実は膨大な数の盤をボツにして、厳選した800枚なのだ」と
フェイスブックで書かれたように、泣く泣くボツにしたCDは、
このジャブ・ンコーシに限らず山ほどあって、
いつまでもそうしたCDのことが、心に引っかかってしまいます。
ジャブ・ンコーシの97年作は、日本で紹介されたことがなく、
おそらく日本で知る人も皆無だろうから、ぜひ取り上げたかったんですけどねえ。
21世紀に入り、南ア・ジャズに限らず、南ア音楽全般がグローバライズされ、
従来の南ア音楽の伝統や遺産と切り離された音楽にどんどん変容していくなかで、
本作は、南ア音楽が南ア音楽らしかった、
最後の時代の作品と位置づけられるようにぼくには思えます。
あ、紹介が遅れましたけれど、
ジャブ・ンコーシは、マラービから出発してサックス・ジャイヴの基礎を作った、
南ア音楽史に名を残すサックス奏者ザックス・ンコーシの長男のピアニスト。
本作は父ザックス・ンコーシのトリビュート集で、タイトルの「ブラ」は、ザックスの愛称です。
ジャブのキーボードに、サックス3(うち一人はフルート兼)、ギター、ベース、ドラムスの7人編成で、
ザックスの曲にジャブの自作曲を交えて演奏しています。
収められたどの曲のテーマも雄大なメロディを持っていて、
こういうメロディは南アからしか生まれないことは、古くからの南ア音楽ファンならわかるはず。
といってもそんなファンの存在は、いまや風前の灯で、一般にはとても伝わらない話。
だからこそこういうCDを広く聴いてもらいたいところなんですけれども。
南アらしさをもっとも強く印象づける3管のソリに、
マラービの伝統がしっかりと息づいているのが聴き取れます。
うわっつらのポップで聴きやすいサウンドやフュージョン風の演奏に、
ただ心地よく聴き過ごしてしまう人は多いと思いますが、
南ア・ジャズやサックス・ジャイヴをよく知る人なら、ほほぅと相好を崩すはずです。
テナー・サックスやアルト・サックスのソロ・プレイも、聴き応え満点ですしね。
こういう従来の南ア音楽の遺産を聴くチャンスがなく、
ポスト・アパルヘイト世代による欧米のトレンドとリンクしたミュージシャンや、
ヒップ・ホップやパンク、オルタナ系の最近の南ア音楽しか知らないファンは、
かつての南ア音楽が持っていた良さをまったく理解していない人が多くて、
その断絶の大きさに、暗然とした気分になることもしばしばです。
Jabu Nkosi’s City Jazz 7 "REMEMBERING BRA ZACK" Gallo CDGMP40718 (1997)
2015-01-04 00:00
コメント(0)
コメント 0