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クラリネット選手権1等賞 ナフチュール・ブランドヴァイン [北アメリカ]

Naftule Brandwein.jpg

ルイス・アメリカーノ、アベル・フェレイラ、パウロ・モウラ、パウロ・セルジオ・サントス。
ショーロのクラリネット奏者をあれこれ聴いていたら、
今度はジャズのクラリネット奏者と聴き比べたくなり、
大好きなジョニー・ドッズやシドニー・ベシェ、バディ・デフランコなどを引っ張り出してきました。
そのうち、どのクラが1番?とばかりにマイ・フェバリット・クラ選手権みたいなことになってしまい、
カリプソのウォルター・エドワーズ、ビギンのアレクサンドル・ステリオにも手を伸ばしては、
う~ん、やっぱステリオ最高!などといいつつ、でも、もっとスゴいクラがいたはずなんだけど、
誰だっけ…と考えること1週間。なかなか思い出せずモヤモヤしてたんですが、
そうだ、クレズマーだ!とやっとひらめきました。

クレズマーのクラなら、ナフチュール・ブランドヴァインでしょう。
ラウンダー盤を取り出して聴いてみましたが、やっぱクラ選手権優勝者はこの人かも。
ぼくがナフチュール・ブランドヴァインと出会えたのは、90年代クレズマー再評価のおかげでした。
ドン・バイロン→ミッキー・カッツ→ナフチュール・ブランドヴァインという順でたどり着いたんですね。

ジャズのドン・バイロンが『ミッキー・カッツ作品集』を出したのが93年。
この作品が話題となって、翌94年にはミッキー・カッツの50年代録音のクレズマー編集盤
“SIMCHA TIME”がワールド・パシフィックからリリースされ、大評判となりました。
ぼくもミッキー・カッツのことを、ノヴェルティなお笑い芸人としか思っていなかったので、
こんなすばらしいクラリネット奏者だったことに驚愕。
その後中古盤屋さんで、カッツの50年代のキャピトル盤LP10枚、
まとめて千円で投売りされてるのを発見した時は、嬉しかったなあ。
クズ盤扱いされてたブツをごっそり持ち帰って、聞きまくったものでした。
その3年後、ナフチュール・ブランドヴァインの20年代全盛期録音を中心に編集した
ラウンダー盤が出たんです。

ナフチュールは1884年、現在のウクライナの生まれ。
帝政ロシアの圧制を逃れ、ポーランドからアメリカへと渡り、ニュー・ヨークへやってきます。
ユダヤ系のジャズ・バンドでジャズやブルースなどを吸収しながら、
当時人気を博していたイディッシュ歌劇のエイブ・シュワルツ楽団に抜擢されて名を上げ、
23年に自身のオーケストラを結成し、ソロ活動へ転じました。

22年から27年にかけてナフチュールは録音を残しますが、
その後は41年まで録音が途絶えてしまいます。
金が入れば呑んだくれ、ギャングとの関係も浅からずという、かなり素行の怪しい人物だったらしく、
姿を消さなきゃならない事情があったのかもしれません。

そんな表も裏もあるナフチュールの音楽性もまた複雑で、
ギリシャ、トルコの音楽やジプシー音楽のほかにブルース、ジャズも吸収していて、
それらの練り込まれたミクスチャーぶりが、その音楽からえもいわれぬコクとなって漂ってきます。
さらにナフチュールの華麗なテクニックとナマナマしいプレイは、20年代当時圧倒的だったはずで、
ベニー・グッドマンなんかも、ぜったい意識をしていたはずだと思いますね。

クラリネット選手権1等賞は、ナフチュール・ブランドヴァインに授与したいと思います。

Naftule Brandwein "KING OF THE KLEZMER CLARINET" Ronder CD1127
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