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トーゴのゴールデン・ヴォイス キング・メンサー [西アフリカ]

King Mensah Da.JPG

へぇ、キング・メンサーの新作とは、ずいぶんとまたひさしぶりだなあ。
トーゴのシンガーなんですけど、日本で知っている人が果たして何人いるのやら。
それ以前に、トーゴってどこだっけと訊かれそうですけど、
ガーナとベニンに挟まれた小国ですよ。

トーゴにはベラ・ベロウという魅力的な女性シンガーがかつていましたが、
人気絶頂の73年に、わずか27歳で交通事故死してしまったんですよねえ。
いまだCD化されず、すっかり忘れられているのが残念でならないんですけども。

なんせちっちゃな国なので、トーゴという国をアイデンティファイした音楽も生み出されず、
アフリカ音楽シーンで話題に上ることも、これまでありませんでした。
そんな目立たない国トーゴではありますが、
「トーゴのゴールデン・ヴォイス」と称されたキング・メンサーは将来性を感じさせるシンガーで、
96年のデビュー作は拙著『ポップ・アフリカ700』にも載せました。

そのデビュー作以来、聴くチャンスがなかったんですけど、このアルバムは6作目とのこと。
え、そんなにアルバム出してたんだと、ちょっとばかり驚きましたが、
大手の流通に乗ることがなかったんでしょうねえ。本作もインディからのリリースです。

サウンドの方は、特段個性のないアフリカン・ポップスといった感じなんですけれど、
明るく晴れやかなキング・メンサーのヴォーカルが、なんといっても魅力的です。
その歌声だけですでに十分個性的で、こういうフツーのアフリカン・ポップスが
もっと当たり前にあってほしいと思いますね。
アフリカン・ヒップ・ホップ・チームのビソ・ナ・ビソと1曲共演しているところも、
キング・メンサーのパン=アフリカンなサウンドとよく馴染んでいます。

かつてコート・ジヴォワールのアビジャンがアフリカ音楽産業の中心地として栄えた頃には、
民族性を強調しないポップ・サウンドのアルバムがいくらでもあったものですけど、
アフリカ音楽産業の衰退とともに、
こういうフツーのアフリカン・ポップスはすっかり影を潜めてしまいました。

トーゴをアイデンティファイした音楽はないとさきほど書きましたが、
キング・メンサーはトーゴ南部のエヴェ人の伝統音楽アグバジャやアクペセをルーツとしていて、
このアルバムでも7曲目や9曲目などで聞けるポリリズミックな8分の6拍子の曲などは、
ひょっとするとこうしたトーゴの伝統リズムを下敷きにしているのかもしれません。
シンセで弾いているバラフォンぽいフレーズにも、
アフリカ音楽ファンなら耳が反応せずにはおれませんね。

こうしたハチロクのリズムを深化させたら、
トーゴ独自の音楽として大化けしそうな気もするんですけど、
キング・メンサーにそういった色気というか音楽的野心はなさそうで、
中庸路線でアピールしていこうというのが彼の戦略なのでしょう。
そのためには、もっとメジャーな舞台に出てきて活躍してもらいたいものです。

King Mensah "DA" Soleil Sud Production no number (2010)
コメント(4) 

コメント 4

Margareta

東京でキング・メンサーの公演を聴く機会がありました。
とてもすてきな歌声と踊りに魅了されましたよ。
身体中が音を共鳴させているようですばらしかった。
CDを入手できれば買いたいです。
by Margareta (2013-04-30 10:03) 

bunboni

African Festaでしたっけ。ぼくは残念ながら観れなかったんですけど。
おっしゃるとおり、アフリカらしい身体性に富んだヴォーカルがすばらしいですね。キング・メンサーのCDは日本にはまったく入ってきません。残念です。
by bunboni (2013-04-30 20:47) 

yonyon

突然すみません。
「YOUは何しに日本へ?」という番組で
この方が空港で取材を受けて、東京と仙台のコンサートの密着取材をしていたので、ネットで調べていてこちらのHPにきました。
youtubeにアップされているので数曲聴く事が出来ますよ。
by yonyon (2013-07-15 00:08) 

bunboni

そういうことだったんですね。
その番組が流された時間に、ぼくのキング・メンサーの記事に、
600人もの人が見に来られたので、何ごとかとびっくりしました。
テレビの影響力、おそるべしです。
by bunboni (2013-07-15 00:31) 

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