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ビルマ大衆歌謡の黄金時代 コー・アンジー [東南アジア]

Ko Aunt Gyi  A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (1).jpgKo Aunt Gyi  A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (2).jpgKo Aunt Gyi  A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (3).jpg

先月、井口さんが出来立てほやほやのウー・ティンの新作CDを持って、
ヤンゴンのご自宅まで届けに行った際に見つけてきたというCD3枚。
井口さん、お土産、ありがとうございます。

コー・アンジーという、初めて聞く名の男性歌手のアルバムで、
ベスト・アルバムが3タイトルも出ているほどなのだから、
相当有名な歌手なんだろうなということは、容易に想像がつきます。
井口さんによれば、23年に北部シャン高地のメイミョー(現在のピーウールウィン)に
生まれ、今年6月23日に94歳で亡くなったとのこと。

さっそく聴いてみると、50~60年代とおぼしき録音で、
これまでほとんど耳にすることができなかった、
ビルマ時代の大衆歌謡がたっぷり入っていて、大カンゲキ。
サイン・ワイン楽団が伴奏に付く古典歌謡と、
ラウンジーな大衆歌謡がごたまぜになっています。

録音時期にもバラツキがあり、3枚のアルバムに、
レパートリーも新旧録音もお構いなしに放り込んだといった編集ですね。
3枚それぞれ編集の意図があるようには思えませんけれど、
第1・3集は古典曲が多く、第2集は大衆歌謡中心のレパートリーになっています。
古典曲は8分を超す長尺のものが多く、なかには、伝統スタイルの伴奏と西洋風の伴奏が
交互にスイッチする、のちのミャンマータンズィンのような曲も聞けます。

コー・アンジーは、メジャー曲では、晴れ晴れと伸びやかな歌声を聞かせる一方、
哀愁味のある曲では、情のある歌い回しで聴き手を引きつけます。
やわらかで甘いバリトンの声は耳に心地よく、
日本にも50~60年代は、こういう声の男性歌手が多かったような気がしますねえ。

アコーディオン、クラリネット、オーボエをフィーチャーし、
マラカスとクラベスがラテン・ムードを醸し出すナンバーや、
オルガンにブラシのドラムスのコンボ編成によるスウィンギーなナンバーなどは、
同時代のマレイシアのP・ラムリーやサローマを思わせます。

一方、アコーディオン、ギター、ヴァイオリン伴奏のポルカや、
オーケストラ伴奏による映画挿入歌ふうの曲などは、
「軽音楽の夕べ」といった雰囲気(若い人、わかります?)濃厚で、
昭和の香りが漂ってくるようじゃないですか。
CDのインレイを見ると、ギター、テナー・ギター、三味線(!)、
ピアノ、アコーディオン、オルガンを弾いていて、マルチ奏者でもあったようですね。

第2集のバック・インレイに、
ギターとバンジョーを弾く白人2人と一緒に写っている写真があり、
同じ時のものとおぼしき映像がYoutubeに上がっています。
それによると、二人の名は、スティーヴ・アジスとウィリアム・クロウ・フォードだそうで、
コー・アンジーと共にビルマ語で歌っています。
3人の後ろには、膝の上に置いたバマー・ギターをスライドしているギタリストもいますね。

このあと、3人は「おお、スザンナ」をギター、バンジョー、パッタラーの伴奏で歌い、
続いてサイン・ワイン楽団が演奏するという共演風景も記録されています。
CDには収録されていませんが、どういう人たちだったんでしょう。

まだまだ未知のビルマ時代の大衆歌謡、
さらにさかのぼって、SP時代の録音も、ぜひ聴きたくなるじゃありませんか。
そんな好奇心を強烈にかきたてられた3枚でありました。

【追記】 2017.12.20
ウィキペディアに記述のある7曲がこのシリーズに収録されていることが確認できました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ant_Gyi
第1集M1“Yin Ta Ko Me”、M2“Aung Pinle”、M7“Turiya Lulin”、
M8“Turiya Lon May”、M9“Yangon Thu”、
第2集M3“Lu Gyun Lu Kaung”、第3集M1“Shwe Mingan”。

【追記】2019.2.19
コー・アンジーと白人2人が歌うYouTube の映像は、
61年アメリカ大使公邸の庭で撮影されたものだそうです。
後ろでバマー・ギターを弾いているのは、ウー・ティンだということが、
2019年2月17日付ニュー・ヨーク・タイムズの
ウー・ティン死亡記事に書かれていました。

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