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カメルーンのアフロ・ファンカー タラ・アンドレ・マリー [中部アフリカ]

Tala A.M..jpg

オーストリアのPMGによる70年代アフロ・ソウル/ディスコのリイシューLP/CD化が、
怒涛のイキオイで進んでいますね。
DJユースのマニア向けのラインナップなので、
フツーのアフリカ音楽ファンは、無視してオッケーと言いたいところなんですが、
ファンキー・ハイライフ名盤のパット・トーマスとエボ・テイラーの共演作や、
ガンビアのゲレワルなんてホンモノの名盤が紛れ込んでたりするから、油断なりません。

マヌ・ディバンゴやソリ・バンバをストレート・リイシューしている、
パリとロンドンに拠点を置くアフリカ・セヴンも、
一部マニア向けの嗜好が強く、どうもうさん臭いレーベルですね。
このレーベルに不信感を抱いたのは、
マヌ・ディバンゴの代表作“AFROVISION” のリイシューがきっかけでした。

このマヌの大傑作、日本ではとっくの昔にボンバがCD化しましたけど、
海外でのCD化はこれが初。
ボンバ盤はすでに廃盤となって久しく、アフリカ・セヴンから原盤提供された
クレオール・ストリーム・ミュージックが紙ジャケCD化して、
日本盤としても発売されたんですが、これが許しがたいシロモノだったんです。

クレオール・ストリーム・ミュージックのふれこみが、
「2014年最新デジタル・リマスター音源を使用。
「Big Blow」は貴重なロング・バージョンを収録。
アルバム・バージョンより2分ほど長いミックスになっている」というので、
“Big Blow” にロング・ヴァージョンがあるのか!と期待して聴いたら、
これがトンデモなミックス。

曲の一部をカット・アンド・ペーストして、水増ししただけの編集で、
しかもそのエディットの稚拙なことといったら、シロウトのDJがやったようなお粗末さ。
演奏の途中で音質ががらりと変わる、フンパンもののミックスなんですね、これが。
かの名演に、いったい何してくれたんだよと、頭に血が上りました。

前フリが長くなりすぎましたけれど、
そんなわけで、PMG同様アフリカ・セヴンも無視していたもので、
まさかタラ・アンドレ・マリーのこんな好編集盤が出てたとは、気付きませんでした。

タラ・アンドレ・マリーは、70年代のアフリカで、
最高にクールなアフロ・ファンク聞かせた、カメルーンの盲目シンガー。
70年代初めのデビュー時はフォーク・ロックのような音楽性だったのが、
70年代半ば頃から、ファンクへがらりとスタイルを変え、
80年代以降はカメルーンのフォークロアをファンク化して、
ベンド・スキンと称するスタイルを作り出した人です。

タラを有名にしたのが、初ヒットとなった73年の“Hot Koki”。
74年にアフリカにやってきたジェームズ・ブラウンが聴いて気に入り、
“Hustle!!! (Dead On It)” のタイトルで自作曲として発表したおかげで、
曲を盗まれたタラの名は、一躍アフリカ中に広まったのでした。
4年にわたる法廷闘争の結果、ジェームズ・ブラウンは盗作を認め、
タラに賠償金を支払っています。

今回、アフリカ・セヴンがコンパイルした編集盤も、
“Hot Koki” を皮切りに、73年から78年までのアルバムから選曲しています。
この時期は、タラはアフロ・ファンカーとして、もっともヒップなファンクを聞かせていた時期。
選曲も申し分なく、クールネスなタラのファンクの魅力を余すことなく伝えています。
なお、サブ・タイトルに「75年から78年」とあるのは誤りで、
デビュー作“HOT KOKI” のリリース年を75年と誤認したらしく、正しくは73年です。
さらに、アルバムの最後で72年のデビュー・シングル曲を選曲しているので、
正確には「72年から78年」ですね。

これまでタラの編集CDでは、レトロアフリックが09年に出していますが、
72年のデビュー・シングルから98年録音までを、アトランダムに並べた曲順が難でした。
前にも説明した通り、タラは時代によってがらっと音楽性を変えたミュージシャンなので、
その変遷を理解できるような曲順にすべきだったのに、
冒頭に90年代に完成させた自己のスタイルをタイトルとした92年の曲から始め、
次いで先ほどの73年の“Hot Koki” (レトロアフリックは74年と誤記)を置くのは、
なんとも座りが悪いものでした。せっかくの内容も、曲順が台無しにしていて、
拙著『ポップ・アフリカ800』に選ばなかったのも、そういう理由からです。

今回は70年代のファンク期にスポットをあてることで、
希代のアフロ・ファンカーの魅力を、くっきりと打ち出すことに成功しています。
さらに、そうしたファンク・チューンをずらりと並べたあと、
最後に72年のデビュー・シングル曲“Mwouop” で締めくくったのは、粋な計らいです。

タラのデビューに力を貸した、同郷のマヌ・ディバンゴがマリンバで参加した
爽やかなポップ曲で、フォーク・ロック期のタラの名曲です。
前のレトロアフリック盤でも収録されていましたが、
アルバム・ラストにそっと添えたという曲順が実に効果的で、
編集盤での曲順の大事さが、如実に示されたといえますね。

“Mwouop” を選曲するとは、コンパイラーのジョン・ブライアンという人、
タラの魅力をよくわかってますね。グッド・ジョブです。

Tala A.M. (Tala André Marie) "AFRICAN FUNK EXPERIMENTALS 1975-1978" Africa Seven ASVN018CD
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