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緑の都チュニスに花開いたユダヤ人女性歌手たち [中東・マグレブ]

CHANTEURS JUIFS DE TUNISIE.JPG

フランスのMLPから出た、
チュニジアのユダヤ人歌手によるアラブ・アンダルース音楽集、もう聴かれましたか?
戦前を代表する歌手シェイフ・エル=アフリートから、
戦後のラウール・ジュルノといった有名どころに加え、
フリトゥナ・ダルモンやビシ・スラーマなど、
これまで耳にすることのできなかった歌手たちの曲も収録されているのが魅力です。
なかでもぼくの関心の的は、ハビーバ・マシーカ。

ハビーバ・マシーカはライス盤の『マグレブ音楽紀行第1集
~アラブ・アンダルース音楽歴史物語』で知り、大好きになった女性歌手ですけど、
この人の華やかでセクシーな歌唱は、他の歌手を圧倒しています。
ライス盤にも収録された“Alä Srir Ennoum” ともう1曲、
“El Alb Maa Weld El Hma” がこのCDには収録されているんですが、
どちらも押し出しの強い発声と、泣くようなこぶし回しの美しさが圧巻です。

MLP盤の音質の良さは、ライのコンピレーション
“AUX SOURCES DU RAÏ” でも評判になりましたけれど、
この“Alä Srir Ennoum” も演奏がぐっと前面に出ていて、
ライス盤以上の音の良さに感激しちゃいました。
う~ん、こうなると、もっとハビーバ・マシーカを聴きたくなりますねえ。
単独フル・アルバムを作ってくれないかなあ。続けて頼んますよ、MLP殿。

またもう一人の女性歌手、ルイザ・トゥンシアの2曲にも惹きつけられました。
こちらの魅力は、どちらかといえばご本人の歌より、曲と伴奏の面白さ。
45年の“Ala Bab Darek” はマルーフではなく、
ガスバ、ヴァイオリン、男性コーラスが妖気漂うメロディを奏でるベドウィン色濃い曲。
エキゾティックな香りをふりまく祝祭的な伝統旋法が、ゾクゾクものです。

また、60年の“Ya Ourda” は、クラリネットをフィーチャーしたモダンな伴奏が聴きもの。
ジャケットに写るルイザ・トゥンシアの写真を見ると、
ルイザはなんとギターを抱えているほか、アコーディオンの姿も見えるなど、
西洋楽器の導入をいとわなかったチュニス学派らしさがはっきりと見て取れます。

こういう女性歌手たちがアラブ・アンダルース音楽で活躍できたのも、
男尊女卑なムスリムにはない、ユダヤ人社会の自由さにあったんじゃないでしょうか。
チュニジアに限らず、アルジェリアのシェイハ・テトマやファディラ・ジリヤなど、
数多い女性歌手がみんなユダヤ系であることが、それを証明していると思います。

Raoul Journo, Cheïkh Elafrite, Louisa Tounsia, José De Suza, Aïda Nassim, El Kahlaoui Tounsi, Hbiba Msika and others
"CHANTEURS JUIFS DE TUNISIE" MLP 01121
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