SSブログ

痛快なり! ロッキン・モーラム インリー・シーチュムポン [東南アジア]

Yinglee Srijoomphol  KA KAW SAO LUM SING.JPG

うひゃひゃ、こりゃ痛快!
女子大生カーオティップ・ティダーディンに次いで、
グラミーが送り出したポップ・モーラムの新人、インリー・シーチュムポンでっす。

モーラムらしからぬ清純路線で売り出したカーオティップに対して、
インリーの方はジャケどおりの、裏街道まっしぐらなお水路線100%で迫ります。
ジャケはライトを浴びて光るピンク・グリーン・パープルという毒々しさで、
アルバムは呼び込みの司会の兄貴に招き入れられ、歌謡ショーがスタートするという趣向。

先にYouTubeでヴィデオを観たんですけど、この1曲目が場末の歌謡ショーそのもので、
苦節を偲ばせるバンドの面々に、6人のバック・ダンサーの衣装も実に質素なもの。
総勢40人以上の踊り子たちが、羽やら光り物やら飾り立ててラインダンスする、
目も眩む豪華絢爛なルークトゥンのステージから比べたら、ずいぶんとうらぶれてます。
昔のゴー・ゴー・ガールみたいなテキトーな振り付けも、たまりません。

「俺たちのインリーちゃん♡♡♡」とやにさがる日雇いふうオヤジや兄ちゃんたちを尻目に、
流し目送りつつ、客にしっかり金を使わせ、営業外の誘いは断る、やり手ホステスふうなインリー。
声はとっても若々しいんですが、お歳はそれなりにいってそうな気配もしますね。

インテリのカーオティップがミクスチャーでくるなら、こっちは小細工なしのロックだとばかり、
ギターをギンギンに鳴り響かせ、潔いくらいにストレイトなロッキン・モーラムで迫ります。
ヴィデオではドラムス、ベース、ギター、ピン(ダブルネック!)、ケーン、サックス、シンセ、コンガの
8人組がバックをつけていましたが、アルバムもほぼ同じメンバーの演奏なんじゃないでしょうか。
シンプル極まりないサウンドで、これといった工夫があるわけでもないんですけれど、
とにかくエネルギッシュな演奏にイキオイがあって、聴いているだけで胸がスカッとしますね。

サウンドじたい、これまでのポップ・モーラムとちっとも変わらないのに、
このフレッシュさはどこから来るんでしょうか。
ダサいはずのサウンドがかっこよく聞こえる秘密はどこにと考えて、ふと思い至ったんですけれど、
この場末感って、グラミーが仕掛けた巧妙な演出なんじゃないでしょうか。
たとえば、これが下層庶民向けルークトゥン専門レーベル、ノッポーンのアルバムだったら、
その場末感は板についているというよりも、コテコテのサウンドを地で行き、
演奏はどこかやっつけお仕事的で、歌手が誰だろうと、相変わらずのプロダクションになりがちです。

グラミーなら、カーオティップでやってみせたように、いくらでも新機軸を打ち出せるところを、
あえてサウンドの小細工はせず、せいぜいスクラッチを入れてラップふうにキメるくらいで、
わかりやすさを全面に押し出したアルバムづくりにしたんじゃないですかね。
このアルバムを聴いていると、普段ノッポーンのアルバムを聴いている客を、
グラミーが本気で奪いにきたような気迫さえ覚えますよ。

ドラマーのスティックさばきと、切れ味の鋭いギターの響きがストレイトに迫りくるロッキン・モーラム。
グラミー、気合が入ってます。

Yinglee Srijoomphol "KA KAW SAO LUM SING" Grammy G0555250 (2012)
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。