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マリの平和を願って イドリッサ・スマオロ [西アフリカ]

Idrissa Soumaoro  DIRE.jpg

シュペール・ビトンやソロマン・ドゥンビアなどのリイシューから
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-11-26
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2023-03-07
新人のサヘル・ルーツのデビュー作までリリースしてきた、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-10-12
セグーに拠点を置くマンデ・ポップの新進レーベル、ミエルバから、
元アンバサドゥールのイドリッサ・スマオロの13年ぶりの新作が出ました。

13年ぶりといっても、本作は今から11年も前の12年にバマコで録音されたもの。
アマドゥ&マリアムの元プロデューサー兼マネージャー、
マルク=アントワーヌ “マルコ” モローのプロデュースでレコーディングされたものの、
マルコの突然の急逝で制作が頓挫してしまったのでした。

長い中断を経て、アマドゥ&マリアム・バンドのリズム・セクションを担った
イヴォ・アバディ(ドラムス)とヤオ・デンベレ(ベース、キーボード)が
新たに結成したアフロ・エレクトロ・ファンク・コレクティヴ、
クライマックス・オーケストラがアディショナル・レコーディングを行い、ついに完成。
ミックスとプロデュースもクライマックス・オーケストラが手がけています。

クライマックス・オーケストラと聞いて、ギンギラのエレクトロになったかと
心配する向きもありましょうが、大丈夫。エレクトロは完全封印。
スマオロの音楽にきちんと寄り添っていて、
ヤオ・デンベレのオルガンなど、とてもいいサポートをしています。
前作ではスマオロの音楽性の豊かさや、
コンポーザーとしての才能に目を見張りましたが、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-08-30
今作はドンソ・ンゴニをベースとして、バンバラ色の強い仕上がり。
そこに、ラテンが香るいにしえのルンバ・コンゴレーズや北米ブルースなど、
スマオロらしいカラフルな音楽性が加わっています。

なによりスマオロの深みのある歌声が、いいじゃないですか。
力の抜けた自然体な歌いっぷりは、
ヴェーリャ・グァルダ級のサンビスタをホウフツさせます。
伸びやかな歌声や、語りかけるよう歌い口は、熟成の味わいそのものです。

タイトルのディレとは、トンブクトゥ州のニジェール川左岸にある町で、
スマオロがバマコの国立芸術学院を卒業後、
一般教育学研究所の音楽教師となって、赴任した場所だったそうです。
この地でスマオロは妻と出会い、長女が生まれるなど、たくさんの良い思い出を残しました。
美しいディレの街の記憶を呼び覚ますことは、困難な時期にある現在のマリにおいて、
平和への希望と人々の幸福を願う、スマオロからのメッセージになっているのですね。

ラスト・トラックで、アマドゥ&マリアムで知られる盲目のギタリスト、
アマドゥ・バガヨコが参加。
スマオロとアマドゥ・バガヨコは、アンバサドゥール時代のメンバー仲間で、
スマオロが80年代初めに視覚障碍者のバンドを結成し、
84年に英バーミンガム大学への奨学金を得て点字音楽学を学んだのも、
アマドゥ・バガヨコとの出会いが大きかったようです。
アマドゥのギターが入ると、キリッとしたバンバラ・ブルース・ロックに仕上がって、
聴きごたえがぐっと増しますねえ。

Idrissa Soumaoro "DIRÉ" Mieruba MRB-ML02-019 (2023)
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