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あっぱれ! キウイとパパイヤ、マンゴーズ [日本]

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ルイス・ゴンザーガのバイオーン、ラス・マイケルのナイヤビンギ、
オーガスタス・パブロのメロディカ・ダブをミックスし、
さらにそこへチンドンを紛れ込ませて、台湾と偽日本民謡を練りこみ、
東京・下町気分をふりかけた音楽をやってるバンドがあるって、知ってました?

そんなバンドが、生田恵子の「バイヨン踊り」(昭和26年)や
美空ひばりの「チャルメラそば屋」(昭和28年)をカヴァーしてるなんていったら、
ほら、ほら、聞いてみたくなりませんか。

これだけ通好みの選曲と、目イッパイ盛り込んだ音楽的アイディアを、
見事に肉体感あふれる演奏に仕上げたキウイとパパイヤ、マンゴーズ、あっぱれです。
ネーネーズの『IKAWŪ』以来の大傑作ですよ、これ。

いやー、痛快ですねえ。こんな若者たちがいるなんて、嬉しいじゃありませんか。
なんでもヴォーカルのキウイさんは、
神楽坂のお座敷で端唄や俗曲を歌ってる芸妓さんなんだそうですよ。
うまく歌おうなんていう気負いのまったくない、突き抜けた歌いぶりがすごくいい感じです。
「バイヨン踊り」のコケティッシュな表情なんて、カルメン・ミランダみたいじゃないですか!

その「バイヨン踊り」では、(カレー味)と称しタブラを加えてビートを引き締めたり、
ペルナンブーコの笛ピファノの響きを模すなど、思わずウナるアイディアがてんこ盛り。
バンジョーを使ってジャマイカ民謡やカリブ音楽の古層に迫るあたりも、感心させられました。
サウンド・コラージュの編集もセンスがよくって、うふふと楽しませてくれますよ。

しかもこのバンドのスゴさは、うわべのセンスの良さだけじゃありませんね。
「ビルマの竪琴」の水島上等兵のクライマックス・シーンをユーモアたっぷりにコラージュしたり、
日本統治時代の台湾を暗示したりと、太平洋戦争の日本のアジア侵略を明らかに意識しています。

こうした部分は、アメリカ文化にどっぷり漬かった戦後世代の音楽家たち、
たとえば細野晴臣や久保田麻琴などが、日本人のアイデンティティを模索するなかでも、
触れずに避けてきた<デリケートな場所>でした。

旧世代がタブーとしていたところにしっかりと対峙しながら、
イデオロギーの鎧を纏わず、巧みなユーモアで包み込みながら、
日本情緒を再創造したところは、あっぱれというほかありません。
イデオロギーの呪縛から解き放たれた世代の誕生に、喝采を贈りたいですね。

アメリカにはForro in the Darkなんて連中もいて、日本でも和製フォロー・バンドが花盛りですが、
確かな歴史観をバックグラウンドに持ったキウイとパパイヤ、マンゴーズの
ヒネリの効いたアイディアやウィットは、比類なき個性といえます。
バルセロナのミクスチャー系バンドにヒケをとらぬ、日本発のミクスチャー・バンド、要注目ですね!

キウイとパパイヤ、マンゴーズ 『TROPICAL JAPONESQUE』 まるゑゐ録製 KPM1 (2009)
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