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ヴェテランがクロスオーヴァーを始めた77年 アート・ファーマー [北アメリカ]

Art Farmer  CRAWL SPACE.jpg

ふと思い出して聴き返したらハマってしまい、ここ最近ヘヴィロテになってる
アート・ファーマーの77年CTI盤 “CRAWL SPACE”。

アート・ファーマーがフリューゲルホーンに専念して、
バラードのお手本のような優美にして極上なアルバム2作を、
イースト・ウィンドから出した直後だっただけに、
本作のがらりと変わったクロスオーヴァー・サウンドには、驚かされました。

Art Farmer  YESTERDAY'S THOUGHTS.jpg

日本が制作したイースト・ウィンドの2作、
特に76年に出た『イエスタデイズ・ソウツ』には、シビれましたねえ。
これぞジャズにおけるバラード表現の最高峰。
トランペットからフリューゲルホーンに持ち替えた時期のアートの作品で、
この楽器の代表作にも数えられると思います。

その続編として翌77年に出た『おもいでの夏』からまもなく
輸入盤店に並んだのが、 “CRAWL SPACE” でした。
あれはたしか大学1年の夏休みだったよなあ。
ぼくのなかで『おもいでの夏』の印象が薄いのは、
直後に聴いた “CRAWL SPACE” の衝撃がデカすぎたからでしょう。

ジャズのヴェテランもクロスオーヴァーを手がけるようになったのが、
ちょうどこの77年が境で、アート・ファーマーはその先駆けでした。
メンバーは、デイヴ・グルーシン(key)、エリック・ゲイル(g)、スティ-ヴ・ガッド(ds)、
ウィル・リー、ジョージ・ムラーツ(b)、ジェレミー・スタイグ(f)という最高のメンバー。
ジョージ・ムラーツは1曲のみの参加で、コントラバスを弾いてます。

クレジットにはありませんが、
このレコーディングの采配をふるったのはデイヴ・グルーシンで間違いないでしょう。
ちょうどこの前年にグルーシンの後押しで、
リー・リトナーやアール・クルーが相次いでデビュー作を出しましたが、
それらの作品とこのアルバムがだいぶ違った趣なのは、レーベルがCTIだからです。

他のCTI作品同様、ニュー・ジャージーのイングルウッド・クリフスにあった
ヴァン・ゲルダー・スタジオでレコーディングされていて、
エンジニアはもちろんルディ・ヴァン・ゲルダー。
グルーシン相棒のエンジニア、
フィル・シェアーやラリー・ローゼンの音作りとはまったく違って、
奥行きのあるレコーディング・ブースの鳴りが、
まさにヴァン・ゲルダー・サウンドになっているんです。

一番それを印象付けられるのが、ウィル・リーのベースで、
これほどファットなベース・サウンドは、当時ウィルが参加していた
ブレッカー・ブラザーズ・バンドでも聞けませんでした。
山下達郎の「Windy Lady」のワイルドなミックスと双璧かな。

ぼくが愛するレコードは、たいてい世間では相手にされていないので、
本作もジャズ名盤ガイドなんかには、決して載らない作品。
CDも日本盤はあるけど、本国アメリカでは出てないし。
ぼくにとってカッコいいアート・ファーマーといったら、ぜったいコレなんだけどね。

[LP] Art Farmer "CRAWL SPACE" CTI CTI7073 (1977)
Art Farmer 「YESTERDAY'S THOUGHTS」 イーストウィンド UCCJ4017 (1976)
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