ハタチ代半ばのサミーラ・サイード：after you：SSブログ

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ハタチ代半ばのサミーラ・サイード　[中東・マグレブ] [編集]

アラブ歌謡界の大ヴェテラン、サミーラ・サイードほど、
ディーヴァと呼ぶにふさわしい女性シンガーは他にいないかもしれませんね。
そのサミーラ・サイードがまだ二十代の頃のアルバムです。
アラビアン・ポップスがＣＤで出始めた80年代末、
サミーラ・サイードはアラブ全国区的な人気を博し、ぼくもこの４枚はよく聴きました。

なんでまた二十年ぶりに聴き返しているのかというと、
オフィス・サンビーニャの輸入盤発売告知に、当時のＣＤが載っていたから。
思わず懐かしくなって、棚から引っぱりだしてきたんですけど、
う～ん、この頃のアラブのポップスって、独特の味わいがあったなあ。

欧米の最新サウンドをたっぷりと取り入れた現代のシャバービーから比べたら、
まったくの別世界なアラブ伝統歌謡ですからねえ。
曲も長尺で、ゴージャスな弦楽オーケストラが伴奏するまろやかなサウンドは格別です。
今のサウンドなんて、極端に言えば打ち込みひとつで一丁上がりなんだから、
昔は、なんて人手のかかる贅沢なレコーディングをしていたんだろうと感じ入っちゃいますよ。

モロッコのラバト出身、62年生まれのサミーラ・サイードは、十代で人気歌手となり、
80年にはユーロヴィジョンにモロッコ代表として出場、
さらにアラブ歌謡の中心であるエジプトへ進出し、
名実ともにアラブ歌謡のスーパースターとなった人。
この４枚はまさしくそんな時期の、サミーラが最高に輝いた20代半ばのアルバムです。

エジプトではちょうどこの頃、欧米ポップスの影響を受けたアル・ジールが登場しますけれども、
サミーラの86・87年作には、まだアル・ジールの影はみられません。
伝統的なアラブ歌謡サウンドにのって歌う、サミーラの妖艶な歌い回しにウットリとさせられます。
ふくよかな発声で正確にこぶしを回す歌唱力の高さは、若い時から抜きん出てましたね。
要所要所にフィーチャーされるウードやヴァイオリン、
笛のオブリガードも絶妙なアクセントとなっていて、アラブ伝統歌謡の味わいを堪能できます。

88年の２作はシンセなどを加えたモダンなサウンドで、ぐっとシャープになっています。
特に“GHARIBA” は、パーカッシヴな湾岸サウンドを強調したアルバムとなっていて、
アラビアン・ポップスの中で湾岸諸国のサウンドが台頭してきたのを感じさせる一作。
手拍子とパーカッションが交叉するアップ・ナンバーでは、
チャーミングなサミーラの歌い回しが目の覚めるようなフレッシュさで、よく聴いたっけなあ。

そうそう、そういえば、このアルバムがきっかけで軽快な湾岸サウンドに夢中になり、
エジプトやレバノンのアル・ジールから、
サウジ・アラビア、クウェート、カタールの湾岸ポップスに好みがシフトしたんだっけ。
それでサミーラ・サイードともその後疎遠になってしまったんですけど、
04年の“AWEENY BEEK” で久しぶりに再会したときは、
昔より若々しくなってるってのはどーゆーこと!?と、
そのアンチエイジングぶりに驚かされたものでした。

それにしても、よくまあこんな古いＣＤがまだ残ってたもんです。
どこかの倉庫に眠っていたデッド・ストックの掘り起こしなんでしょうか。
いずれにせよ今となってはなかなか手に入らない貴重盤なので、
若き日のサミーラを知らない人は、ぜひこの機会にお聴き逃しなく。

Samira Saeed "MOCH HATNAZEL A’ANAK" Rotana ROTCD502 (1986)
Samira Saeed "YA EBN AL HALEL" Rotana ROTCD501 (1987)
Samira Saeed "GHARIBA" Rotana CDROT506 (1988)
Samira Saeed "SIBNI LEWAHDI" Rotana CDROT520 (1988)

2012-07-08 00:00 コメント(2)