SSブログ

アフロビートの正統なる後継者 シェウン・クティ [西アフリカ]

Seun Kuti.JPG

この圧倒的なパワー。
あまたあるアフロビート・バンドとは格が違うぜと言わんばかりの
スケール感を見せつけてくれる、充実の最新作です。
カヴァー・アートが、フェラのジャケットを手がけたレミ・ガリオクウというのも嬉しいじゃないですか。

やっぱシェウン・クティこそ、アフロビートの正統なる後継者ですね。
それじゃフェミ・クティは?と訊かれそうですけど、フェミはヴォーカルが弱すぎます。
アフロビートというと、どうしてもあのサウンドにアイデンティティがあると捉えられがちですけれども、
フェラのヴォーカル表現があってこそのアフロビートでした。
だって、インストだったら、レベル・ミュージックたりえましたか?ってことでしょ。

アジテイトする攻撃性ばかりでなく、皮肉や嘲笑を交えつつ、
ときにはトリックスターのような両義性を持つ道化師として振る舞ったりと、
多元的なキャラクターを演じ分ける豊かさが、フェラの才能でした。
フェミにそんな役どころを演じる表現力はありませんね。
ビートを叩き込んでいくようなその歌いぶり、滑舌良くピジン・イングリッシュで韻を踏みながら歌う
シェウンのヴォーカル・スタイルは、まさしくオヤジ譲りです。

このアルバムはリオ・デ・ジャネイロで録音され、
共同プロデューサーとしてブライアン・イーノとジョン・レイノルズが名を連ね、
アディショナル・プロダクションとして、80年代レゲエのエンジニアで名をあげたゴドウィン・ロジー、
さらにジャスティン・アダムズがギターでクレジットされているほか、
シェウンによる謝辞の中には、マルタン・メソニエの名もみられます。
先に「イーノが参加したブラジル録音」ということを聴いた時は、イヤな予感がしたんですけど、
サウンドを聴く限り、彼らの影響は何も感じられず、余計なことをしなかったのは大正解。
ジャスティンもどこでギターを弾いているのか、さっぱりわかりません。

最初聴いた時は、分離のいいミックスと、
ホーン・セクションの音圧の低さが少し気になったんですけど、
聴き進めていくうち、各楽器の輪郭を際立たせながらも、
バンド全体の押し出しの強さをきちんと捉えていて、納得できました。
かつてビル・ラズウェルが、フェラの“ARMY ARRANGEMENT”(85)をミックスした時、
各楽器をばらばらに分離した欧米ロック仕様にしてがっかりした覚えがあるので、
少し不安を感じたんですけど、杞憂だったようです。

クドゥロやクワイト、レゲトンやバイリ・ファンキといったエレクトロニックなビートの流行に、
まったく未来を感じないぼくには、シェウンの生のグルーヴに救いをおぼえます。

Seun Anikulapo Kuti & Egypt 80 "FROM AFRICA WITH FURY : RISE" Knitting Factory/Because Music BEC5772820 (2011)
コメント(2) 

コメント 2

ペイ爺

あ、ホントだ!“PRODUCED BY FELA AND BILL LASWELL”ってバック・ジャケットに書いてるじゃない。アルバム・タイトル曲には、あのSly Dunbar がSimmons Drum で参加してる。

イヤだなあ。この“Army Arrangement”のレコード、買ってから1/4世紀以上経つのに、こんなにシッカリ読んだの初めて。 “The Complete Works of Fela Anikulapo Kuti”に入ってるのは、オリジナル・ヴァージョンの“Army Arrangement”や“Government Chicken Boy”なんでしょうか?

“Zombie”や、いーぐるで聴いた“Roforofo Fight”も確かに傑作だと思いますけど、初めて聴いたのは30年位前に、MUSIC MAGAZINE で紹介されてた“Original Suffer Head”。“Power Show!”に痺れましたね。今聴いてもビリビリって来ますよ。

Lemmiの描いたジャケットで好きなのは、“Monkey Banana”。このSeunのは、随分洗練されてますね。

日本に、一度でイイから来て欲しかった。

by ペイ爺 (2011-04-15 22:06) 

bunboni

ビル・ラズウェルってのは、ほんとヤなヤツで、
エチオピアの美人歌手ジジを女房にしたのも憎たらしいんだけど、
ビルがプロデュースした作品が、またどれもこれも駄作で、
あーあ、早く別れてくれないかなと思ってるんですけどね…。

フェラの“ARMY ARRANGEMENT” は、フェラのサックス・ソロが
ヘタすぎて聴くに耐えない(当時のビルの言)とカットしちまうし、
ドラムスもスライ・ダンバーに差し替えるのも、
アフロビートがぜんぜん分かってないという暴挙の限りを尽くしたもの。
コンプリートの方にはナイジェリア盤が入っているので大丈夫です。

相手の音楽を理解せず、自分の好みで勝手にサウンドをいじり回す、
ビルのプロデュースのやり口を、ぼくは認めません。
by bunboni (2011-04-15 22:35) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。