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日本のクロスオーヴァーの立役者 渡辺貞夫、日野皓正 [日本]

渡辺貞夫 I’M OLD FASHIONED.jpg   渡辺貞夫 My Dear Life.jpg

ジャズのヴェテランがクロスオーヴァーを手がけるようになったのは77年と、
前回書きましたけれど、その象徴的なミュージシャンがナベサダ(渡辺貞夫)でした。

76年に、ハンク・ジョーンズ、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズと
『アイム・オールド・ファッション』というタイトルどおり、ビバップにまでさかのぼった
伝統回顧作を出して、その翌77年に出したのが、デイヴ・グルーシン、リー・リトナー、
チャック・レイニー、ハーヴィー・メイソンとのクロスオーヴァー作
『マイ・ディア・ライフ』だったんですよ。この振れ幅は大きかったよねえ。

76年といえば、前回も書いたリー・リトナーやアール・クルーのデビュー作や、
クルセイダーズの “THOSE SOUTHERN KNIGHTS” に夢中になっていた年。
あ、ジョージ・ベンソンの “BREEZIN'” も76年だっけか。
そういう下地のあった翌77年に、日本でもクロスオーヴァーが大爆発したわけで、
ナベサダがその旗振り役でした。

日野皓正 May Dance.jpg   日野皓正 City Connection.jpg

それには少し出遅れというか、時差があったのが日野皓正で、
77年にクロスオーヴァーではなく、最高にトガったジャズ作品『メイ・ダンス』を出して、
79年にバリバリのクロスオーヴァー作『シティ・コネクション』を出したんでした。
この二作の振れ幅の大きさは、ナベサダの二作と双璧。

『メイ・ダンス』は、トニー・ウィリアムズとロン・カーターという重鎮に、
新人ギタリストのジョン・スコフィールドを加えたカルテットで、
いまでもぼくはヒノテルの最高作はコレだと思っています。

それに対し、79年に出した『シティ・コネクション』は、
冬のサントリーホワイトCMにタイトル曲が起用されて、大ヒットしたんですよね。
クロスオーヴァーが日本で流行したのは、CMタイアップの影響が大きくて、
同じ年の夏にナベサダの「カリフォルニア・シャワー」が
資生堂ブラバスのCMで大ヒットしたのに味をしめたんでしょう。

いまとなってはナベサダの『カリフォルニア・シャワー』を聴き返すことはないですけど、
ヒノテルの『シティ・コネクション』は、冬の定番といってもいいくらい、
今も聴き続けています。ぜんぜん古くならないんですよね。
本作の魅力はヒノテルのトランペットではなく、アルバムが持つムード、
そのサウンドをクリエイトしたレオン・ペーダーヴィスのアレンジにありました。

オープニングから、流麗なストリングスが誘う
ラグジュアリーな都会の夜を演出するサウンドに酔えるんですよ。
ナナ・ヴァスコンセロスがヴォイスでクイーカの音色を模すパフォーマンスをして、
これがいい効果音となった映像的なサウンドで、サウンドトラックかのような仕上がりです。
レゲエのレの字もないこの曲名が「ヒノズ・レゲエ」なのは、失笑ものなんですが。
またヴォーカル曲をフィーチャーしているのも、このアルバムの良いところ。
ジャズがネオ・ソウルと接近しているいまこそ、再評価できるんじゃないかな。

あとこのアルバムで最高の聴きどころが、アンソニー・ジャクソンのベース。
アンソニーでしかあり得ない、シンコペーション使いや裏拍を使ったリズムのノリ、
経過音やテンション・ノートの独特な使い方がたっぷり聞けて、ゾクゾクします。
タイトル曲「シティ・コネクション」のベース・ワークなんて、
アンソニーの代表的名演だと思うぞ。

中古レコード店の100円コーナーの常連だったシティ・ポップが、
いまや壁に飾られるようになったのと同じく、
見下され続けてきたクロスオーヴァー/フュージョンも、返り咲く日がくるか?

渡辺貞夫 with The Great Jazz Trio 「I’M OLD FASHIONED」 イーストウィンド UCCJ4008 (1976)
渡辺貞夫 「MY DEAR LIFE」 フライング・ディスク VICJ61366 (1977)
日野晧正 「MAY DANCE」 フライング・ディスク VICJ77051 (1977)
日野晧正 「CITY CONNECTION」 フライング・ディスク VDP5010 (1979)
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